二人の思い出

作:夜月天星



「どうしたんですか、健太郎さん?」

俺が突然喋るのを止めたのでリアンが心配そうに声をかけてきた。

「いや、こうやってメリーゴーランドに乗ってると思い出さないか?」

あえて何を思い出すかは言わなかったが、

リアンはすぐに満面の笑みを浮かべ返事をしてくれた。

「はい♪」

そして、顔を真っ赤にして俺の手を握る。

それだけで十分答えになっていた。


あの日、俺達は、遊園地で遊ぶ約束をしていた。

遊園地の前で、10時に―――。

俺は、自分の時計を見る。

9時45分。

約束の時間より、15分ほど早いが、

リアンと過ごせる時間は、1分、1秒でも惜しかった。

「もう来てるかな、リアン・・・」

俺はそんな独り言を呟きながら、

遊園地の入り口へと歩を進める。

そして、いた。

「リアン!」

俺が声をかけると俯いていた顔をあげ、

にこっと笑い、こちらを向く。

「すまん、リアン。待たせたか?」

リアンは、首を可愛く横にふるふるとふった。

「まだ約束の時間ではありませんし・・・。
 私、今来たばかりですから・・・」

リアンの嘘は凄く分かりやすい。

段々、声の音量が小さくなるからだ。

だが、あえて俺はリアンのその可愛い嘘につっこまなかった。

そして俺達はフリーパス券を2枚買うと、

遊園地にのりこんだ。

「わー」

リアンが小さな口を開け、感嘆の声を漏らした。

「すごいです・・・」

俺はそんなリアンを見て、苦笑してしまう。

「え、あ・・・私、はしゃいでしまって・・・」

「いいんだ、リアンの為に来たんだから。
 さ、とりあえず何か乗ろうぜ」

「あ・・・はい♪」

リアンは、首を遠慮がちに振り、

まわりのアトラクションを眺め、

わぁと、また感嘆の声をあげた。

「あ、あの、健太郎さん、あのくるくる回っているのに・・・」

「あれはメリーゴーランドって言うんだ。
 で、メリーゴーランドに乗りたいんだな?」

こくっと頷くリアン。

メリーゴーランド、とてもリアンらしい選択だ。

「分かった、行こう」

俺は、リアンの手を引いた。

「あっ・・・」

「ん? どうした、リアン?」

顔を真っ赤にしているリアンを不思議そうに見ながら、

俺は聞いた。

「あ、あの、手、手、・・・手・・・あうぅ・・・」

リアンは、耳まで真っ赤にして俯いてしまった。

「手? ・・・あ」

俺もようやくリアンの動揺の種が分かったので、

リアンの手を放そうとした。

が、リアンが俺の手を放さない。

「リアン?」

「いい・・・です。このままで・・・」

そして、俺達は手を繋いだままメリーゴーランドに乗った。

二人とも顔が真っ赤だった。

それから、色々なアトラクションで遊び、

俺の時計の針が12時を指したので、

昼食となった。

「リアン、何が食べたい?」

「お弁当を作ってきたんですけど・・・」

リアンは、持っていた鞄から弁当箱をそろそろと二つ取り出した。

「お! ナイス、リアン。じゃ、どこか座って食べるか?」

「はい♪」

俺達は、遊園地の真ん中に位置する、

『公園』スペースで食べる事にした。

俺は、リアンから下に敷くシートを受け取り、

ばさっと芝生の上に広げると、

その上にどっかと座った。

リアンもシートの端にちょこんと座り、

昼食タイムとなった。

「ばくばく! ・・・もぐもぐ! ・・・」

弁当を凄い勢いで食っていく俺。

リアンの弁当箱は俺の手と同じぐらいの面積だったが、

俺の方が早く食い終わっていた。

「ど、どうでしたでしょうか・・・。
 お口に合いましたか?」

いつも思うのだが、リアンは遠慮し過ぎだ。

まぁ、そこが『リアンらしさ』なのだろうが。

「全部食っておいて口に合わない訳ないだろ」

俺はとても心配そうに俺を見つめるリアンを見て、

苦笑しながら答えた。

「よかった・・・です」

一瞬でリアンの顔がほころぶ。

そしてリアンも昼食を食べ終わったので、

俺はリアンにこの場で待っててくれと告げると、

アイスを2つ買って戻ってきた。

「ほら」

俺はひんやりと冷たいアイスをリアンに手渡した。

「あ、どうもありがとうございます」

無言でアイスを食べる俺達。

不意にリアンがぼそっと呟いた。

「もうすぐ・・・ですね」

俺はアイスにつけていた口をアイスから放す。

「そうだな・・・」

俺も考えていた。

多分、リアンたちがグエンディーナに帰る事だろう。

「もうすぐ・・・ステージでショーがあります・・・」

だが、そんなリアンの可愛いボケに、

俺は、ずっこけることはできなかった。

リアンが、泣いていた。

無理に笑顔を作って・・・泣いていた。

「リアン・・・」

「あ、あれ? 変ですね・・・。
 健太郎さんと楽しく過ごしているのに・・・」

俺は、そんなリアンが見てられず、

そっと近づき、

そして、その小さな体をぎゅっと抱きしめた。

「あっ・・・」

瞬間的に紅く染まるリアン。

「俺、リアンに帰って欲しくないからな」

「健太郎さん・・・。
 私も健太郎さんと遊んだり・・・、
 お弁当を作ったり・・・。
 ずっと側にいたいです・・・」

俺は無言でリアンを更に強く抱きしめた。

俺のティーシャツがリアンの涙で濡れていく。

俺はリアンを少し自分の身から離した。

そして、リアンとしばし見詰め合うと、

リアンが俺の気持ちを悟ったのか、

静かに目を閉じてくれた。

――― 俺達は静かに唇を重ねた。

その後、俺達は、

いくつかのアトラクションで遊んだ。

すると、いつの間にかまわりはすでに夕暮れを迎えていた。

「リアン、次で最後にしよう」

俺はずっとこのままリアンと遊んでいたかったが、

流石にそうもいかないので、リアンに告げた。

リアンは、ぴくんと体を震わせた。

「あ、はい、そうですね・・・」

「で、最後に何に乗ろうか?」

「メリーゴーランドに乗りたいです」

リアンは、最初から決めていたように

はっきりと俺にそう言った。

「分かった、乗るぞ!」

また一緒に手を繋いで乗った。

俺達は、また真っ赤だった。

だがそれは、恥かしさなどからくるものでは無い。

「健太郎さん、ずっと一緒にいてくれますか・・・」

「ああ、嫌と言っても、絶対、放さないからな・・・」

夕日が、俺達を綺麗な赤で染めていた・・・。


・・・ウゥゥゥン。

メリーゴーランドが止まる音がして、

俺の意識は急速に現実に引き戻された。

「終わったな・・・」

「終わってしまいましたね・・・」

俺は、こんなリアンを見て、

声をかけずにはいられない。

「リアン、悲しそうな顔をするなって。
 またいつでも来れるだろ?
 前とは俺達、違うんだぜ!」

「はい♪」

幸せそうな顔で答えるリアン。

そんなリアンを見て、俺もとても幸せだった。

そして、世界一幸せな俺達は帰路についた。





   手を繋ぎながら。





         「一生、放さないからな・・・」





                        「はい・・・♪」









Fin.


-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-<編集後記>-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

夜月天星:馬鹿なことはせず、自分のLVと同等の事をする・・・。
     どうもお初にお目にかかります、夜月天星です・・・。
     初めての投稿で緊張してます・・・。
     と言うか、こんな駄文、誰が見てくれるっていうんだ?
     それに誰がSSとみとめるんだ?
イーナ :なら、送るな。
夜月天星:うぐ。
ニーナ :失礼ですよ。
夜月天星:うぐぐ。
ミーナ :あれ、どうしたの、変だよ?
夜月天星:腹が空いた。
     ・・・ただ、それだけだ。
ミーナ :ブラックモ●ブランしか食べてないもんね(マジ話)
夜月天星:この1日、これを書くのに使った・・・。
     死ぬ・・・。(楽しかったけど)
ミーナ :ところで、なんで、私達がここにいるの?
夜月天星:俺もわからん・・・。
ミーナ :私達が誰か説明しないの?
夜月天星:俺の助手達。
     付け加えるとアンドロイド・・・以上。
ミーナ :なんでそんなに沈黙をいれるの?
夜月天星:最後までギャグ無しでやらせてくれ。
     もうギャグはこりごりだ・・・。
     STEVEN様、本当に感謝します。
ミーナ :(話しに脈絡がないぞぉ)
だが、そんな静寂を破り、
どこからともなく一本の両刃の剣が飛んでくる。
ザコッ。
舞   :魔物・・・討伐・・・。
俺は、魔物じゃねぇ・・・。
薄れゆく意識の中、俺はそうつっこんだ。


<コメント>

誠 「…………」
リアン 「どうしたんですか? 黙り込んでしまってますけど」
誠 「リアンさんはさ、寂しくは無いのか?」
リアン 「……どういうことです?」
誠 「だって、もうグエンディーナには戻れないんだろ?
   スフィーさんはともかく、他の家族には、もう会えないんだぜ」
リアン 「そうですね。確かに、お父様やお母様に会えないのは寂しいです。
     でも、私には健太郎さんがいてくれますから」
誠 「……後悔はしてない、か」
リアン 「はい」
誠 「そっか……」
リアン 「……どうして、突然、そんなことを訊いたんです?」
誠 「いや、まあ……ちょっと、な……」


STEVEN 「夜月天星さん、ありがとうございました。
       リアンがとってもぷりちーでしたよ!!」