『今度、3人でうちに遊びに来ねーか? 出来れば土日を使って泊まりがけでさ』
先日、浩之がそう誘ってくれた。
別に断る理由も無いので、早速お言葉に甘えさせてもらった・・・のだが・・・
「・・・・・・・・・ここか?」
「・・・・・・そう・・・みたいですね」
「おっきーねー」
大きいとか、そういう次元じゃないだろ、これは。なんなんだ、この大豪邸は!?
俺もさくらもあかねも圧倒されまくっていた。
おいおい、浩之の奴、こんな所に住んでるのか!?
「お、おい。ホントに、ここでいいのか?」
「はい。教えていただいた住所の場所は、ここで間違いありません」
「表札にも、ちゃんと『藤田』って書いてあるよ」
「・・・そっか」
だったら、いつまでも、こんな所で呆けていても仕方がないな。
俺は意を決すると呼び鈴に手を伸ばした。
『学園の図書室』1,000HIT記念!!
幸せの作り方
<<『Heart to Heart』&『藤田家のたさいシリーズ』>>
「よっ! よく来たな」
「いらっしゃい。誠くん、さくらちゃん、あかねちゃん」
浩之とあかりさんが笑顔で出迎えてくれた。
「本日はお招きいただき、ありがとうございます」
「ありがとうございますです」
深々と頭を下げて感謝の言葉を口にする2人。
俺もそれに習おうとした時・・・
「ハハハ。堅苦しい挨拶はいらねーって。わざわざ足を運んでもらったんだ。ホントだったら、こっちが礼を言わなきゃいけないんだからさ」
なんつーか、非常に浩之らしい一言が飛んできた。
気さくと言うか何と言うか・・・・・・
「それより、ほら、入った入った。いつまでも外で突っ立っててもしょーがねーだろ」
そりゃそうだ。それじゃ、ま、遠慮無く・・・・・・
「「「お邪魔しまーす」」」
○ ○ ○
屋敷(でかすぎて『家』と言う気がしない)に入り、浩之たちに連れられて居間に来ると・・・・・・
「おっ。来た来た」
「いらっしゃ〜〜〜い!!」
「ウェルカム!!」
9人もの女性(しかも、みんな美人)が迎えてくれた。
うーん、なんか良いなぁ、こういうの。ううっ、思わず顔がにやけてしまうぜ。
「「・・・・・・まーくん」」
あっ、さくらとあかねがジトーっとした目で睨んでる(汗)
「いや、あの、その、これは・・・」
な、なにをしどろもどろになってるんだ、俺は!?
「「えっち」」
違うって!!
「「浮気者」」
違ーーーーーーーーーうっ!!
「誠も男だなぁ」
『うんうん』とうなずきながら、余計なことを言う浩之。
ちーーーーーーがーーーーーーうっっっ!!
○ ○ ○
「えっと、あかりさん以外の人とは実際に会うのは初めてだよな?」
あれから、なんとか誤解(?)を解き、今は、あかりさんとセリオさんが煎れてくれたコーヒーを飲みながら雑談を楽しんでいた。
「そやな。でも、なんか、初めてって気はせーへんけどな」
「そうですね。藤井さんたちの事は藤田先輩からいろいろとうかがってましたからね」
「(こくこく)」
「えっ!? そうなの!?」
ど、どんな話を聞いてるんだ? すげー気になるんだけど。
「そんな心配そうな顔するなって。変なことは言ってねーよ」
「本当だろうな?」
「・・・・・・・・・ああ」
「今の間はなんだ!? ホントに大丈夫だろうな!?」
「・・・・・・・・・たぶん、な」
「ちょっと待て!! たぶんってなんだ!? たぶんって!?」
「気にするな」
あからさまに視線を逸らして浩之が言う。
「気になるわい!!」
そんな、俺たちのやり取りに室内が笑いに包まれた。
「面白いよ!! 浩之とまーくんの漫才、最高!!」
あの・・・別に俺たち、漫才をやってるわけじゃ・・・・・・
それより、綾香さん。『まーくん』っていうのはやめてくれ。
○ ○ ○
「ふ〜〜〜。いい湯だ」
「どうだ? うちの風呂って広いだろ?」
「あのな〜。これが広いってレベルか? 泳げるぞ、マジで」
まったく、とんでもねー所に住んでるな、こいつは。
でもまあ、俺もだいぶ良い思いをさせてもらってるからなぁ。文句は言えねーか。
なにせ、たくさんの美人に歓迎されて、無茶苦茶美味いメシを喰わせてもらって、そのうえ、でっけー風呂まで堪能させてもらって。
なんか、どこぞのVIPにでもなった気分だな。う〜〜〜ん、極楽極楽っと。
しっかし、『藤田家』・・・か。
なんつーか、温かいよな。漂ってる空気が優しいとでも言うか。
ま、それだけ、みんなが幸せだってことだよな。
・・・・・・幸せ・・・・・・か。
俺は、さくらとあかねを幸せにしてやれるのかな?
俺に・・・出来るのかな?
浩之だから出来たんじゃないのかな?
さくらとあかねは・・・ホントに俺で・・・いいのかな?
「誠? どうかしたか?」
その声に、俺は現実に引き戻された。
「あ、いや、なんでもねー」
「なんでもねーってツラじゃなかったけどな」
「・・・・・・・・・・・・」
浩之って、見てねー様で見てるよな。
「なんか、悩み事か?」
「悩み事っていうか・・・その・・・」
ダメだな。こいつは・・・浩之は、ごまかせねーか。
俺は、全て打ち明けた。
茶化されるかとも思ったけど、浩之は最後まで真剣に聞いてくれた。
そして・・・・・・
「信じるんだな、自分を」
「信じる?」
「ああ。そして、お前が本当に彼女たちにとって正しいと思ったことは決して曲げるな。誰に何を言われても、だ」
決して・・・曲げない。
「少なくとも、俺はそうしてきたよ。もちろん、これからもそうするつもりだ」
浩之・・・・・・
「あとは・・・」
「あとは?」
「いつまでも、『誠』でいろ」
「・・・・・・はあ?」
いつまでも俺でいろ? なんだそりゃ?
「彼女たちの幸せを考えるあまり、そのことに意識が囚われるあまり、誠が変わってしまう。誠が誠でなくなってしまう。はっきり言って、彼女たちにとって、それ以上の不幸は無いぜ」
「・・・・・・・・・・・・」
「お前が誠でいる限り、さくらちゃんもあかねちゃんも幸せになれる。そのことだけは忘れるな」
「よく・・・わからねーよ」
「無理に理解しようとする必要はねーって。ただ、そのことを覚えていればいい。そのうち、イヤでもわかるようになるさ。お前なら、きっと、な」
それだけ言うと、浩之は風呂場から出ていった。
俺は、浩之の言葉が頭から離れずに、しばらく、その場から動けなかった。
○ ○ ○
『いつまでも、『誠』でいろ』
ベッドに入っても、その言葉が頭にこびり付いていた。
どういうことなんだ? わかんねー。わかんねーよ、浩之。
コンコン
その時、俺の思考を打ち消す様に、ドアがノックされた。
「はい!!」
カチャ
俺の返事を受けて入ってきたのは、さくらとあかねだった。
ま、そうじゃねーかとは思ったけどさ。
「どうした?」
「いえ・・・その・・・」
真っ赤な顔をしてうつむくさくら。
「まーくんと一緒に寝たいなーと思って」
あっけらかんと答えるあかね。
なんだ。そんなことか。ったく、一体何事かと・・・・・・って、おい!!
「ちょっと待て!! 一緒に寝たいだと!?」
「そうだよ」
「そうだよって、お前なぁ」
「やっぱり・・・こんなのって、いけないですよね」
さくらは、そう言いながら、少し寂しそうな顔をした。
あーーーっ、まったくもう!! そんな顔をされて断れる訳が無いだろうが!!
「いいんじゃねーか。一緒に寝るぐらい」
俺の言葉に、ふたりは顔をパッと輝かせると、勢い良く布団の中に潜り込んできた。
「まーくん!」
「あったか〜〜〜い」
しょーがねーなぁ、こいつらは。
「三人で布団の中にいれば、あったかいのは当たり前だろ?」
「そうじゃないよ! あったかいのはまーくんだよ!」
「は? 俺? う〜〜〜ん、俺って、そんなに体温が高かったかな?」
俺の言葉にふたりは苦笑を浮かべた。
「体温のことじゃないよ〜〜〜」
「まーくんは全てが温かいんです。雰囲気というか、何と言うか・・・。うまく、言葉に出来ませんけど」
「そうなのか?」
「うん。それは、子供の頃からずっと変わってないよ」
「まーくんのぬくもり。わたしたち、大好きです」
子供の頃から・・・・・・ぬくもり・・・・・・
『彼女たちの幸せを考えるあまり、そのことに意識が囚われるあまり、誠が変わってしまう。誠が誠でなくなってしまう。はっきり言って、彼女たちにとって、それ以上の不幸は無いぜ』
『お前が誠でいる限り、さくらちゃんもあかねちゃんも幸せになれる。そのことだけは忘れるな』
その時、ふいに浩之の言葉の意味が理解できた様な気がした。
完璧ではないけど・・・まだ、断片的にだけど・・・それでも・・・・・・
「さくら」
「はい」
「あかね」
「なに?」
「好きだよ。心から、な」
「「まーくん!!」」
俺たちは、そのまま寄り添いながら眠りについた。
浩之たちの様な、優しい空気を漂わせながら・・・・・・
−−−−−−−−− 蛇足 −−−−−−−−−
「なんだよ、浩之? にやにやしてさ」
「昨晩はお楽しみでしたね」
あうっ、三人で一緒に寝たことがばれてる!!
―――っていうか、お前は『ドラ○エ』の宿屋のおやじかーーーっ!?
このあと、浩之たちに散々からかわれたのは言うまでもない(泣)
<< 了 >>
−−− あとがき −−−
毎度!! & はじめまして!! Hiroです。
これは、STEVENさんの傑作『Heart to Heart』と、私の拙作『藤田家のたさいシリーズ』のクロスオーバーSSです。
あまり、長々と言い訳するのも見苦しいので一言だけ。
ごめんなさい!! こんなのになっちゃいましたm(_ _)m
それでは、縁がありましたら、またどこかでお会いしましょう!!