「浩平君、今日はカレー屋に行くよ」
土曜日の放課後、いつものように先輩とのデートコースを考えていたオレに、
先輩はそう宣言した。
「カレー屋って・・・あっ、そうか」
「うん、今日だよ」
 傍から見てるとさっぱり理解できそうにない会話をするオレ達。
まあ、それはともかく、
「じゃ、行こうぜ。先輩」
「うん」
 オレ達は決戦の場へと向かった。







果て無き戦い





 一応いきさつを説明しておこう。(必要ないとも思うが)
先輩とオレは、いつものように商店街を回っていた。
その日も土曜日で、当然何かを食おうという話題になる。
そこで先輩が「今日はカレーを食べたい気分だよ」といったので、
オレの知っているカレー屋につれていったわけだ。
その店ではカレー1300グラムを完食するとただになるので、
先輩といつか行こうと思っていた場所である。
さすがにそんなに食えるやつはそうそういないらしく、
全国チェーンの店なのに食えたやつ全員の写真が飾られていた。
「へえ、やっぱりそんなにいるわけじゃねえんだな」
「ふうん、そうなんだ」
ちなみに、先輩にこの店のシステムについては教えてある。
「ああ、やっぱり・・・なんだあれ?」
オレは驚かなかった。
というか、驚くより先に理解できなかった。
飾られてる写真の中でひときわ大きいもの。
そこには、

『藤井誠』15歳っ!!

1500グラム完食っ!!


と書かれていた。
1500グラム・・・。
「そ、そんなに食えるやつが他にもいたのかっ!?」
「ど、どうしたの?浩平君」
「ああ、なんでもカレーを1500グラム食ったやつがいるらしい・・・」
「本当?」
「ああ、本当だ。そいつの写真が大きく飾られてる」
「浩平君・・・」
先輩の体は震えていた。武者震い、というやつだ。
「私、負けないよ」
そう、今よりここは戦場と化す
「ところで、そのコの名前なんて言うの?」
わけでもなさそうな雰囲気だ。
「え〜と、藤井誠、15歳だって」
「女の子?」
「いや、まことって言ったら普通男じゃないのか?」
「そんなことないよ。小学校のころ転向していった友達に、
『沢渡真琴』っていうコがいたからね」
「そうなのか?」
「そうなんだよ」
「ふ〜ん。それはともかく、そいつは男だぜ」
「そっか、残念」
「それじゃ、早く食べようぜ」
「うん」
オレ達は近くにあったテーブルのところに座った。
そこでメニューを見ていると、しばらくしてからウエイトレスが来る。
「ご注文はお決まりですか?」
「ああ、2000グラムのカレー一つ」
ピキ
わざとそこでいったん言葉を切ると、予想どうりウエイトレスの表情は固まっていた。
「あの・・・申し訳ありませんが当店ではそのようなメニューは取り扱っておりませんので・・・
それにいくら二人でお食べになるといっても2000グラムは多すぎるかと・・・」
それでも何とか常識的な反応を返す。うん、プロだ。
「だってあの藤井誠ってやつ、メニューにない1500グラムカレーを食ったみたいじゃねーか。
それにオレが注文するのは別のもの。普通のポークカレーだ」
「あ、藤井様は特別・・・って、え?」
オレの言葉の意味を理解し、恐る恐る聞いてくるウエイトレス。
「で、では2000グラムのカレーをお食べになるのは・・・?」
答えがわかっていないわけでもなかろうが、人というのはとかく自分の中の常識を
守りたがるものである。まあ、それはともかく
「私だよ」
この一言でウエイトレスは完全に固まった。
「あ、ちなみに時間内に食べきったらただってのはありだろ?」
「え、ええ、そのはずですが、時間の設定が・・・」
「あ、そのままでいいよ」
「・・・わかりました」
どうやら、もう気にしないことに下らしい。割と賢い選択だ。
5分ほど経過して、ついにそのカレーが運ばれてきた。
なんだかみんな興味津々といった感じで見つめる中、先輩のチャレンジは始まった。
結果はいうまでもないだろう。
写真のコーナーには、その日よりもう一枚一回り大きい写真が飾られることとなった。




 そして、今日もオレ達は戦場に足を踏み入れた。
「浩平君、記録は?」
「ちょっと待ってくれ・・・3500グラムだ」
「ようし、まけないよ」
そう言ってオレ達は指定席につく。
「いやいや、いつもありがとうございます」
「おお、店長」
「あ、店長さん、こんにちわ」
「いやー、いつもいつもありがとうございます」
「おう、ブロンズ像ぐらいで良いぞ」
「はは、勘弁してくださいよ」
「まあ冗談だが」
「それで今日はどれぐらいで?」
「3700グラムをお願いするよ」
「はは、かしこまりました」
注文はすぐに運ばれてきた。毎月のことだからすでに用意してあるみたいだ。
目の前にはすでに山のようなカレーがある。
ザワザワ・・・
店内が喧騒に包まれる。この勝負はもはやこの店の名物となっていて、
これを目当てに来る客も多いらしい。
「がんばれ−」
所々から声援も聞こえてくる。
どうやら見た目がお嬢様で、実は大食いというギャップにはまった人たちも多いようだ。
「浩平君、なんか失礼なこと考えてない?」
「いいや、全然そんなことないぞ」
「うぅ〜、あやしいよ」
先輩は鋭かった。(電波が使えずとも)
「さて、勝負の始まりだ。さあ食べて食べて」
「浩平君、ごまかしてない?」
「そんなことより、早く食べないとさめちまうぞ?」
「そうだね。ちょっと引っかかるけど・・・いただきます」
そして先輩はスプーンを手に取った。




 ちょうど半分ぐらい食べたころ。
そこで先輩の手は止まっていた。
「先輩、どうしたんだ?」
「うう、実は今日ここに来る前に学食で食べちゃったんだよ〜」
「なに!?だって今日ここに来るっていったの先輩じゃないか」
「そのときは忘れてたんだよ〜」
「で、何をどれくらい食ったんだ?」
「・・・カツカレー6杯」
「そのカツカレーで思い出したのか?」
「うん」
「で?」
「もうあきちゃったよ」
「うーん、そうか」
店内の野次馬からちょっと悲嘆に暮れた声が聞こえる。
「じゃあ、何で今日にしたんだ?」
「武士の情けだよ」
「それは・・・あってそうで合ってないと思うぞ」
「じゃあ『二兎を追うもの一兎も獲ず』だよ」
「それは絶対に違う」
「冗談だけどね」
胃袋のほうにはまだまだ余裕がありそうだった。ならば
「これだー!!」
そう言ってオレは納豆とチーズを取り出した。
「どうしたの?浩平君」
「納豆とチーズとカレーを混ぜるとうまいんだ」
「じゃあ、納豆とチーズを持ってるの?」
「ああ。そしてこれをこうやって・・・」
オレはあっという間に『納豆チーズカレー』を作り上げた。
「さあ先輩、食ってみろ」
「うん」
先輩は物怖じせずにそれを口に運んだ。
「おいしいよ。浩平君」
「だろう?」
「うん、これなら残りも食べられるよ」
かくして、店内にはまた新しい写真が追加された。




 三日後。
「浩平君、今日はラーメン屋に行くよ」
 放課後、いつものように先輩とのデートコースを考えていたオレに、先輩はそう宣言した。
「ラーメン屋って・・・あっ、そうか」
「うん、今日だよ」
 傍から見てるとさっぱり理解できそうにない会話をするオレ達。
まあ、それはともかく
「じゃ、行こうぜ。先輩」
「うん」
 オレ達は決戦の場へと向かっていくのだった。




  追記


みさき先輩の出した3700グラムの記録を破ったのが
藤井誠でないと知ったのは割とすぐのことだった。
その情報に戸惑いつつ店に向かったオレが見たのは、
4000グラムを完食したという女の子の写真である。
名前は・・・あれ、なんていったかな?











  あとがき

 どうも、DILMです。
ふう、何とか書き終えたぁ。いやーつかれました。
掲示板で勢いで書いても良いですか?っていってしまって。
はっきりいってそんなに期待されると思ってなかったんですよ。
「あ、どうぞ」ぐらいを考えてました。
はたしてご期待に添える作品になったかどうか。
ちなみに、4000グラム食べたのは誰でしょう?(笑)
とにかく三人目を誰かかいてください。僕は無理ですので。
なんか小規模なリレーSSですね。

今回はこんなところです。

それでは。


<コメント>

誠 「むむむむ……世の中には強者が結構いるんだな」
楓 「そうですねぇ。私もビックリです」
スフィー 「……負けてられないよね」
誠 「ところでさ……最後の4000食った奴で誰だ? 二人の内のどっちかなんだろ?」
楓 「……さあ、どっちでしょうか?」
スフィー 「それは読者次第だよね」
誠 「……ま、いいか。とにかく、次の目標は4500グラムだなっ!」
楓 「頑張ります」
スフィー 「目指せっ! 5000グラム突破ねっ!」



耕一 「なあ、浩之?」
浩之 「なんスか?」
耕一 「あの三人、何であんなことにああも燃えられるんだろうな?」
浩之 「……さあ?」
健太郎 「うう……出費が……(泣)」



S 「DILMさん、楽しいSSをありがとうございました!
  楓バージョンとスフィーバージョンも誰か書いてくれないかなぁ」
  ……と、思いつつ、でわでわー。