痕SS
『ある日の柏木家』
俺、柏木耕一は、何時ものように(?)この隆山の柏木家にお世話になっている。
外は雨、雨、雨、雨――
誰かの歌にこんな歌詞があったなあ……って、関係ないか。
今は雨の多い時期。
どうしてそんな時期にここにいるのかって?
それは聞かない約束でしょう……?
ま、ともかく……、
比較的まとまった(と言っても3日ほどだが)休みが取れた俺は、
みんなに会いたいが為にこうして柏木家にやってきた訳だ。
今日は土曜日。
俺は、土曜日には授業を履修していないので、サボリという訳ではない。
高校生の楓ちゃんや初音ちゃんは昼までとはいえ学校があるし、
鶴来屋の会長である千鶴さんはもちろん仕事があるから朝からいない。
そして、この春から大学生になった梓も、
土曜日に授業を入れており、朝から不在である。
梓も3時頃には帰ってくるそうだが。
よって、午前11時現在、この家には俺一人だ。
しかも外は雨。
正直言って、こんな雨の中わざわざ出かける気は全くしない。
よって、暇なことこの上無し、なのだ。
あ〜暇だ。
そして、腹減った……。
そういや、楓ちゃんか初音ちゃんが帰ってくるのは
午後1時過ぎとか言ってたな。
仕方がない、我慢するか……。
「ただいま〜」
「ただいま……」
おっ、二人が帰ってきたな。
早速出迎えるとしよう。
「おかえり、楓ちゃん、初音ちゃん」
「ただいま、耕一おにいちゃん」
初音ちゃんは天使の微笑みを浮かべる。
「ただいま……耕一さん……」
楓ちゃんは少し照れくさいようだ。
「あ、そうそう。耕一おにいちゃん、ご飯食べた?」
初音ちゃんが聞いてくる。
「いや……この雨だから、何処にも出かける気がしなくってね」
俺は頭をかきながら答える。
「もう、おにいちゃん。相変わらず『ぐーたら』なんだから」
初音ちゃんがニコニコしながら言う。
「それじゃ、何か作りますね……」
楓ちゃんが何処となく嬉しそうな感じで答える。
「御免ね、お願いするよ」
俺は申し訳なさそうに言う。
実際、申し訳ない。
「いつも、苦労をかけるねぇ」
「それは言わない約束だよ、おまいさん」
俺のボケに初音ちゃんがボケ返しで答えてくれる。
「…………」
「…………」
「……プッ」
「ハハハハハハッ……」
「ウフフフフフッ……」
俺たち三人は、互いを見合わせながら笑った。
やっぱりいいな、こういうの。
つまらないけど、家族の会話って感じがする。
俺は一人の時が多いからな……。
初音ちゃんと楓ちゃんも昼ご飯はまだ食べていないらしく、
俺たちは三人で昼ご飯を食べた。
そういや、雨が強くなってきたなあ……。
そして、3時頃。
「ただいまぁ〜……」
梓が疲れたような感じで帰ってきた。
同じように出迎えに行く。
楓ちゃんは勉強で部屋だ。
受験生だしな。
よって、俺と遊んでいた初音ちゃんと二人で梓を出迎えることになった。
「おかえり、梓」
「ああ、ただいま、耕一……」
梓はかなり濡れている。
「そういや、さっきから土砂降りになってきてたなあ……」
「ああ……まったく……」
梓は帰る途中に土砂降りにたたられて、かなり濡れている。
よって、やや不機嫌のようだ。
「大丈夫、梓おねえちゃん?」
初音ちゃんが梓を気遣う。
「ああ……でも、どうしてアタシが帰る時に限って急に降ってくるんだよ」
俺はニヤニヤしながら言った。
「日頃の行いが悪いんじゃないのか?」
梓は答える。
「耕一に言われたくはない!!」
「何だよ・・・俺って日頃の行いが悪いのか?」
「自覚してないのか、アンタは……」
梓は呆れ気味だ。
「何だよ……って……」
俺は言いかけたところで、台詞が止まる。
こ、これはっ!
梓の着ている濡れた服が体にへばりついているではないか!
そして、梓の着ているのは白のTシャツだから……おおぅ、透けてるぜ!
下着がバッチリだ。
何がバッチリなのかはよくわからんが。
しっかし梓の奴……、
しばらく見ないうちに、またでかくなったな……胸が……ん?
ゴゴゴゴゴゴ……
何だこの効果音は……って、ゲッ!!
視線を上の方に戻すと、
梓が俺を世にもおっそろしい視線と表情で睨みつけていた。
プ、重圧(プレッシャー)が……。
エルクゥの気とはまた違う、梓独特の威圧感を感じる!
「こういちぃぃ〜……」
「は、はいっ!」
梓は俺に迫る。
「少しは自覚しろ〜っ!!このスケベ大学生〜っ!!」
ドゴオォォォォォッッ!!!
梓の右ストレートがクリーンヒットォォ!!
俺は柏木家の廊下を吹っ飛んでいった。
自覚……?
なるほど……。
「フンッ!!」
梓はドスドスと俺の横を通って、家の中へと消えていった。
「耕一おにいちゃん……」
初音ちゃんはやや呆れ顔だ。
「初音ちゃん、自覚したよ……」
「えっ?」
「俺って、やっぱり日頃の行いが悪いわ……」
「…………うん」
初音ちゃんは否定してくれなかった。
そして、時間は流れて晩ご飯前――
最後に、この柏木家の当主、千鶴さんが帰ってきた。
梓は晩ご飯の準備で手が離せないので、
俺と楓ちゃんと初音ちゃんで出迎えることになった。
せめて、俺がいる間はみんなを出迎えてあげたい。
帰ってきて、誰も出迎えてくれないというのはやっぱり寂しいからな。
特にあの事件の後からその考えは強くなっている。
「おかえり、千鶴さん」
「ただいま戻りました、耕一さん」
千鶴さんは仕事の疲れも見せずに、俺に微笑んでくれる。
スーツ姿がナイスだ。
「うふふっ……やっぱり、こういうの、いいですね」
千鶴さんが俺に話しかける。
「えっ?」
「耕一さんが……その、出迎えてくれるのが……」
千鶴さんはそう言って、少しうつ向いて頬を赤らめる。
うっ……可愛い。
思わず抱き締めたくなるではないか。
「うん、耕一おにいちゃんが出迎えてくれると、とっても嬉しい気持ちになるよ」
初音ちゃんが天使の微笑みを浮かべ、
同じように少し頬を赤らめてしみじみと言う。
「私も……」
楓ちゃんも同様のようだ。
ちなみに、楓ちゃんが一番顔が赤い。
「そ……そう……」
俺はなんだか恥ずかしくなってきた。
みんな妙に意識し出したのか、誰も言葉を発しなくなった。
そして、そこ(玄関)は、ある種の異様な空間と化していく。
そこにやってきたのが一人。
「なにしてんのよ?」
梓だ。
なかなか俺たちが入ってこないので、様子を見に来たんだろう。
「どうしたの……って、うっ!」
梓は思わず身を引く。
その異様な空気と状況にあてられた梓は身動きを止めてしまう。
「な、なにやってんのよ、みんな……」
梓が来たことで、まず俺が我に帰った。
「……あ、梓か?」
「何だよ耕一、この空気は!?」
「あ、ああ……これは……」
すると、楓ちゃんと初音ちゃんもこちらに戻ってきたようだ。
「はっ! あ、梓おねえちゃん」
「梓姉さん……」
梓は気を取り直して、
「さあ、ご飯がもうすぐ出来るから、準備手伝ってよ、楓、初音」
「う、うん」
「は、はい」
しかし、まだ戻ってこない人が一人。
千鶴さんだ。
「耕一さん……」
何故か俺の名前をつぶやいている。
そこに、梓が叫ぶ。
「いい加減戻ってこいっ!!」
すると千鶴さんはビクッ、として我に帰る。
「あ、あれ……梓?」
梓はよくわからない、という表情をした。
「なに考えてたんだよ、千鶴姉?」
千鶴さんは頬を赤らめた。
「え、ベ、別に……」
梓は呆れ顔になった。
「はいはい。もういいから、早く入ってよ」
そして、梓は初音ちゃんと楓ちゃんを伴って台所へと戻っていった。
「い、行きましょうか、千鶴さん」
「は、はい……」
そして、晩ご飯も終わった。
「やっぱり梓の料理は最高だな」
梓にそう言うと……、
「なに柄にもないことを言ってんのよ」
と言って、梓は照れてしまった。
さて…………ん?
俺の目に一冊の情報誌が目に入った。
「これは何だ?」
俺は誰と無しに聞いてみた。
「あ、それはこの隆山の情報誌みたいなものだよ」
初音ちゃんが答えてくれた。
なるほど……。
「『隆山ウォーカー』……なんか危険な名前だな」
「耕一さん、それは……」
楓ちゃんが困惑している。
「超地方限定の情報誌、というところか」
「何にも情報なんかなさそうな気がするんですけど、ね」
千鶴さんが身も蓋も無いようなことを言う。
「確かこれって、隆山の地元の雑誌社が作ったやつだよな」
梓が話に入ってくる。
「うん。本屋とかに無料で置いてあるんだよね」
初音ちゃんが梓に答える。
「そうだったっけ……そういや、見たことあるような?」
うーむ……って、地元の雑誌社が作ったんなら、
千鶴さんは見も蓋も無いことを言ったら駄目じゃないか!!
地元の大有力企業の会長なんだから!!
「耕一さん。面白いコーナーがあるんですよ」
楓ちゃんが『隆山ウォーカー』を手に取って俺のところまで持ってくる。
「へえ……どれ?」
俺がそう言うと、千鶴さんや梓、初音ちゃんも俺と楓ちゃんの側に集まってくる。
「これです、耕一さん」
そう言って楓ちゃんが俺に見せたのは……、
「『性格心理コーナー』?」
「あっ、これか。結構面白いよな」
梓も楓ちゃんに同意する。
「これって……?」
「これは、質問に答えるとあなたの性格がわかりますっていうコーナーなんです」
楓ちゃんが俺の疑問に答えてくれる。
「ああ、なんか最近こういうの多いよな」
「でも、テレビでやってるのよりは単純だけどね」
これは梓の台詞だ。
「へえ……どんなのがあるんだ?」
俺は興味が涌いてきたので見てみることにした。
(筆者より)
このSSを読んで下さっているみなさんも一緒に考えてみて下さい。
●あなたは朝起きて、空模様がなんとなくあやしい時、
どの程度で傘を持っていきますか?
A:ちょっとでも曇っていたら持っていく。
B:降水確率40〜50%前後なら持っていく。
C:少々小降りであっても持っていかない。
「うーん……そうだな……」
「私はAですね」
千鶴さんはAらしい。
「アタシは……Bかなあ……」
梓はBらしい。
「どうしてだ、梓?」
「うーん……傘って、結構かさばるんだよ。
だから、自分で降りそうだと思ったら持っていこうかな……と」
「なるほどな」
「私も千鶴姉さんと同じです」
楓ちゃんはA。まあ、そんな感じがする。
「私はどっちかと言うとB……かな」
初音ちゃんはBか……。
「俺はCだ」
即答。
「耕一……」
「耕一さん……」
みんなが俺の方を見る。
「な、何かな?」
「いや……耕一らしいと思って」
梓の言葉にみんなが同意する。
「で、け、結果は?」
俺は先に進むことにした。
★ここでは、自分がどれだけ素直に生きられるかの
度合いがわかります。
Aの人は、常に先のことまで計算して気配りをする
用意周到な性格の人です。
常識的な判断がとっさの時にもすぐにできる人であるといえるでしょう。
その反面、常識に縛られた生き方や優等生的な生き方に固執して、
自分らしさを見失っている可能性もあるかもしれません。
「そうね……」
「そうかも……」
千鶴さんと楓ちゃんはAを選んだ。
多少なりとも当てはまるところがあるようだ。
Bの人はAの人と似ていて几帳面な性格ですが、
Aの人と違うのは、自分なりの価値基準を持っていて、
一番のポイントを『自分の気持ちに素直に生きる』
というところに置いている点です。
Aの人と比べて、臨機応変に物事に対応出来るタイプと言えるでしょう。
「へえ……」
「そうなんだ……」
梓はすぐにBと答えたから、一番ラディカルに行動出来
るタイプなんだろうな。
初音ちゃんは迷ってBにしたから、梓と、千鶴さん・楓
ちゃんの中間ってところか。
自分らしさは見失っていないが、それほどラディカルと
いう訳でもないってところかな。
Cの人は特に男性に多く見受けられるタイプです。
いくつかのパターンがありますが、
一つはなるべく手を自由な状態にしておきたい為に傘を持っていかないという、
いわゆる、束縛を嫌うタイプ。
または、過去に見た映画や、街角で目撃したシーン……という絵柄に憧れるロマン派。
悪く言えば自己陶酔型。
あるいは、過去に傘を無くしたり盗られたり忘れたりして、悔しい思いをしたという人。
いずれにせよ、Aとは違う意味で何かに縛られ、素直に生きられないタイプです。
「うーむ……」
「ある意味当たってるよねぇ」
梓が納得したような表情をしている。
「耕一さん……もしかとて『ぐーたら』な生活に変なこだわりを持っていて、
半ば意図的にそんな生活をしているんじゃないですか?」
「うっ!」
楓ちゃんのきついツッコミだ。
「だめだよ。もっときちんとしないと」
初音ちゃんに注意されてしまった。
「まあまあ……それでは、次にいきましょう」
●これは女性向けの質問です。
男性の人はもし彼女がいるのでしたら、
その彼女に答えてもらうのがいいと思います。
いない人は……まあ、参考程度に。
彼に初めて手料理を作ってあげるとしたら?
A:ご飯と味噌汁の家庭料理
B:気合いを入れてフランス料理
C:ピクニックのお弁当
「アタシはAだね」
梓は即答でAだ。ま、そうだろうな。
「私は……AかCだけど……Cかなあ?」
初音ちゃんはさんざん迷って、どっちかというとC。
「私も・・・そうですね」
楓ちゃんもCのようだ。初音ちゃんほど迷いはないようだったが。
「私は……Bです!!」
千鶴さんはBって……作れるのだろうか?
……フランス料理?
「千鶴姉、フランス料理なん……」
「さ、さあ!!結果を見ようぜ!!」
俺は梓の台詞を途中でかき消した。
ここでゴタゴタをおこしたらやばいしな。
★ここでは女性の恋愛観がわかります。
Aの人は、恋愛に自信のある、または自分のペースで恋愛ができ、
飾らない普段の自分というものをありのままに見せることが出来るタイプです。
自分のポリシーを持った女性と言えるでしょう。
「ふーん」
梓は納得している。
「ま、だいたい当たってるかな」
俺も異論は無い。
梓のありのままじゃない姿の方が見る機会が無いし。
Bの人は自分をよく見せたいという意識の強い女性で、かなり飾るタイプです。
恋愛に自信のないタイプなのでしょうが、
絶対に相手に不快感を与えない、社交上手な女性です。
男性にしてみれば、友達に自信を持って紹介出来る彼女(女性)です。
「耕一さん!! 自信を持って紹介して下さいね!」
「って、千鶴姉は耕一の彼女じゃないだろっ!!」
楓ちゃんと初音ちゃんも控えめながらうなずいている。
それより……千鶴さんは飾るタイプか。
確かに、自分をよく見せようというところは強いかな?
Cの人は恋愛に対してかなり保守的な人です。
Bの人とは反対のタイプと言えるかもしれません。
男性にとっては、刺激を感じさせない物足りないタイプでしょうが、
結婚相手としては一番理想的かもしれません。
安心して家のことを任せられるタイプです。
「へえ・・・」
俺は感心している。
初音ちゃんは、普段の自分をありのままに見せられるけど、
保守的なところがありそうだし。
楓ちゃんはこの4人の中では一番保守的なイメージがあるからなあ。
「結婚相手に一番理想的なんだって、楓おねえちゃん」
「……(ポッ☆)」
楓ちゃんは少し赤くなっている。
「でもさ……」
梓は何か疑問点があるようだ。
「なんだよ?」
「千鶴姉は料理は壊滅的じゃない? そういう人はどうなるんだろ?」
「梓ちゃああぁぁん?」
「さあ、次に行こう、次に!!!」
俺は強引に次に話を進めようとする。
まあ……千鶴さんの場合は、自分をよりよく見せようとするけど、
料理が出来ないから、結局は失敗する……ってところか。
「耕一さぁん? 何を考えているんですかぁ〜?」
「うわっ! な、なんでもなななないですぅ〜」
……千鶴さん口調になってしまった。
●あなたの部屋のインテリアを考えて、
メインになる色を選ぶとしたら、どの色を選びますか?
A:赤
B:黄
C:青
D:緑
E:グレー
「アタシはAだね」
梓はA、赤か。
「私は……Cです……」
これは千鶴さん。
やばい……さっきの料理のこと、まだ根に持っているぞ。
……刺激しないようにしよ。
「私は・・・BかDですね・・・Bかも・・・」
楓ちゃんはBか……意外だな。
Dのイメージがあるが。
「私も、BかDだな……でも、Dの方かなあ?」
初音ちゃんはD……Bのイメージが強いのは、髪の毛の色の所為かな?
「俺はEだ」
即答。
「なんでEなんだ?」
「だって、Eのグレーだけ無彩色で分類が違うだろ?
それに、何かかっこいいじゃないか」
「耕一さん……選び方、間違っていると思います」
楓ちゃんのツッコミ再びだ。
★ここでは、あなたが求めているものがわかります。
AやBを選んだ人は、刺激や興奮を求めている人です。
よって、好奇心が旺盛で行動派です。
また、Bを選んだ人の中には、元気さを求めている人もいて、
『自分は暗いタイプかも』と思っている人かもしれません。
CやDを選んだ人は、鎮静や安全、平和を求めている人です。
よって、温厚で柔和な人です。
また、慌ただしい生活に追われている人、
人間関係の争いごとに巻き込まれている人かもしれません。
「アタシ、そんなに刺激や興奮を求めてはいないけどなあ」
梓は思案顔だ。
「行動派ってのがあてはまったんだろ」
俺が梓に答える。
「そうか……」
ま、千鶴さん絡みで俺たちに興奮と刺激をたっぷりと与えてくれるけどな、おまえは。
「元気さ……」
楓ちゃんも思案顔。
楓ちゃんは基本的に鎮静や安全、平和を求めるタイプだろうけど、
もしかしたら元気さが欲しいと無意識で思っているのかもな。
「ふうん……」
初音ちゃんの結果には納得できるものがある。
そして、千鶴さんの結果にも。
家族の平和を一番望んでいるのはこの人だからな。
ただ、無意識のうちにトラブルの火種をばらまいて、
平和をブチ壊しているのも千鶴さんのような気が……、
「……耕一さぁん?何を考えてらっしゃるんですかぁ?」
ゲッ!!
千鶴さんが恐ーい目でこっちを見てる。
ひょっとして、考えていること、ばれてるのか?
これがエルクゥの精神感応力ってやつ?
「さ、さて……俺はどんな結果なのかなあ〜?」
恐い。千鶴さんが。
Eを選んだ人は、憂鬱、悲しみを求めている人です。
内に篭る人、逃避癖のある人、
もしくは不幸になった自分に酔うタイプの人でしょう。
「お、俺って……」
なんなんだ、この結果は……?
なんか、碇シ○ジくんみたいじゃないか。
「耕一さん……」
楓ちゃんが心配そうに俺を見ている。
「何……かな?」
「何か、悩み事があるんですか?」
「へっ?」
「そうなの?耕一おにいちゃん」
初音ちゃんも心配そうに俺を見てくる。
「アタシたちでよかったら相談に乗るよ?」
梓も心配しているみたいだ。
「いや……俺は別に……」
「耕一さん!!」
千鶴さんが大声を出す。
「?」
「元気がないんですか?」
「え、その……」
「元気がないんですね?」
「いや……」
「わかりましたっ!!」
「えっと……」
「それじゃ、明日私がとっておきの手料理を作って差し上げますね!!」
これがずっと言いたかったんだろうな……千鶴さんは。
「い、いや……遠慮しま……」
「こ・う・い・ち・さ・んっ!?」
ギロッ!!
うおっ!!
石化光線も真っ青だ。
スタン効果、発動!!
「だめですよ」
千鶴さんはニッコリ微笑む。
嗚呼……その微笑みが天使じゃなくて、悪魔に見えてくるよ、千鶴さん。
「そうやっていつも逃げようとするんですから」
逃避癖って……こういう意味じゃないと思う。
「それじゃ、楽しみにしててくださいね〜っ!!」
千鶴さんはそう言い残し、意気揚々と自室に引き上げていった。
「耕一……」
「耕一さん……」
「耕一おにいちゃん……」
残りの3人は、哀れみと慈しみの眼で俺を見る。
「頑張れよ……耕一……」
「死なないで下さいね……」
「ごめんね……おにいちゃん……」
残りのみんなにも見放されたようだ……。
「さて……後かたづけでもするかな……」
「て、手伝うよ、梓おねえちゃん」
「私は、勉強の続きをしないと……」
みんないなくなった。
俺は一人たたずむ。
「こうなったら……」
そう、こうなったら……、
「逃げよう……」
逃げるしかない!
俺ってやっぱり逃避癖があるのか……?
「ああ……どうして俺がこんな目に……俺って不幸……」
…………なるほど。
俺って不幸になった自分に酔っている。
バッチリ当たってるじゃねーか。
(おしまい)
あとがき
えっと、はじめまして……の方もたくさんいらっしゃいますね。
dumiwo(づみを)と申します。
まだSSを書きはじめて1ヶ月と1週間の若輩者です。
この度、STEVENさんが私の相互リンクの申し出に快く応じて下さったので、
そのお礼ということで投稿いたしました。
私にとっては、初めての投稿です。
STEVENさん、長くなってしまい、申し訳ありません。
後半の性格心理テスト(?)の部分は、
7年前に興味本位で買った本の内容をもとに、私がアレンジしたものです。
一部、引用もあるかもしれません。
話の流れ上で質問を形成しましたので、余り深く考えないで下さい。
柏木家の人たちが選んだ答えも、
私がこの娘ならこう答えるんじゃないかと勝手に推測したものです。
ご了承下さい。
それでは。
<コメント>
さくら 「わたしは、1がAで、2もA、3がCですね」
あかね 「あたしは全部Aだよ」
誠 「俺は……」
さくら 「1がC、2はとばして、3はDじゃないですか?」
誠 「……よく分かったな」
あかね 「だって、まーくんの事だもん」
さくら 「まーくん……どうしてわたし達が1でAを選んだか、分かります?」
誠 「……いや、わからん」
あかね 「それはね……」
さくら 「……まーくんが、Cを選ぶからですよ♪」
誠 「……(ちょっと考える)……なるほど、こりゃ確かに用意周到だ」
あかね 「それにしても、家族っていいよね」
さくら 「そうですねぇ」
誠 「ああ……ちょっと憧れちまうかな」
あかね 「ねえ、まーくん? あたし達はいつ家族になれるの?」
さくら 「もう少しですよ。まーくんが18歳になるまで待ちましょうね」
誠 「は、ははは……」
S 「dumiwoさん、投稿ありがとうございました!」\(^○^)/