Heart to Heart
         
パロディー編

      
「おときばなし 浦島太郎」







<キャスト>

浦島太郎……矢島
亀……藤井 誠
子供A……園村 さくら
子供B……河合 あかね
子供C……エリア・ノース
子供D……フランソワーズ
乙姫……神岸 あかり
竜宮ダンサーズ タイ……藤田 浩之
竜宮ダンサーズ ヒラメ……藤原 かおる(特別ゲスト)
竜宮ダンサーズ イカ……相沢 憂希(特別ゲスト)
竜宮ダンサーズ タコ……津岡 陣九郎(特別ゲスト)
竜宮ダンサーズ マグロ……飯塚 幸一(特別ゲスト)









 昔々あるところに――

 浦島太郎という、それはそれは女にモテない猟師の青年が、
一人寂しく暮らしていました。

「って、ちょっと待てぃっ!! 何だ、その紹介の仕方はっ!!」

 コラコラ……、
 登場人物がナレーションにツッコミを入れないように。

 だいたい、事実をありのままに言っただけです。

「くそぅ……ナレーターのくせに生意気な……、
まあ、いい。何たって、今回は俺が主役だからなっ! しかも、乙姫役は神岸さんっ!
藤田の野郎は完全に脇役だし、これはもう俺の幸せ街道まっしぐらは決定だっ!!」

 でも、最後には玉手箱でお爺さんになっちゃうんだけど……、

「フッ……甘いな。竜宮城に行ってしまえばコッチのもんだっ!
絶対に地上に帰りたいなんて言わねぇぞっ!
そうすりゃ、お土産に玉手箱を貰うことも無いし、ジジイになることも無いっ!」

 なるほど……確かに、その通り。
 じゃあ、あんた、もしかして、竜宮城に居座るつもり?

「当然だっ! もう前回の『かぐや姫』のようなことにはならんぞっ!
俺は一生、竜宮城で神岸さんと愛欲に溺れた生活を送るのさっ!」

 はいはい、そうですか。
 まあ、無駄だと思うけど頑張ってくださいね。

「さあ、いくぜっ!! 俺のハッピーライフを手にする為にっ!!
まずは子供達にいじめられている亀を助けにれっつらごーだっ!!」


 
ダダダダダダァァァーーッ!!


 と、気合い入りまくりで家を飛び出して、
亀と子供達がいるであろう浜辺へと向かう矢島……じゃなくて浦島太郎。

 果たして、彼の計画は、思惑通りに進むのでしょうか?
 そして、乙姫の運命はっ!?

 って、どうでもいいけど、物語の先を読んで行動しないでほしいんだけどな……、
















 さて、少し時間を遡り―ー

 浦島太郎が家を飛び出したちょうどその頃、
四人の子供達は浜辺でのそのそと動いていた亀さんを発見していました。

「うみゃ〜♪ あんなところに亀さんがいるよ〜」

「まあ、本当ですね♪」

「可愛い亀さんですね〜♪」

「そうですね。みなさんの仰る通りですね」

 亀さんを見つけた子供達は、
その亀さんを取り囲んでキャーキャーと黄色い声を上げます。

 どうやら、この亀さんのことがいたく気に入った様子です。

「あ、あのさ……一応、俺、お前達にイジメられないといけないんだけど……」

 と、自分に与えられた役所をちゃんとこなそうとする意外に律儀な亀さん。
 しかし、その亀さんの言葉に、子供達はとても悲しそうな顔をします。

「そんな……まーくん……じゃなくて、亀さんをイジメるなんて……」

「うみゃ〜……そんなヒドイことできないよ〜」

「わたし、そんなことしたくないです」

「……さすがに、そのご指示は承諾しかねます」

 今にも泣きそうな顔で言う子供達に、さすがに亀さんも困ってしまいました。

「じゃあ、俺に一体どうしろっていうんだよ?
お前達が俺をイジメてくれないと、話が進まないんだぞ?」

 その亀さんの言葉を聞き、子供達のうちの一人が言いました。

「そんなの無視しちゃえば良いんです♪」

「――は?」

 あまりにミもフタもない提案に、亀さんは唖然としてしまいました。
 そんな亀さんを余所に、子供達は次々にその提案に賛同していきます。

「そうですね。私達に亀さんをイジメさせるようなお話は、無視しちゃいましょう♪」

「うみゅうみゅ♪ そうしようそしよう♪」

「それでは、亀様……ちょっと失礼します」

 と、子供達はいきなり亀さんを抱き上げてしまいました。

「お、おいっ! ちょっと待てっ! 俺をどするつもりだっ?!」

 突然、抱き上げられ、ジタバタともがく亀さん。

 しかし、所詮は亀です。
 子供達の力に敵うわけがありません。

「どうするつもりって……」

「それはもちろん……」

「……一緒にお家に帰るんだよ♪」

「亀様のお世話はワタシ達にお任せください」

 暴れる亀さんの言葉にそう答えると、
子供達はそのままスタスタと自分達の家へと帰り始めます。

 当然、抱かれたままの亀さんも一緒です。

「だああああーーーっ!! ちょっと待てっ!!
一応、俺にはまだ役目があるんだぁぁぁぁぁーーーーっ!」

 なおも抵抗を続ける亀さん。

「……亀さん? あたし達と一緒じゃイヤ?」

「あ、いや……そんなことは全然無いけど……」

 ですが、子供達の中でも一番小柄な子に悲しそうに見つめられ、
何も言えなくなってしまいます。

 そして、とうとう……、

「……ま、いいか」

 ……亀さんは、自分の役目を放棄してしまい、
そのまま子供達の家へと向かったのでした。
















 それから、しばらくして――
















「うおおおぉぉぉぉぉーーっ!!
亀は何処だぁぁぁーーーっ!!
乙姫さぁぁぁぁーーーんっ!!」
















 ……居る訳もない亀を探して、浜辺を走り回る一人の猟師の姿が、
三日三晩、目撃さけ続けたらしい。

 ――めでたしめでたし♪
















「めでたくねぇぇぇーーーっ!!
何でいつもいつも俺だけが
こんな役なんだぁぁーーっ!!」

















 ……そんなキミに相応しい言葉を贈ろう。

 ――『適材適所』♪
















「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!」

























 
――おまけ


「はい♪ ひろ……じゃなくて、タイちゃん、あ〜んして♪」

「あ〜ん……もぐもぐ……ゴックン……」

「うふふ♪ どう? タイちゃん、美味しい?」

「あ、ああ……あのさ、乙姫……俺達、こんなことしてていのか?
そろそろ亀に連れられて浦島太郎が来る頃なんじゃねーか?」

「大丈夫だよ。亀君、もう帰って来ないと思うから」

「……どういうことだ?」

「うふふ♪ それはね……、
あ、そうだ。タコさん、頼んでおいた物、出来てます?」

「ん? あの玉手箱のことか? まあ、一応出来てるけど」

「じゃあ、ヒラメ君とイカ君で、それを亀君に届けて来て欲しいの」

「これを……亀先輩に、ですか?」

「……これ、一体、どんな効果があるんだ?」

「これの中にある煙に巻かれるとな、人間になれるんだよ」

「つまり、これで亀先輩を人間にして来いってことですか?」

「そういうこと♪ 次はマグロ君の番だから、待っててね♪」

「あ、ああ……って、それってどういう……」

「うふふ♪ もうすぐマグロ君にピッタリの女の子が現れるからね。
あ、どんな子かは、その時までのお楽しみだよ♪」

「は、はあ……そうですか……」

「みんなが竜宮城を巣立っていけば、あとはわたしとタイちゃんの二人きりだよ♪
そしたら、二人でいっぱい子供を……、
うふふふふふ……♪ 待っててね、タイちゃん♪」(うっとり)

「は、ははは……まあ、そんなに焦んなくていから……うん」(大汗)








 ――ちゃんちゃん♪








<おわり>
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