Heart to Heart
パロディー編
「小説 魔法少女プリティーサミー」
ここは、我々の世界とは全く別の次元に存在する国――
けれど、近くて遠い魔法の国――
――その名を『グエンディーナ』。
今、そのグエンディーナで、次期国王を選出する為の儀式が行われていた。
王位継承権を持つ者は二人……、
このグエンディーナでも、一と二を争う魔法使い……、
スフィー=リム=アトワリア=クリエール――
リアン=エル=アトワリア=クリエール――
――そう。
名前を聞いても分かる通り、姉妹の対決である。
普段は仲の良い二人の姉妹……、
だが、この時ばかりは、お互いに敵同士だ。
「どっちが選ばれても、恨みっこ無しだからね、リアン」
「はい……姉さん」
と、頷き合い、緊張の面持ちで、決定権を持つ神官達の言葉を待つ二人。
ちなみに、この二人にとって、王位継承権なんて、実はどうでも良かったりする。
二人が欲しいのは、王位を継承する事で得られる、
宮田 健太郎との婚約権だけなのだ。
でなければ、仲の良いこの二人が対立する事など有り得まい。
特に、心優しいリアンならば、スフィーに継承権を譲るだろう。
しかし、健太郎への想いだけは、お互いに譲るわけにはいかない。
だからこそ、二人は闘う事を選んだのだ。
全ては、愛する者を手に入れる為に……、
そして……、
「それでは、結果を発表するっ! グエンディーナの王位継承者は――」
……その闘いの答えが、神官達によって伝えられた。
「――リアン=エル=アトワリア=クリエールとするっ!」
「……というわけで、頑張ってくださいね、あかねさん♪」
「うみゃ〜っ!! 何が『というわけ』なの〜っ!!」
突然、自分の部屋に現れたリアンの言葉に、
あかねは頭を抱えて絶叫した。
まあ、いきなり現れて『魔法少女』になれ、と言われたら、
困ってしまうのも無理はないだろう。
だが、そんなあかねにはお構いなく、リアンは勝手に話を進めていく。
どうやら、健太郎が関わると、普段の謙虚さは鳴りを潜めてしまうようだ。
「ですから、私がグエンディーナの王位を正式に継承するには、私と魂を同じくするあかねさんに、
『魔法少女プリティーあかねっち』として善行を積んで頂かなければならないんです」
「王位継承権? 魔法少女? 善行?」
「はい……勝手なお願いだとは重々承知の上で、お願いします」
と、そう言って、ちょっと申し訳なさそうに事情を話し、あかねに頭を下げるリアン。
健太郎との婚約権に関する事は伏せているあたり、何気に策士である。
だが、根が優しくて素直なあかねが、そんなことに気付くわけが無い。
それどころか、こうして頭を下げられてしまっては、無下に断ることも忍びなく……、
「う、うみゃ〜……」
頭を下げるリアンを前に、オロオロするあかね。
そんなあかねの様子に、脈あり、と見て取ったリアンは、
畳み掛けるように、最後の切り札を使用する。
「そうそう……あかねさん一人では大変だと思うので、
サポート役として、この方を――」
そう言って、懐から一枚の写真を取り出し、あかねに渡すリアン。
その写真に映る人物を見た瞬間、あかねはアッサリと決断を下した。
「――魔法少女、やらせて頂きますっ!!」
かくして、ほとんどなし崩し的に……、
というか、子供番組らしからぬ裏取引により……、
――『魔法少女プリティーあかねっち』は誕生した。
「よしっ、あかねっ! 今日もプリティーあかねっちに変身だっ!」
「うみゅ♪ じゃあ、変身するから……まーくん、キスして♪」(ポッ☆)
「何でそうなるっ!!
「え〜? だって、あたしが変身するには、まーくんとキスして、魔力を貰わなきゃならないんでしょ?
それで、あたしに魔力を供給したまーくんは、可愛い動物の姿に……」
「このSSの元ネタはプリティーサミーであって、まじかるカ○ンじゃないっ!
変身する時は、呪文を唱えるだけで良いんだよっ!!」
「変身シーンで、服が弾け飛んだりしない?」
「……まあ、そのへんはお約束だから諦めろ」
「うみゃ〜……」
「ま、まあ、何だ……、
見てるのは俺だけなんだから良いだろ?」(ポッ☆)
「う、うん……」(ポポッ☆)
「…………」(真っ赤)
「…………」(真っ赤)
「じゃ、じゃあ……あたし、変身するね!」
「お、おうっ! 頑張れっ!」
「プリティーミューテーションッ!!
マジカルリコールッ!!」
というわけで……、
リアンから授かった魔法を使い、サポート役の『まーくん(藤井 誠)』とともに、
プリティーあかっちは、次々と善行を重ねて行く。
その成果は目を見張るもので、リアンの善行ポイントはドンドン貯まっていき、
正式な王位継承は、もはや時間の問題とも言えた。
だが、さすがに黙っていられないのはスフィーである。
王位継承権などいらないが、健太郎を黙って渡す事など出来ない。
そこで、スフィーは、自分もまた、魂を同じくする者を使い、
善行を重ねるプリティーあかねっちへの妨害行為を計画し始めた。
そして……、
プリティーあかねっちの前に、最強のライバルを現れる。
その名は『魔法少女ピクシィさくらっち』。
それをサポートするのは、自動人形の『フランソワーズ』。
――そう。
スフィーと魂を同じくする者とは……、
あかねの親友であり、幼馴染でもある『園村 さくら』だったのだ。
「いきますよっ! プリティーあかねっちさん!!
魔力集中っ! フランパン炎の構えっ!!」
「ピクシィさくらっちちゃん! あたしだって負けないよっ!」
魔力解放っ! ごるでぃおんばっと!!」
「ふぁいやー、ですっ!!」
「ひかりになっちゃえーーーっ!!」
グエンディーナの王位継承権を巡り……、
互いの正体を知らぬまま……、
親友同士で闘いを繰り広げるあかねとさくら。
と言っても、元々が善人であるさくらがする悪い事など、たかが知れている。
せいぜい、ご近所にちょっぴり迷惑を掛けてしまう程度の悪行だ。
例えば……、
「やりましたよ、フランさん! ピンポンダッシュ、成功です!」
「お見事です、さくらっち様!」
とか……、
「ああ……仕方ない事とはいえ、
こんなところに落書きをしてしまうなんて……」
「さくらっち様、堪えてください! これも全て、あかねっち様を倒す為なのです!
ですが、せめて、油性ではなく水性のマジックを使う事にしましょう」
とか……、
「ゴクゴク……ふぅ……、
あ、あとは……この空き缶を道端に投げ捨てるだけですね」
「頑張ってくださいっ! 闘いが終わった後で、ワタシがゴミ箱に捨てておきますから。
もちろん、ちゃんとアルミ缶専用のゴミ箱に、です」
……とまあ、この程度である。
でも、その程度の事であろうと、やはり悪行は悪行。
正義の魔法少女であるプリティーあかねっちは、それを阻止しなければならない。
……故に、二人は闘うのだ。
プリティーあかねっちは、善行を重ねるため――
ピクシィさくらっちは、それを邪魔するため――
しかし、二人は知らない……、
この闘いが一人の男性を奪い合う姉妹による、ただの代理戦闘でしかない事を……、
だが、何事にも、始まりがあれば終わりがあり……、
そんな本人達にとって無意味な闘いも……、
プリティーあかねっちの勝利、という形で、終わりを告げようとしていた。
「これで最後だよ……ピクシィさくらっちちゃん」
「……完敗です、プリティーあかねっちさん」
激しい戦いの末、潔く負けを認めるさくらっち。
そんなさくらっちに、優しく手を差し伸べるあかねっち。
闘いの中で、いつしか二人の間には強い友情が芽生えていたのだ。
まあ、元から親友なわけだし、当然といえば当然だろう。
――とにかく、二人の闘いは終わった。
さらに、これまでの闘いで、リアンの善行ポイントは充分に貯まり……、
スフィーもまた、己のやってきた行為の無意味さに気付き……、
王位継承権と健太郎との婚約権は、正式にリアンに受け渡され……、
……ようやく、全てが終わったのだ。
しかし……、
まだ闘いは終わってはくれなかった――
なんと、王位継承の候補から外された、第三の魔法使い『牧部 なつみ』が、
嫉妬と言う負の感情『ココロ』に支配されたカタチで現れたのだ。
さらに、なつみと魂を同じく者『魔法少女ラブミィえりりん』こと『エリア・ノース』……、
グエンディーナに封印されていた禁断の魔法戦艦『ガディム』……、
そして……、
「あらあらあらあら♪」(はるか)
「所詮、お子様な貴方達が……」(あやめ)
「大人の魅力を持つ……」(ひかり)
「みーちゃん達に……」(みこと)
「勝てると思っているのですか?」(秋子)
……やっぱり出てきた人妻隊。(爆笑)
「プリティーあかねっちさん、一緒に闘いましょうっ!」
「うんっ! 絶対に勝つよっ!」
まさに最強とも言える力に対し、
芽生えた友情パワーで立ち向かうあかねっちとさくらっち。
だが、やはり人妻の力には歯が立たず、あかねっちとさくらっちは力尽きる。
その光景を見て、誠は、ただ絶叫することしかできない……、
「止めろっ!! 頼むから、もう止めてくれっ!!
みんなが闘う理由なんて、何一つ無いんだっ!!」
絶対絶命のピンチを迎える二人の魔法少女……、
しかし、そこに差し込む一筋の光明……、
「誠さんを悲しませる人は、誰であろうと許しませんっ!
なつみさん、人妻隊の皆さん……私は、あなた達を倒しますっ!」
誠にひと目惚れしたラブミィえりりんが、アッサリとなつみを裏切る。
さらに……、
「頼む、魔法少女達よ! みことを……人妻隊の皆を助けてやってくれっ!
彼女達は、ただ操られているだけなんだっ!!」
藤井 誠の父であり、人妻隊の一員のみことの夫であり、
天才科学者でもある『藤井 尚也』によって、魔法少女達に与えられる新たなる力。
――魔法少女強襲用ブースター。
――機体番号、NTM−87PS03。
正式名称『ハート・トゥ・ハート』。
究極の魔法兵器を駆って、
最後の闘いへと赴く魔法少女とそのパートナー達……、
そんな彼女達を、期待を込めた眼差しで見送る尚也……、
「魔法少女のコスチューム……萌え萌えだな。
この闘いが終わったら、みことにも着てもらおうかな♪」
この男……、
やはり、警察に突き出すべきなのかもしれない……、
そして……、
のちに『魔法大戦』と呼ばれる、史上最大の闘いが幕を開ける。
果たして、勝利の女神はどちらに微笑むのか――
魔法少女達の恋の行く末は――
そして、すっかり蚊帳の外に追いやられてしまった健太郎のお相手は――
その全てが、今……、
この瞬間に……、
「恋も魔法もあたし達におまかせっ! 魔法少女プリティーあかねっちっ!!」
「同じく、ピクシィさくらっちっ!!」
「同じく、ラブミィえりりんっ!!」
「「「お呼びでなくても、参上ですっ!!」」」
<おわり>
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