『フォースシルエット、射出!』

『シン、こんな時に何だが……』

『――何でしょうか?』

『フレッツスクウェアで、
キミは、少し喋り過ぎだと思うのだが?』

『何で、議長まで、
チェックしているんだぁぁぁーーーっ!!』








「出番少ないんだから、
そのくらい、大目に見てやれよ」

「……主役なのに、影が薄いですからね〜」











第220話 「何もない一日」









 ある日の午後――

 わたしと、まーくんは、
お家で、のんびりと、テレビを見ていました。

 二人並んで、ソファーに座り……、

 優雅に紅茶を飲みながら、
わたし達は、ゆったりと、休日の午後を満喫する。

「まーくん、おかわりは?」

「ああ、貰うよ……」

 ティーポットを片手に、わたしが訊ねると、
まーくんは、空になったカップを差し出しながら、軽く頷きました。

 傾けられたポットから、琥珀色の液体が注がれ……、

 まーくんは、お皿に盛られた、
クッキーを一枚、頬張り、それを紅茶と一緒に飲み込みます。

 実は、このクッキー、わたしの手作りです。

 ただ、今回は、少し失敗して、
食感がパサパサになっちゃいまして……、

 こうして、紅茶と一緒じゃないと、ムセてしまうんです。

 そんな失敗作のクッキーを、
まーくんに、食べさせるわけにはいきません。

 だから、本当は、捨ててしまうつもりだったんですけど……、

「うん……美味い」

 それでも、まーくんは、
美味しそうに食べてくれています。

 まーくんが、食いしん坊、という理由もあるのでしょうが……、

 こういう優しさが……、
 まーくんの素敵なところだと、わたしは思います。

「……どうした?」

「い、いえ……何でもないです」

 いつの間にか、まーくんを、
ジ〜っと、見つめてしまっていたようです。

 その視線を感じ、まーくんが、わたしの顔を覗き込んできました。

 何となく気恥ずかしくなり、
わたしは、慌てて、まーくんから目を逸らすと……、

 照れを誤魔化そうと、自分のカップに、新たに紅茶を注ぎます。

「……?」

 そんなわたしの態度に、首を傾げるまーくん。

 そして、何を思ったのか、
わたしに向かって、おもむろに手を伸ばすと……、


 
さわさわ……


「――ま、まーくん?」

「いや、何となくさ……」

 突然、まーくんは、わたしの髪を、優しく撫で始めた。

 まるで、流れるように、
まーくんの手が、わたしの長い髪を梳いていく。

「どうしたんですか、いきなり……?」

「だから、何となく……、
もしかして、髪を触られるのイヤだったか?」

「そんな事ないですよ♪」

 ――むしろ、もっと触ってください。

 と、そんな事を考えつつ、
わたしは、まーくんに凭れ掛かり、身を任せる。

「そういえば、こうして、
二人きりなのは、久しぶりだな」

「そうですね……」

 まーくんの言葉に、
わたしは、半ば、上の空のまま頷きます。

 だって、とても気持ち良いんですもの……、

 まーくんの手が動くたびに……、
 頭と体、そして、心も、ふわふわして……、

 もちろん、これは、相手が、まーくんだからです。

 もし、これが、他の人……、
 特に男性だったら、不愉快でしかありません。

「はあ〜……♪」

 思わず、毀れる溜息……、

 それに、こうしていると、
気持ち良すぎて、眠くなってきちゃいます。

「眠いなら、眠っても良いぞ?」

「は、はい……でも……」

 わたしが、眠気のあまり、
ウトウトとし始めた事に、気付いたみたいです。

 まーくんは、髪を撫でる手を休めぬまま、わたしの耳元で、優しく囁きます。

 その誘惑に、わたしは、
ついつい、負けてしまいそうになる。

 でも、折角のお休み……、
 折角、まーくんと二人きりなのです。

 ――もっと、この時を大切にしたい。

 眠ってしまうなんて、
そんな、勿体無い真似はしたくない。

 それなのに……、
 ああ、それなのに……、


 
さわさわ……

 
さわさわ……


 まーくんの手は……、

 問答無用で、わたしの、
全てを溶かすように、意識を刈り取っていく。

「ふぁ……」

 とうとう、欠伸が洩れた。

 甘い誘惑に負けた、
わたしの体は、力を失い、倒れてしまう。


 
ぽすっ……


 倒れた先は、まーくんの膝の上――

 枕にしては……、
 ちょっと硬いですけど……、

 でも、頬から伝わる、まーくんの温もりが心地良いです。

 そういえば……、
 まーくんに膝枕して貰うなんて、初めてかも……、

 いつもは、わたしが、
まーくんに膝枕してあげてましたからね。

「これじゃあ、立場が逆ですよ」

「たまには良いだろ?」

 そう言って、わたしは、
まーくんの膝の上から、顔を見上げました。

 すると、まーくんは、楽しそうに微笑んで、わたしの頭を撫で始めます。

 もしかして、まーくん……、
 最初から、これが狙いだったんですか?

 もし、そうだとしたら……、

 今日のまーくん……、
 ちょっとだけ、えっちなモードです。

 女の子の寝顔が見たい、だなんて……、

「…………」(ポッ☆)

 まーくんの意図を知り、わたしは顔を赤くする。

 そんなわたしの様子に、
気付いているのか、いないのか……、

 まーくんは、わたしの髪を撫でるのを、止めようとはしない。

 さて、どうしましょう……、

 正直なところ、
例え、相手が、まーくんとはいえ……、

 無防備な寝顔を見られるのは、ちょっと恥ずかしいです。

 でも、まあ……、
 たまには、こういうのも良いかもしれませんね。

 折角の休日……、
 折角の二人きりですけど……、

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「それじゃあ、ちょっとだけ……」

「ああ……」
















 おやすみなさい……、

 まーくん、大好きです……、








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