Heart to Heart

     第175話 「若いツバメ」







 ある日の朝――

 朝食の用意をする為に、目を覚ましたあたしは、
キッチンへ向かう途中、リビングのソファーで寝ている誠君を発見した。





「――あら? 誠君ったら、こんな所で寝てたの?」

 多分、あかねの部屋から引っ張り出して来たんでしょうけど……、

 可愛らしいクマの模様が施された毛布に身を包み……、
 誠君は、その毛布の模様に負けないくらい可愛い寝顔で眠っている。

 そんな誠君の姿を見て、あたしは、
一瞬、我が家で誠君が寝ていることに疑問を抱き、首を傾げた。

 だが、すぐに昨日のことを……、
 それはもう、美味しそうに鰻を食べていた誠君の姿を思い出し、大きく溜息をつく。

 そういえば……、
 昨夜は、誠君を夕食に招待したんだっけ。

 で、我が家に泊まっていくように薦めて……、
 あかねの部屋に入っていくのを、しっかりと見届けたんだったわ。

 全ては、二人の仲を進展させる為に……、
 全ては、三十代で孫を抱く、という夢の為に……、

 だが、しかし……、
 一週間も前から練っていた、その計画の結果は……、

「まったく、この子は……」

 あたしの計画を、アッサリとブチ壊しにしてくれた、
誠君の、あまりの甲斐性の無さに、あたしはちょっぴり怒りを覚える。

 せっかく、あかねと同じ屋根の下にいるのに――
 せっかく、鰻までご馳走してあげたのに――
 せっかく、昨日は排卵日だったのに――

 それなのに……、
 誠君ったら、あかねを放って、こんな所で寝てるなんて……、

 思わず、ゴルフクラブで殴り倒したい、という衝動が湧き上がってくる。
 だが、あたしは、それを何とか堪えると……、

 今更、悔やんだって仕方ないし……、
 こんなに気持ち良さそうに寝てるのを起こしちゃ可哀想だものね。

 ……と、内心で呟きつつ、あたしはゴルフクラブをしまった。

 そして、今後の計画に活かす為にも、
気持ちを新たに、今回の反省点を考えることにする。

「計画は、ほぼ完璧だったのよ……でも……」

 やっぱり……、
 最後のアレが裏目に出ちゃったのかしらねぇ?

 あたしは、昨夜の計画で打った最後の一手を思い出し、再び溜息をつく。

 実は、あたしと旦那の寝室は、あかねの部屋の隣にあるんだけど……、

 昨夜は、その位置関係を利用して、
誠君とあかねの雰囲気を盛り上げようと、思い切り旦那と激しくヤッちゃったのよねぇ〜。

 いくら奥手の誠君でも、鰻で空腹と精力を満たされ、
さらに、壁の向こうの夫婦の情事の様子を耳にすれば、ムラムラッとくるに違いないっ!

 ――と、そう思ってたんだけど、完全に逆効果だったみたい。

 誠君が、こんな所で寝てるのは、
隣の部屋から漂ってくるピンクムードから逃れる為、ってところかしら?

 そんな事を考えつつ、あたしは寝ている誠君の頬を突つく。

「それにしても、すっかり逃げ癖がついちゃって……」

 あたしの所為で、昨夜は遅くまで寝られなかったのだろう。
 どんなに突ついても、誠君は、全く反応を見せず、スヤスヤと眠り続けている。

 そんな誠君の寝顔を、あたしはボ〜ッと眺め――
















 ……美味しそう。
















「――って、何を考えてるのよ、あたしはっ!?」


 あたしは我に返ると、頭をポカポカと叩き、
一瞬、脳裏に浮かんだアブない妄想を、慌てて打ち消す。

 いけない、いけない……、
 あんまり、誠君の寝顔が可愛いものだから、ついつい見惚れて妙な事を考えちゃったわ。

 まったく、あたしとしたことが……、
 いくらなんでも、未来の息子を味見したいだなんて……、

 そんな……そんな……、


 ……。

 …………。

 ………………
じゅる。


 イケナイ衝動を理性で抑えつつ、あたしは口元の涎を手で拭う。

 さ、さすがは、みことの子供ね……、
 贔屓目もあるんでしょうけど、この愛らしさの破壊力は油断出来ないわ。

 すぐ傍にあたしがいるにも関わらず、
さっきから、一向に目を覚ます気配を見せない誠君……、

 そんな誠君の無防備な姿に、あたしはある種の戦慄を覚える。

 マズイわ……、
 これ以上、誠君の寝顔を見てたら、本気になっちゃいそう。

 と、あたしは、慌てて誠君の顔から目を逸らす。

 しかし、逸らした先が悪かった。
 そこには、ある意味、寝顔よりも強烈なモノがあったのだ。

「や、やだ……」(ポッ☆)

 『ソレ』を目にした瞬間、あたしは思わず頬を赤らめる。
 そして、いけないとは思いつつも、『ソレ』を食い入るように見つめた。

 もう、誠君ったら……、
 昔は、あんなに可愛かったのに……、

「……いつの間に、こんなに立派になっちゃったのかしらん♪」

 毛布の一部分を力強く押し上げている『ソレ』――
 寝ている本人とは裏腹に、しっかりと起きている『ソレ』――

 すなわち……、



 ――誠君が健康的な男の子である証。



「朝だから、とはいえ……凄いわねぇ」

 よく考えれば……、
 臨戦体勢に入った誠君のモノを見るのは初めてで……、

 その予想外の凄さに、あたしは目を離すことが出来ず、ゴクリッと唾を飲み込む。

 もちろん、ウチの旦那の方が、まだまだ凄いと思う。
 特に、大きさについては、誠君のモノを、直接、見るまでもなく、断言できる。

 でも、勢いというか、何というか――

 ――そう!
 誠君の『ソレ』には、旦那には無い若々しさがあるのよっ!

 その若者特有の力強さ……、
 そして、暴力的なまでの荒々しさ……、

「はぁ〜……♪」

 もう、見ることなど無いだろうと思っていたモノ……、
 『若さの象徴』を、あたしは、上気した頬に手を当て、ウットリと見つめる。

 まだ、女を知らないが故に、興奮した『ソレ』は、痛いくらいに張り詰めているであろう。

 それに、昨夜のことを考えると……、
 我が家で処理するわけにもいかなかったでしょうし……、

「一体、どのくらい凄いことになってるのかしら?」

 勢い良く毛布を持ち上げている『ソレ』に、
見惚れていたあたしの胸に、ふと、そんな好奇心が湧き上がってくる。

 そして……、

 誠君の『ソレ』を見て……、
 すっかり興奮してしまったあたしが、その好奇心に抗えるわけもなく……、





「ちょっとだけ……♪」



 



 あたしは、ゆっくりと……、
 眠っている誠君のパジャマのズボンに手を伸ばした。
















見るだけなら、良いわよねぇ♪

少しくらい触っても、許されるわよねぇ♪

ちょっとだけ咥えてみても、誰も文句言わないわよねぇ♪

昨夜のお詫びとして、処理してあげるべきよねぇ♪




















ああ、もうっ!!
いっそのこと、美味しく育った
青い果実は、このあたしがっ!!

















「……何、やってるの?」

「――ほへ?」
















「お母さん……何、やってるのかな?」(怒)

「あ、あはは……おはよう、あかね」(汗)

 突然、後ろから聞こえてきた声に、
あたしは、誠君のズボンを半ばまで下ろしてした手を止める。

 そして、ギギギィッと首を後ろに回すと……、



「…………」(怒)

「…………」(大汗)



 そこには、クマさんバットを肩に乗せ……、
 怖いくらいに満面の笑みを浮かべている我が娘の姿があった。

「取り敢えず、何か言う事はある?」

「え、え〜っと……じゃあ、一つだけ訊いても良いかしら?」

「うん、いいよ」

 その笑みを絶やさぬまま、あかねはあたしに問い掛ける。
 それに対し、あたしは引きつった表情のまま、気になっていたことを訊ねた。

「あなた、昨夜は誠君と一緒に寝たのよね?」

「うん、そうだよ」

「なのに、どうして、彼を逃がしちゃったの? せっかくのチャンスだったのに……」

「うにゅ〜、それは、その……、
まーくんに頭をなでなでされてたら、気持ち良くなって、そのまま寝ちゃったの」

「もう、ダメじゃない。そんなことじゃ、誠君の貞操は奪えないわよ?」

「うみゅ、そうだよね……、
でもね、お母さん……だからって……」
















「お母さんが、まーくんの貞操を
奪おうとしちゃダメでしょぉぉぉっ!」



「ゴメンなさぁぁぁぁーーーいっ!!
ほんの出来心だったのぉぉぉっ!」

















 その後――

 怒ったあかねのクマさんバットで、
しこたま殴られたあたしは、誠君を襲おうとした罰として……、


 
『一週間、お父さんとイチャイチャするの禁止っ!』


 ……を言い渡されたのだった。(泣)
















 いいもん、いいもん……、

 旦那とイチャつけないなら、
その分、誠君に相手してもらっちゃうんだからっ!!








「それは、もっとダメッ!!」

「――けち〜」








<おわり>
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