Heart to Heart

     
第121話 「お・し・お・き♪」







 ある休日の午後――

 気が付くと、何故か俺は、我が家の居間で磔にされていた。
 しかも、ご丁寧に、俺を拘束しているのは十字架だったりする。

 まあ、なんだ……ようするに、今の俺はイエス・キリストというか、
ジオフ〇ントの白い巨人のような状態になってしまっているわけだ。

 ――これで、あとは血の色をした槍があれば完璧だな。

 ……などと、悠長な事を考えながら、状況を確認する為に、
唯一、自由が利く首を巡らせて、俺は周囲を見回す。

 と言っても、別にそんな事をする必要は無いんだよな。

 何故なら……、





「…………」(じと〜)

「…………」(じと〜)

「…………」(じと〜)

「…………」(じと〜)





 ……すぐ目の前に、俺をこんな目に遭わせている犯人であろう四人が、
それぞれの得物を持って、俺をジト目で睨んでいたからだ。

「取り敢えず、状況の説め……」


「それじゃあ、説明しま……♪」


 と、俺が言い掛けた瞬間、何処からか妙な人の気配を感じた俺は、
慌ててセリフを言い直す。

「……状況の『解説』を頼めるかな?」


「しくしくしくしく……」(泣)


 あ……、
 なんか物陰から泣き声が聞こえるような……、

 ……まあ、気にしないことにしよう。
 そんな事よりも、今はこの状況をどうやって打開するかを考えないとな。

 ……ってゆーか、こんな目に遭わされる理由ってのに、
全然、まったく、これっぽっちも心当たりが無いんだけどな。

「……まーくん、自分が何をしたのか分かっていないみたいですね?」

 愛用のフライパンを弄びつつ、さくらが俺を冷ややかな目で見つめる。
 見れば、他の三人も同様だ。

「な、何って……俺、何かお前達の気に障るようなことしたか?」

 その視線の圧力に冷や汗を流しつつ、俺は記憶を探る。

 確か、今日は午前中は『電子の妖精』さんに依頼されていたプログラムを組んでいて、
午後は『天河食堂』で、偶然、バッタリと会った耕一さんと昼メシを食べてから、
公園のいつもの場所で昼寝をしていたはずだ。

 で、目が覚めたら、ここでこうして磔にされていて……、

 ……何だ?
 やっぱり、こんな目に遭わされるような真似はしてねぇぞ?

 こいつら、もしかして何か勘違いしてるんじゃねーか?

 それとも……、
 もしかして……もしかすると……、








 ――実は、こういうのが趣味だったりするのか?








 いやいやいやいや……、
 そんな事は絶対に有り得ない。

 もし、そうだったら、俺はとっくの昔に『目覚めさせられている』はずだ。

 それに、今まで、そんな素振りは全く無かったし、
今になって急にそんな趣味に走るわけがない。

 でも……、
 だとしたら、俺は何でこんな事に……、

「どうやら、本当に分かっていないみたいですね」

 と、頭を捻り続ける俺の様子を見て、
両手に出現させていた火球でお手玉をしていたエリアが言う。

 そして……、

「それでは、誠さんに証拠をお見せしましょう。
あかねさん、お願いします」

「うみゅ……」

 そう言うと、エリアはクマさんバットを肩に担いでいたあかねに何か合図を送った。

 エリアの言葉に頷いたあかねは、
テーブルの上に置いてあった俺のノートパソコンを起動させる。

「あかね様……どうぞ」

 そして、竹ボウキを握り締め、悲しそうな瞳でジーッと俺を見つめていたフランから、
これまた俺のデジカメを受け取り、UBS端子でそれらを接続した。

「…………?」

 一体、何をするつもりなのか、と、俺が見つめる中、
あかねは慣れない手つきでマウスを操作して、
デシカメに記録されている画像をパソコンに取り込む。

「まーくん……これを見れば、もう言い訳なんて出来ませんよ」

 と、さくらが言うと同時に、問題の画像がフルウインドウで、モニターに表示された。








「――ぶっ!!」








 その画像を見て、一瞬、俺は意識が飛ぶかと思った。
 そのくらい、本気で驚いた。

 おそらく、さくら達が、俺のデジカメを使って撮ったのだろう。
 モニターには、公園で昼寝する俺の姿が表示されている。

 で、当然と言うか何と言うか……、
 眠っている俺の周りには、数匹の猫も一緒になって眠っていて……、

 まあ、このへんまでは別に問題はない。
 こんなのは、いつもの光景だ。

 だが、一つだけ……、
 いつもの光景とは大きな違いがあった。

 それは……、
















 
何で、リアンさんが一緒になって寝てるんだっ!?
 
しかも、俺にピッタリ寄り添ってっ!?
 
ってゆーか、何故に猫耳猫尻尾っ!?








 
一体、これはどういう事だっ!!
















「まーくん……」

「あたし達が何を言いたいのか……」

「……当然、分かりますよね?」

「誠様……ご愁傷様です」

「ちょっと待てっ!! これは何かの間違いだっ!
濡れ衣だっ! 誤解だっ! 冤罪だっ!!
俺は何も悪くないっ!! 何も知らないんだぁぁぁぁーーーーっ!!」



 完全に身に覚えの無い事実を見せられ、
それによってこれから起こるであろう惨劇を想像してしまう俺。

 そして、その恐怖から逃れる為に、
無駄だとは知りつつも、俺は縛めを外そうと必死でもがく。

 だが、当然の如く、俺の両手両足を拘束する縄が、
その程度で解けるわけもなく……、

「というわけで、まーくん……」

「今から……お・し・お・き、だよ♪」

 と、もがく俺を何やら楽しそうに眺めつつ言うと、
さくらとあかねがひと抱え程の箱を取り出した。

 その箱は、よくコンビニとかの三角クジで使われている、中に手を突っ込めるタイプの箱だ。

「そ、それはっ!! まさか……」

 その箱に見覚えがある事に気付き、俺の背中に戦慄がはしる。

 ――そう。
 俺の記憶に間違いがなければ、あの箱は……、

「お察しの通りです。
この箱は、あかりさんに事情を話して借りてきました」

「つ、つまり……それは……」(汗)

「うみゅ♪ 
おしおき箱だよ〜♪」

「やっぱり……」(泣)

 考えたくなかったその事実を突き付けられ、
俺は力尽きたようにガクッと頭を垂れる。

 お、終わった……、
 何もかも……、

 俺はこのまま、浩之達がやっていたような、
それはそれはこっ恥ずかしいあ〜んなことやこ〜んなことをさせられるんだ。

「そういうわけですので、誠さん……」

「一人一枚ずつ、合計四枚、引いてくださいね♪」

「うにゃ〜♪ 楽しみ楽しみ♪」

「も、申し訳ありません……誠様、ワタシの分も……」(ポッ☆)

 さくら達はそう言うと、俺の縛めを解く。
 そして、期待に満ちた表情で、俺に『おしおき箱』を差し出したのだった。

 うううう……、
 もう、好きにしてください……、
















 ちなみに――

 一体、俺がどんなおしおきを引き当ててしまったのか、だが……、

 ……頼む。
 それだけは訊かないでくれ。(泣)
























 一方、その頃の宮田家――

「コラーッ! リアンッ! いきなり飛び出して行っちゃったと思ったら、
今度は帰ってきた途端、けんたろに甘えてーっ!
けんたろはあたしのなんだから離れなさぁぁぁーーーいっ!!」

「にゃ、にゃ〜……」

「ま、まあ、そう言うなよ、スフィー。
今はまた猫の霊に取り憑かれちゃてるわけだし……」

「そうね……前みたいに、いっぱいかまってあげれば成仏するでしょ」

「でも、店長さん……ニヤニヤしながらそんなこと言っても説得力無いよ」

「うっ……」

「はあ〜……健太郎さんって正直なんですね〜」

「あうあうあうあう……」(汗)

「うにゃ〜〜〜〜〜ん…………ぺろっ♪」











 ――ちゃんちゃん♪








<おわり>
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