Heart to Heart

      
第119話 「ねんねんころりよ」







「……眠れません」

 ある日の真夜中――

 そう一人呟き、わたしは被っていた布団から頭を出しました。

 すっかり暗闇に慣れてしまった目で、
わたしはチラリと目覚し時計を見て、時間を確認します。

 はあ……、
 もう二時を過ぎてるじゃないですか。

 と、小さく溜息をつき、わたしは目を閉じます。

 しかし、一向に眠気は訪れず、シーンと静まり返った中、
カッチカッチという時計の音がやたらと耳につきます。

 こういう経験って、誰にでもありますよね?

 妙に目が冴えてしまって、眠れない夜を過ごすってこと……、

 明日も学校ですから、早く寝なければいけないことは分かっているんです。
 早く寝なければ、寝坊してしまうということは分かっているんです。

 だから、早く眠らないと、って思うんですけど、
気ばかり焦ってしまうせいか、ますます目が冴えてしまって……、

「……眠れません〜」

 どうしても眠ることが出来ず、わたしはまた溜息をつきました。
 もう、何度目なのかも覚えていません。

 はあ……、
 困りましたねぇ……、

 わたしは目を開けて、何気なく机の上に目を向けます。
 そこには、フォトスタンドに飾られたまーくんの写真が……、

「…………」

 何となく、まーくんのお顔がみたくなったわたしは、
布団に入ったまま手を伸ばし、写真立てを手に取りました。

「はふぅ……まーくん……♪」

 写真の中のまーくんのステキな笑顔に見惚れ、
わたしはさっきまでとは違う溜息をついてしまいます。

 実は、この写真は、わたしのまーくんコレクションの中でも最高の一枚なんです。

 この写真の中のまーくんの笑顔は、
今までわたし達が見てきたまーくんの笑顔の中でも、とびきりステキな笑顔なんです。

 だから、何度見ても、絶対に見飽きるなんてことはありません。
 もう暇さえあれば、何時間だって眺めていられます。

 ……あ、でも、そんな時間があるなら、
まーくんのお家に行って、直接、まーくんに会った方が断然良いですね。

 どんなに写真の中のまーくんがステキでも、
やっぱり本物のまーくんが一番ステキですからね♪

 ちなみに、この写真は
『鑑賞用』です。
 ですから、当然、これ一枚しか無い、なんてことはありません。

 ネガはちゃんと保管してありますし、
アルバムの中には
『保存用』して一枚入っています。

 あと、これは言うまでもないですが、
生徒手帳の中には
『携帯用』として一枚……、

 さらに、今、わたしが抱いているまーくん抱き枕のカバーの中にも、
毎日まーくんの夢が見られるように
『夢見用』が一枚……、

 そして、いつでも取り出せるように、
ベッドの下にある秘蔵のアルバムには
『えっち用』が一枚……、


 ………………。

 …………。

 ……。


 ……冗談です。(ポッ☆)

 ――はい?
 冗談にしては真実味がありすぎる?

 ホントに冗談なんです……信じてください。
 わたしがそんなはしたない真似するわけないじゃないですか。

 だいたい、わたしの初めてはすべからくまーくんって決めているんです。

 いくら身体が火照って仕方ない夜があるからと言って、
自分でそんな事したりしません。

 まったく、琴音さんじゃあるまいし……、(爆)


 ………………。

 …………。

 ……。


 ……なんか、話が思い切り逸れちゃいましたね。(汗)

 えっと……、
 何のお話をしていたんでしたっけ?

 ……そうそう。
 今、わたしは一刻も早く眠らなければならないんでした。

 ――ああっ!!
 いつの間にか、目覚し時計は午前三時を差しています。

 わたしったら、一時間も写真を眺めていたんですね。

 ……いけません
 こんな時に、まーくんの写真を眺めていたりしたら、また私の手が悪い子に……、

 いえいえいえいえ……、
 『また』だなんて……決して、そんな事はしませんよ。(汗)

 と、とにかく……、
 明日、寝坊してしまわない為にも、早く寝なければいけないんですっ!
 そんな事を考えている場合じゃないんですっ!

 でも、相変わらず、わたしの目は冴え渡っていて……、
 眠気が襲ってくる気配は一向に無くて……、

 これじゃあ、どんなに頑張っても(?)眠れそうにありませんね。

「……さて、どうしたものでしょう?」

 と、天井に貼られているまーくんの特大写
真(第48話参照)を見上げつつ、
わたしは良い方法を考えます。

 そして、わたしは名案を思いつきました。

「そうですね……これなら上手くいくかもしれません」

 と、早速、わたしはその方法を試してみる事にします。

 まずは目を閉じて……、
 次に、気持ちを落ち着けてから、自分がお花畑にいるところを想像します。

 ……そして、数を数えるんです。

 普通、こういう時は羊さんの数を数えるのでしょうが、
わたしの場合はちょっと違います。

 ――さあ、それでは始めましょう♪
















まーくんが一人……、

まーくんが二人……、

まーくんが三人……、

まーくんが四人……、












ああ……、
まーくんがいっぱい……、









































 こうして――

 見事、わたしは幸せ絶頂状態のまま眠りにつくことができたのですが、
翌朝、すっかり寝坊してしまいました。

 別に寝不足だったわけじゃないんです。
 ただ、あんまりステキな夢だったものですから……、(ポッ☆)

 ――え?
 どんな夢を見ていたのか、ですか?

 それは……秘密です♪








<おわり>
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