Heart to Heart

    
第112話 「お正月の遊び パートV」







「……で、次は何をやるんだ?」

 手鏡に映った自分の顔――

 その頬や額や首筋につけられた沢山のキスマークを眺めてゲンナリしつつ、
俺は次に何をするつもりなのかをさくら達に訊ねた。

 だが、そこには……、

「はふぅ……まーくんの……」(ポッ☆)

「うにゃあ〜ん♪」(ポッ☆)

「ああ……誠さん……」(ポッ☆)

「誠様の……誠様の……誠様の……」(ポッ☆)

 俺がつけたキスマークを指先で触れて、ウットリしている四人の姿。
 特に、フランなんか今にも失神しちまいそうだ。

 俺の言葉なんざ耳に入ってねえな。
 まあ、喜んでくれているわけだから、別に良いんだけどさ。

 あ、ちなみに、はるかさん達は羽根突き大会が終わったら、サッサと帰っていったぞ。
 当然、しっかりと俺にキスマークをつけて、な。

 まったく、わざと負けるのが大変だったぜ。
 なにせ、俺が勝ったりしたら、
俺があの二人にキスマークなんぞつけにゃならなくなるからな。

 みんなの前で、そんな危険なマネするくらいなら、
わざと負けてつけられた方が、遥かにマシってもんだ。

 まあ、それはともかく……、

「しかし……コイツら、いつまで惚けてるつもりだ?」

 御節料理の残りをつつきながら、しばらく待っていたのだが、
四人は一向に帰ってくる気配が無い。

 ……仕方ない。
 いつまでもこうしているわけにはいかないし……、

「……ウオッホンッ!!」

「「「「――っ!!」」」」

 俺がわざと大きく咳き込みをして、
ようやく四人はコッチの世界に帰って来る。

「あ、あら……?」

「あら? じゃない……ったく、いつまでもボケ〜ッとしてやがって……」

「も、申し訳ありません、誠様」

 と、俺がやれやれと肩を竦めると、真っ先にフランが頭を下げる。
 それに続いて、さくら達も……、

 別に、そこまで謝ることも無いんだけどな……、

「で、次は何をやるんだ?」

 サッサと話を進める為、俺は冒頭のセリフをもう一度繰り返す。

 出来ることなら、もうこれで終わって欲しいところだけど、
今日という日はまだまだ長い。

 それに、コイツらのことだから、まだ何かネタを用意しているはずだ。

 そして、予想通り……、

「次はですね……
『まーくん凧上げ』です♪」

 ……さくらによって、次の遊びが提示された。

「……まーくん凧上げ?」

 この単語に、俺は首を傾げながら、ありったけの想像力を働かせてみる。

 『まーくん凧上げ』――

 その単語から俺が連想した光景は、忍者ハット〇くんよろしく、
デカイ凧に張り付けにされて、真冬の寒空の中を舞う自分の姿だった。

「おい、まさか……」

「安心してください。そんな危険な事はしませんから」

 俺が危惧するところを読み取ったのだろう。
 俺が訊ねるよりも早く、さくらが念を押してきた。

「そうか……ならいい。
じゃあ、一体、どんな凧を上げるんだ?」


「――コレだよ♪」


 
どんっ!!


「ぬおっ!?」


 俺が訊ねると同時に、何処からともなくあかねが取り出したのは、
俺の身長程もある正方形の巨大な凧。

 とても手作りと思えない見事な作りだ。
 きっとその道五十年の職人も、その見事さに唸るに違いない。

 素人目にもそれがわかるくらい、
その凧の作りは素晴らしいものだった。

 どんな強い風にも負けないであろうしっかりとした骨組み――
 こうしてリビングに置かれているだけでも伝わってくる圧倒的な迫力――

 この巨大な凧が正月の澄んだ青空を舞う姿は、
それはそれは雄大なものであろう。

 ただ、一つ問題なのは……、

「……………………そうきたか」

 その巨大な凧の絵柄を見た瞬間、俺はマジで現実逃避したくなった。

 多分、もうこれ以上、説明する必要は無いだろう。
 もう、だいたいオチの予想はついていると思う。

 だが、まあ……一応、言っておこう。

 さくら達が用意した巨大凧。
 なんと、それに描かれていたのは……、








 
……俺の顔だった。








 ……想像してみてくれ。

 雲一つ無い真冬の大空に漂う巨大な凧。
 その凧に描かれているのは、優しく微笑む俺の顔。

 ……イヤだ。
 イヤすぎる。

 そんなことされた日にちゃ、
俺はもう恥ずかしくて堂々と外を歩けなくなっちまうぜ。


「これをお庭で空に上げるんだよ♪」


「エリアさんの風の魔法を使えばバッチリです♪」


「こ、これが……空を飛ぶんですか?」


「……それでは、早速♪」


 ……でも、みんなはノリノリだし。(泣)

 巨大な『まーくん凧』を抱えて、楽しそうに庭へと出ていくさくら達。
 そんなさくら達を追うように、俺は必死で手を伸ばした。

 無駄なことはわかっている。
 もう、止める事は不可能なことくらい、わかっている。

 でも、俺はそう叫ばずにはいられなかった。








「やーめーてーくーれぇぇぇーーーっ!!」








<おわり>
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