Heart to Heart

     
第79話 「似合いますか?」







「まーくん♪ はい、あ〜んして♪」


「あ〜ん」





 土曜日の昼――

 俺達四人は、屋上で弁当を食べていた。

 そう、三人ではない……四人だ。





「まーくん♪ はい、あ〜ん♪」


「あ〜ん」





 何故かと言うと、どういうわけか、学校にエリアまで来ているのである。
 しかも、ウチの学校の制服を着て。

 うむ……いつも私服姿しか見てないから、制服姿ってのは新鮮でいいなぁ。(爆)

 って、そうじゃなくて……、





「ま、誠さん……あ、あ〜ん♪」(ポッ☆)


「お、おう……
あ〜ん…………って、ちょっと待ていっ!」

 恥ずかしそうに箸で卵焼きを差し出すエリアのあまりの可愛さに、
誘われるように口を開けた俺は、慌てて我に返り、エリアを制止する。

「そ、そんな……私の作ったお弁当は食べてくれないんですか?」

「いや……そうじゃなくてだな……」

 よよよとちょっと芝居掛かった仕草で泣き崩れるエリアに、
俺は困ったように頭を掻く。

「あのさ、エリア……何で、お前が学校にいるんだ?」

 そう訊ねる俺に、エリアはキョトンとした顔で……、

「もちろん、誠さん達に会う為に決まってるじゃないですか」

 と、のたもうた。

「家で待ってれば良かっただろが」

「待ってましたよ。今日は学校は午前中で終わりですから、
昼食を作ってあげようと思って、早めに仕事を切り上げて来たんです」

 俺の言葉に、ちょっと拗ねるエリア。





 今のところ、エリアは基本的に向こうの世界で生活を送っている。
 エリアにはガディムに滅ぼされた故郷の復興させるという大事な仕事があるからだ。

 でも、週末……だいたい土曜の夕方には、必ずこちらに帰ってくる。
 で、日曜の夜まではこちらで過ごし、月曜になると、再びあちらの世界へ行く。

 例外ももちろんあるけど、概ねこういう生活を送っている。
 まあ、なんだ……いわゆる
通い妻ってやつだな。(笑)

 で、今日も夕方くらいに帰ってくるのだろうと思い、
俺達はさくらとあかねが作ってくれた弁当を学校で食べていたわけなのだが……、

 どうやら、エリアが言うには、タイミングが行き違っちまったみたいだな。





「それで、昼食を作りながら待ってたのに、全然帰ってこないものですから、
作ったおかずをお弁当箱に詰めて、シュインで飛んできたんですよ」

「あのなぁ……むやみやたらに魔法を使うなよ」

 と、エリアの言葉にタメ息をつく俺。

 ったく、メシ食ってる時に、
いきなり目の前に現れたもんだから、マジで驚いたんだぞ。

 今日が土曜日で助かったよな。
 もし、平日だったら、屋上は他の生徒でいっばいだっただろうから、
いきなり出現したエリアを誤魔化すのに苦労するところだったぜ。

「すみません……以後は気をつけます」

 俺に注意されて、シュンと肩を落とすエリア。
 そんなエリアに、俺はやれやれと肩を竦める。

 まあ、今回は俺達に会う為に急いでやって来てくれたんだ。
 これ以上言うのは、かわいそうだよな。

「わかったわかった。それに関してはもういいよ。
で、もう一つ訊きたいことがあるんだけどな……」

「何ですか?」

「その制服、どうしたんだ?」

 と、エリアが着る制服を指差す俺。

「ああ、それはね……」

 俺の疑問には、さくらとあかねが答えてくれた。

「エリアちゃんも学校に来たいだろうなって思ったから……」

「芹香さんに頼んで、古着を譲ってもらったんです」


「なにっ!?」


 二人の言葉に、俺はエリアの制服をマジマジと見つめる。

 ……芹香さんの古着。
 ってことは、この制服、以前は芹香さんが着てたのか?

 むう……言われてみれば、どこか高貴な雰囲気が……、
 しかも、エリアが持つエキゾチックな魅力がそれに合わさって何とも……、

「まーくん……」

「……何か、目つきがえっちだよ」

「う゛っ……」

 ジト目で俺を見るさくらとあかねの指摘に、俺は言葉に詰まる。
 そして、慌ててコホンと咳き払い。

「いや、まあ、何だ……あんまり似合ってたから、つい、な」

「ホントですか♪」

 俺の言葉が嬉しかったのだろう。
 エリアは立ち上がり、俺の前でクルリと回って見せる。

「ああ……凄く似合ってる」

 可愛いぞ、って続けようとして、慌てて言葉を呑み込んだ。
 いくらなんでも、それを言うのはちょっち恥ずかしいからな。

「うふふ♪ 良かった」

「良かったね、エリアさん」

「わたし達も手に入れた甲斐がありました」

 俺に誉められ、上機嫌のエリア。
 さくらとあかねも、まるで我が事の様に微笑んでいる。

 うう……純粋に喜んでるよ。
 その場を誤魔化す為に言った俺の言葉に……、

 ちょっと罪悪感にかられる俺。
 そして、そんな純粋なエリアに邪念を抱いてしまった自分に対す嫌悪感。

 ごめんな、エリア。
 でも、信じてくれ。

 今、言ったことは俺の本心だったんだ。
 本気で似合ってるって思ったんだ。

「……エリア」

「はい、何ですか?」

「……本当に、似合ってる……可愛いよ」(ボソッ)

「あ……」(ポッ☆)

 俺の呟きに、エリアは頬を赤く染める。

 俺は、もう一度言った。
 かなり恥ずかしかったが、もう一度言った。

 今度は誤魔化しなんかじゃなくて、俺の心からの言葉で……、

「誠さん……嬉しい☆」

 そっと、俺の肩に頭を預けてくるエリア。
 俺はそんなエリアの肩を抱こうと腕を……、





 ……伸ばしかけたが、拗ねたさくらとあかねが
羨ましそうな視線をこっちに向けていたので止めた。

「ほ、ほらっ! まだメシ残ってんだから、とっとと食べて遊びに行こうぜっ!」

 と、エリアから離れて、照れ隠しにそっぽを向く俺。
 そんな俺を見て、三人はクスッと微笑む。

「そうですね。早く食べてしまいましょう」

「じゃあ、確か次はエリアさんの番からだったよね」

「はい。そうですよ」

 あかねの言葉に頷き、エリアは再び卵焼きを箸で摘む。
 そして……、








「誠さん……はい、あ〜ん♪」








<おわり>
<戻る>