Heart to Heart

  
   第101話 「もう猫そのもの」







「うみゃあ♪ うにゅ♪ ふみゅ〜〜〜ん♪」

「ほ〜れほれほれ♪ いーこいーこ♪」





 夏休みも終わりに近付いてきたある日のこと――

 俺とさくらとあかねの三人は、
インテリモードのあかねの指導の下、勉強に勤しんでいた。

 一応、言っておくが、今更になって、
慌てて夏休みの宿題なんぞやってるわけじゃねーぞ。

 夏休みが終わると、新学期の最初に実力テストんてモンがあるだろ?
 今日はその為の勉強会なわけだ。

 と言っても、この三人の中で勉強が必要なのは俺くらいなんだけどな。

 なにせ、あかねの学年トップの地位は不動のものだし、
さくらだって、いつも20位前後をキープしている。

 ようするに、さくらとあかねは、
イマイチ成績のバッとしない俺の為に付き合ってくれているわけだ。

 ……ったく、我ながら何とも情けない話だぜ。

 で、その勉強会は午前中ずっと続き……、





「にゃあああ〜〜〜ん♪ ごろごろごろごろ……♪」





 勉強会が終わった今、あかねの猫さんモードが発動中なわけだ。

 あかね猫は、ソファーに座った俺の膝の上半身をのっけて、
幸せそうにゴロゴロと喉を鳴らしている。

 そんなあかね猫の頭や背中を、優しく優しく撫でる俺。

「ふみゅ〜〜〜〜ん♪」

 俺に撫でられるのが余程気持ち良いのだろう。
 あかね猫は、目を細めて甘い声を上げる。

 それにしても、ホント、あかね猫って……可愛い♪

 もちろん、普段のあかねも負けないくらい可愛いけど、
なんつーか、また違った趣みたいなもんがあるんだよな。

 まあ、多分、俺自身、猫好きっていうのも一つの理由になるんだろうけど……、

 ちなみに、今、俺は猫好きって言ったけど、
だからと言って猫を飼うつもりはない。

 別に世話が面倒クサイとかそういうのじゃなくて……、

 もし、俺が猫を飼って、そいつを可愛がってたら、
と〜ってもヤキモチを妬く奴が、目の前にいるからな。

「うにゅうにゅうにゅ〜〜〜ん♪」

 それに、このデカイ猫の面倒を見るだけで手一杯だし……な。

 と、俺は一人でそんな事を考えつつ、
あかね猫の顎の下をこちょこちょとくすぐってやる。

「ごろごろごろごろ……♪」

 いっぱいかまってもらってご満悦という表情で、
あかね猫はふりふり、ひょこひょこと尻尾と耳を揺らす。

「…………」

 そういえば、この猫耳猫尻尾って、
あかねが猫さんモードになると、いつの間にかくっついてるよな。

 と、目の前で揺れるその尻尾を、まじまじと凝視する俺。

 この猫耳猫尻尾、元々はあかね特製のコスプレグッズだ。

 材質は、市販(?)されてるのと同じ布やら綿やらで、
手作りにしてはかなり出来が良いのだが、とにかく作り物である事に変わりは無い。

 ……のだが、





「うみゃあああ〜〜〜ん♪」


 
ふりふりふりふり♪


 
ひょこひょこひょこひょこ♪





 
……何で動くんだ?

 そう……実はこの猫耳猫尻尾、
作り物の筈なのに、あかね猫の感情に合わせてちゃんと動くのだ。

 嬉しい時は、今みたいに尻尾が揺れるし……、
 哀しい時は、ペタンと耳が伏せられるし……、

 ……一体、どういう構造になってるんだ?

 と、首を傾げつつ、俺はそっと尻尾に触れてみる。

 すると……、


 
さわさわ――


「うみゃん♪」

 突然、あかね猫の体がピクンッと反応した。

 な、何だ……今の反応は?
 まるで、俺が尻尾を触ったから……?

{……ま、まさかな」

 と、口では否定しつつも、確認の為、もう一度尻尾に触れる俺。
 しかも、今度は軽く握って、さわさわと擦ってみた。


 
さわさわさわさわ――


「うにゃにゃっ! うにゃあああ〜〜〜ん♪」

 明かに、さっきよりもハッキリと反応を示すあかね猫。

「じゃ、じゃあ、もしかして、こっちも……」

 今度は猫耳を触ってみる。


 
ふにふにふにふに――


「はにゃあああ〜〜〜ん♪」

 手をキュッと握って、本当に心地良さそうに鳴き声を上げるあかね猫。

 ……間違いない。
 この猫耳猫尻尾には……、


「感覚があるんかいっ!?」


「うにゃっ♪」


 俺の言葉に返事でもするかのように、
あかね猫はシュタッと片手を上げる。








 ……あ、あなどれんな、猫さんモード。








<おわり>
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