Ｈｅａｒｔ　ｔｏ　Ｈｅａｒｔ

　　　　第７２話　「この想いを伝えたい」

　気が付けば、あなたを見ていました。

　いつの間にか、あなたを意識するようになっていました。

　あなたの息遣い――
　あなたの声――
　あなたのぬくもり――
　あなたの笑顔――

　――そして、あなたの優しさ。

　それらが、私の心の中を埋め尽くしていきました。








　――最低な人。

　それが、あなたに最初に抱いた想い。

　ずぼらで――
　いい加減で――
　無責任で――
　優柔不断で――

　そんな人だと思っていました。

　でも、それは間違っていました。
　全て、私の誤解でした。

　あなたは、とても一生懸命な人。
　自分の事をそっちのけで、他人のことに一生懸命になってしまう人。

　そして、誰よりも、大切な人の幸せを願う人。
　その為に、自分の幸せを捨ててしまえる人。

　優しくて……、
　優しすぎて……、

　その優しさの為に、時には傷付いてしまう……、
　そして、それを誰にも悟られまいとする……、

　そんな、涙が出てしまうくらいに優しくて、心の強い人。

　おだやかで……、
　ゆるやかで……、
　あたたかくて……、

　でも、どこか切なくて……、

　まるで、草原を過ぎ行く春の風のような……、

　あなたは、そんな人でした。








　ああ……そうです。

　その事に気付いてからです。

　私があなたの姿を目で追うようになったのは……、

　そして、あなたと目が合うだけで、
恥ずかしくて目を逸らしてしまうようになったのは……、

　何なのでしょう？
　この想いは、何なのでしょう？

　あなたに見つめられるだけで、胸が高鳴って……、
　あなたの声を聞くだけで、体が熱くなって……、
　あなたの笑顔を見ているだけで、私も嬉しくなって……、

　私の全てが、あなたで満たされていく。

　……そんな気持ち。





　最初は、分かりませんでした。
　そんな自分の変化に、戸惑っていました。





　でも、今は分かります。
　この想いが、何なのかハッキリと分かります。

　でも、この想いは許されぬ想い。
　決して、かなわぬ思い。

　何故なら、あなたには、大切な人がいるのですから。
　そして、あなたは大切な人の気持ちを裏切るような人ではないのですから。

　でも、あなたがそんな人だからこそ、私は……、
















　誠さん……、








　私は、あなたに伝えたい。








　例え、叶わぬ想いでも……、








　私の気持ちを、あなたに知ってもらいたい。
















　誠さん……、

　私は、あなたを……、








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