Heart to Heart

     
第66話 「ここ一番の大勝負」







「今日の昼メシはカレーだっ!」

 土曜日の放課後――

 昼食はどうしようか、と訊ねてきたさくらとあかねにそう宣言すると、
エリアを伴い、四人で近くのカレー専門店に向かった。

「そういえば、まーくんって、月に一度は必ずここに来るよね?」

 席に座り、それそれ注文を終えた後、あかねが俺に訊ねる。

「もしかして、沢山食べるとタダになるからですか?」

 と、これはさくら。

 さくらが言っているのは、1300グラムの超大盛りカレーのことだ。
 このチェーン店では、制限時間内にそれを完食するとタダになるという企画がある。

 もちろん、過去、俺はそれ挑戦し、軽くクリアした経験がある。

 しかし、今回はそれが目的じゃない。
 ってゆーか、もう、俺はそれに挑戦することは出来ない。

 何故なら……、

「……俺、ブラックリストに載ってるから、もうそれはできねーんだよ」

 ……そう。
 俺の顔と名前は、もう店の人間に知れ渡ってしまっているのだ。
 しかも、どうやら、全国のチェーン店全てに。

「では、どうしてわざわざこの店に来たんですか?
カレーくらい、言ってくだされば私が作りましたよ」

 と、口を尖らせるエリア。

「……エリア、何を拗ねてんだ?」

「私の料理……気に入りませんか?」

「ンなわけねーだろ。
ここに来たのはな、それなりの理由があるんだよ」

「……と、言いますと?」

「あれ、見てみろ」

 訊ねるさくらに、俺は後ろの壁に貼られている数多くの写真を指差した。

 このチェーン店では、
1300グラムを制覇した客の写真を飾るという決まりがある。
 壁に貼られている写真がそれだ。
 当然、俺の写真も貼られている。

「あ、まーくんの写真があるよっ!」

「帰りに貰っていきましょうか?」

「おいおい……ンなことはいいから、あれを見ろ」

 と、俺は貼られた写真の中で、ひと回り大きい物を示した。

 その写真には、長い黒髪の女子高生の姿が写っている
 そして、その上に、サインペンで……、


 
『川名 みさき』 18歳っ!
 
3000グラム完食っ!!


 と、デカデカと書かれていた。

「まーくん、まさか……」

 それを見て、俺の考えを察したさくらの顔が引きつる。
 あかねとエリアも同様だ。

「ああ、そのまさかだ」

 俺が三人に頷くと同時に、
ちょうど良いタイミングで、注文したものがテーブルに並べられた。

 さくらは、200グラムのポークカレー。
 あかねは、お子様セット(笑)
 エリアも、さくらと同じ物。

 そして、俺は……、

「お待たせしました。ポークカツカレー3500グラムです」


 
どどんっ!!


 俺の目の前に、それこそ山の様なカレーが置かれる。


 
ザワッ……


 それを見て、一部の客がざわめく。
 しかし、中には、こちらを興味津々で見ている奴もいる。

 どうやら、写真のみさきって人と俺との闘いは、
この店の名物と化しているようだ。

 ちなみに、毎月、こういうことをやってるもんたから、
この店の店員は皆、慣れたもの。
 俺の注文を持って来た時も、顔色一つ変えない。

 頑張って、と、応援してくれるくらいだ。

 先月なんか、店長自ら持ってきてくれた。
 まあ、売上に大いに貢献してるからなぁ。

 っと、それはともかく、サッサと食べないと冷めちまうな。

「さてと、それでは……」

 俺は、ゆっくりとスプーンを手に取った。

「いっただっきまーすっ!」
















 で、その結果だが……、

 店の壁に、俺の新しい写真が追加されたことは、言うまでもないだろう。

 さあ、川名 みさきっ!!
 この記録、越えられるものなら越えてみやがれっ!!








<おわり>
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