Heart to Heart

    
 第47話 「ダブルなでなで」







 放課後――

 自販機で買ったコーヒー牛乳をちゅーちゅーやりながら、
廊下を歩いていると……、


「とおりゃあああーーっ!!」


 と、威勢の良いマルチの声が聞こえてきた。

「ようっ! 今日も頑張ってるな、マルチ!」

 一生懸命廊下のモップ掛けをするマルチに、俺は呼びかける。
 すると、俺に気付いたマルチは、掃除の手を止めて……、

「あっ! 誠さん! はいっ! 今日も頑張ってます!」

 と、素晴らしい笑顔を見せてくれた。

「……また掃除を押し付けられたのか?」

 俺は周りを見回しながらそう言った。
 あたりに、マルチの他に掃除をしている生徒の姿は何処にも無い。

「あのな、マルチ……自分達の学校を掃除するのも、
立派な学校教育の一つなんだ。
だから、ちゃんとクラスの奴らにやらせなきゃダメだぞ」

「はあ……ですが、みなさん急用があるとのことでしたので……」

 と、屈託の無い笑みを見せるマルチ。

 ったく、マルチはいい子過ぎるぜ。
 もう少し、要領が良くてもいいのによ。
 まあ、それがマルチらしいと言えばらしいんだけど。

 それにしても、こいつのクラスの奴らは、こんな良い笑顔を見せる奴に、
何で自分達の仕事を押し付ける様な真似ができるんだろうな?

「……マルチ」

「はい? …………あ」


 
なでなでなでなで……


「……ゴメンな」

「は? どうして、誠さんが謝るんですか?」

 キョトンとした顔で、マルチは俺を見上げる。
 俺の謝罪の意味を分かっていない様だ。

 ……ま、それならそれでいいか。
 マルチが知るようなことじゃねーのかもな。


 
なでなでなでなで……


 マルチの頭を撫で続ける俺。
 と、そこへ……、

「おっ! マルチ! それに、誠もいるのか?」

 カフェオレをちゅーちゅーやりながら、浩之がやってきた。

「良かったなー、マルチ。
誠になでなでしてもらってるのか?」

 俺はマルチを撫でる手を止めて、浩之に向き直る。

「ああ……マルチの奴、またクラスの奴らに掃除を押しつけられてんだよ」

「…………そうか」

 俺の言葉を聞き、浩之はマルチの頭の上に手をのせる。
 そして……、

「サンキュ、な……マルチ」


 
なでなでなでなで……


「あ……は、はい(ポッ☆)」

 浩之に頭を撫でられ、マルチは嬉しいそうに頬を赤らめる。

 …………そうか。
 『ゴメン』じゃなくて、『ありがとう』って言えば良かったのか。

 なるほどな……さすがは浩之だぜ。
 やっぱ、コイツにゃかなわねーや。

 俺は軽く肩を竦めると、再びマルチの頭を撫でる。

「俺からも……ありがとな、マルチ」


 
なでなでなでなで……


「は、はわわっ!! そ、そんな! 誠さんまでっ!!」

 何故か、妙に切羽詰ったような声を上げるマルチ。

 ……何か、いつも以上に興奮してねーか?

 と、思いつつも、俺と浩之はなでなでを止めない。


 
なでなでなでなで……

 
なでなでなでなで……

 
なでなでなでなで……

 
なでなでなでなで……


「はわわっ! はわわわっ!
はわわわわわぁぁーーっ!!」



 
んぱしゅーーーーーっ!!


「「あ゛っ!?」」








 そして、俺と浩之は知った。

 自分達のなでなでが、メイドロボに対して、
絶大な破壊力を持つということを……、








<おわり>
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