Heart to Heart

   
 第45話 「放課後の怪」







「こくど〜ぞいのがいろじゅにむ〜か〜ぁ〜って〜♪
おおきく〜♪ せ〜のび、し・て・み〜よお〜♪」



「いまはま〜だ、ちいさなわた〜し〜だ〜けど〜♪
い〜つか〜、き〜っと〜♪ ため〜い・き・を・こ〜えて〜♪」



 放課後――

 竹ボウキ片手に中庭を掃除をしていると、
渡り廊下の方からさくらとあかねの歌声が聞こえてきた。

 ……相変わらず、マニアックな歌だし。

 と、俺が肩を竦めていると……、

「あっ! まーく〜〜〜んっ!」

 あかねが俺に気付いたようだ。
 手を振りながらこっちに駆けて来る。
 そして、それを追ってさくらもこっちに来る。

 ったく、俺に会えたくらいでそんなに嬉しそうな顔するなよな。
 ……こっちまで嬉しくなるじゃねーか。

「まーくん、今日は掃除当番なの?」

「ああ……ま、もうすぐ終わるけどな」

「手伝いましょうか?」

「いいって。すぐに終わるって言っただろ。先に帰ってていいからさ」

「すぐに終わるなら待ってます」

「まーくん、一緒に帰ろ」

 と、にっこりと微笑んで、ベンチに腰掛ける二人。

 ……ったく、こいつらは。

「……わかったわかった。
じゃあ、ちょっとだけ待ってろよ。チャッチャッと終わらせるから」

 俺は苦笑しつつ、竹ボウキを動かす手を速めた。








「……ねえ、まーくん」

「あ?」

 掃除を続けていると、あかねが話し掛けてきた。
 俺は掃除の手を休めず、返事をする。

「そのホウキで、お空飛べたらステキだよね☆」

 と、俺の持つ竹ボウキを見るあかね。

「おいおい……そりゃまた突飛な話しだな」

「でも、もし飛べるなら、とってもステキだと思いますけど」

 にこにこと微笑みながら、さくらも話にのってくる。

「そりゃまあ、確かにそうだけど……魔法でも無い限り無理ってもんだぞ」

 ………ん?
 魔法?

 そこまで言って、俺の脳裏に何かが引っ掛かる。
 魔法と言って、浮かんできたのは、一人の先輩の顔。

 ……はは、まさかな。

「もしかしたら、芹香さんなら、飛べるかもしれませんね」

 と、さくらが冗談っぽく言う。
 どうやら、俺の同じ事を考えたみたいだな。

「ははは、いくら芹香さんでもそこまでは……」

「そうですよねぇ……」

「無理だよねぇ……」

 と、俺達が笑っていると……、





 
ふよふよふよふよ……





「…………」


「…………」


「…………」





 何かが……、





 俺達の後ろを……、





 ……横切っていった。








 ……………………マジか?








<おわり>
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