Heart to Heart

    
 第43話 「うふふふ……」







 
しゃ〜〜こ〜〜……
 
しゃ〜〜こ〜〜……





 ――キッチンから聞こえてくる何かを擦る乾いた音。





 
……キラーンッ☆





 ――濡れて妖しく輝く鋭い光。

 そして……、





「うふふふふふふふ……♪」





 それを見て不気味に微笑む少女。








 …………って、








「怖いんだよ、お前はっ!」


 
ぺしっ!


「きゃっ!」

 俺は後ろからさくらにツッコミを入れた。

 ったく、何を妖しいことやってんだ、コイツは。

「もう……まーくん、包丁を研いでる時に、
そんなことしたら危ないじゃないですか」

 と、さくらは俺を非難する目で見る。

「包丁を研ぐのは別にいいんだけどな。やり方が妖しすぎるんだよ」

「だからって、後ろから叩かないでください。
もし、指を切っちゃったらどうするんですか?」

「その時は、俺が傷を舐めてやるよ」

「…………」

 その俺の言葉に、さくらは難しい顔をして
自分の指と包丁を交互に見つめる。

 そして、意を決したように、ゆっくりと刃を指に近付けて……、


「だからって、わざとやらない!」


 
ぺしっ!


「あんっ!」

 再びツッコむ俺。

「まーくん……ちょっと痛いです」

「ったりめーだ。痛いようにしたんだからな。
とにかく、包丁研ぐなら普通に研げ、普通に」

「……は
〜い」

 さくらはちょっと拗ねたようにそう返事をすると、
包丁研ぎを再開する。





 
しゃ〜〜こ〜〜……
 
しゃ〜〜こ〜〜……





 
しゃ〜〜こ〜〜……
 
しゃ〜〜こ〜〜……





 
……キラーンッ☆





「うふふふふふふふ……♪」








 だから、そこで微笑むなって言ってるんだよ、俺は。

 やっぱ、どこか普通じゃねーよな、コイツ。








<おわり>
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