Heart to Heart

      
 第42話 「未成年の主張」







 とある休日――

 俺は昼メシのカップラーメンを食いながら、
『学校へ行こう!』というTV番組を見ていた。

 その番組中に『未成年の主張』という人気コーナーがある。

 中学生が校舎の屋上に登って、
全校生徒の前で何か訴えたいことを絶叫するってやつだ。

「そういえば……」








 そして、俺は思い出す。
 中学生だった、あの時のことを……。








 あれは晴れた日曜日だった。

 『学校へ行こう!』の人気コーナー『未成年の主張』を
俺達の学校で収録するという話を聞き、俺は制服を着て学校に向かった。

 少し遅刻してしまい、校庭にはすでに全校生徒が集まり、
番組の収録は始まっていた。

 俺は生徒達の中に入りつつ、さくらとあかねの姿を探した。
 しかし、何処にも見当たらない。

 仕方なく、俺は一人で見物することにした。

 ――くだらない主張。
 ――なかなか笑える主張。
 ――そして、お約束の告白ネタ。

 生徒達が次々と主張を終えていく。

 何事も無く、番組収録は続いた。

 そして、最後の生徒の順番となった。

 番組スタッフが、最後の生徒の紹介をする。

「最後の主張は、3年C組の園村 さくらちゃんと河合 あかねちゃんの主張です。
テーマは『魂の叫び』です」

 何っ!? さくらとあかねがやるのか?!
 あいつら、一体何を叫ぶ気だっ!?

 俺は一抹の不安を覚えつつ、屋上を見上げる。

 全校生徒、そして全国放送のカメラが注目する中、
さくらとあかねが屋上に姿を現した。

 そして、大きく息を吸い込むと……、
















 二人のその叫びに、全校生徒、教師一同、TV局スタッフ全員がフリーズした。

「……これって、確か全国放送…………勘弁してくれ」

 皆が呆気にとられている中、俺は一人頭を抱えたのだった……。








「……ふっ……まあ、今となってはあれも楽しい思い出、かな」

 テレビを見ながら、俺は苦笑する。

 と、その時、俺はある事に気が付いた。

 あれ? そういえば、この番組ってこんな早い時間に放送してたっけ?
 確か、この番組、ゴールデンタイムに放送してた筈だぞ。

 何となく気になった俺は、新聞のテレビ欄に目をはしらせる。

「……なんだ……再放送か」

 納得した俺は、新聞を放る。

 …………ん?
 …………再放送?

 おい、ちょっと待て……まさか……、

 俺はイヤな予感がして、再びテレビに目を向けた。

 ちょうど、『未成年の主張』のコーナーがやっていた。
 しかも、学校の名前は、俺達が通っていた中学。

 まさか……まさか……、

『最後の主張は、3年C組の園村 さくらちゃんと河合 あかねちゃんの主張です。
テーマは『魂の叫び』です』

 番組のそのナレーションを聞き、俺は床に突っ伏したのだった……。








 また、全国放送……もうやだ。








<おわり>
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