Heart to Heart

   
 第40話 「迷子の迷子の……」







「……ったく、あかねの奴、どこ行ったんだ?」

 駅前のデパートの中――

 俺は迷子になったあかねを探していた。

「まったく、高校生にもなって迷子になるかぁ?」

 と、俺は一人グチる。

 食料品売り場で買い物を終えたまでは良かった。

 偶然にも、1階吹き抜けの大ホールで、
アイドル声優『桜井 あさひ』のミニイベントがあり、
それを見に行った時も、三人一緒だった。

 だが、イベントを見終えて、さあ帰ろうかとデパートの正面出入り口を出た時、
あかねの姿が無いことに気が付いたのだ。

 桜井 あさひのミニイベントがあったせいだろう。
 今日はかなり混雑していた。
 多分、そのせいではぐれたに違いない。

 で、現在、さくらと手分けして、あかねを探して走り回っている、とういわけだ。

「……ちっ、どこにもいやしねぇ」

 本屋――
 ゲームショップ――
 ファンシーショップ――
 CDショップ――
 おもちゃ屋――
 アニメ専門店――
 アミューズメントパーク――
 子供服売り場(?)――
 屋上の遊園地――

 ……などなど、あかねが行きそうな場所は全て探したが、
あかねの姿はどこにもない。

 ったく、こんなことになるんだったら、
あかねの言う通り、手を繋いでいれば良かったぜ。

 最初、デパートに来た時、あかねが言ったのだ。

 ――迷子になっちゃうかもしれないから、まーくん、手繋いで行こ。

 ……と。

 その時、俺は恥ずかしいから断ったのだが……、
 くそっ……まさか、こんなことになるとはな。

 まあ、今更悔やんでもしょうがない。
 とにかく、少しでも早くあかねを見つけねぇと。

 しかし、探せど探せど、一向に見つからない。

「くそ……こうなりゃ、店内放送で呼び出してもらうか?」

 いい加減疲れてきた俺がそう呟くと……、


 
ぴんぽんぱんぽ〜〜〜〜ん……


 と、タイミング良く放送がかかった。

 ……俺より先に、さくらが店員に言ったのかな?

 と、俺は放送に耳を傾ける。
 だが、その放送の内容は、俺の予想とは遥かに違っていた。

「お客様のお呼び出しをお伝え致します。
……まーくん様、まーくん様。
あかねちゃんをお預かりしております。
至急、1階サービスカウンターまでおこしください」


 
ずるぺちっ!!


 俺はその場で思いっ切りコケた。。

 ……勘弁してくれよ。
 『まーくん様』って何だ?

 俺は全力で逃げ出したい衝動をグッと堪え、
1階へと降りるエスカレーターへと向かったのだった。








 ……放送係のねーちゃんも大変だよな。
 一瞬、躊躇してたもんな。








<おわり>
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