Heart to Heart

       
第35話 「以心伝心」







「いや〜、こういうの作るのも久しぶりだなぁ」

「そうだね〜。昔はよく二人で作ったよねぇ」

「改造とかも、よくやったよな」

「うんうん。ジオングにドムの足くっつけたりしたね」

「ザクを赤く塗ってツノつけるのは基本だよな」

「あたし、パーフェクトガンダム作ったことあるよ」

「俺はレッドウォーリアーかな。当然、フルスクラッチ」

「フルアーマーガンダムのキャノン砲を水鉄砲にしたり……」

「グフのヒートロッドを糸ハンダにしたこともあったな」

「そういえば、ポリキャップをいっぱい使ってたのがあったよね?
あれって、何て名前だっけ?」

「バイファムか? 確かに、あれは間接という間接にポリキャップ使ってたなぁ」

「なつかしいねー」

「なつかしいよなぁ」





 と、いきなり濃ゆい会話で始まったが、ようするにプラモデルの話だ。

 今、俺とあかねは、二人してプラモデルを作っている。

 学校の帰りに、今日発売のゲームソフトを買いに玩具屋へ寄った時、
偶然目に付いて、そのあまりの懐かしさに衝動買いしてしまったのだ。





「ねえ、まーくん。『それ』取って」

「ああ」

 作業に没頭しつつ、俺は手元にあった接着剤をあかねに渡した。

「ありがと」

「おう」


 
ペタペタペタ……


 あかねは接着剤を使って、パーツを付けていく。


 
パチンパチン……


 俺はペンチを使って、一つ一つパーツを切り取る。


 
パッチン……


 あ、いけね……。
 パーツ同士をつないでたやつがちょっち余っちまったよ。

「あかね、『あれ』どこやった?」

「これ? はい」

 あかねは説明書を食い入る様に見つめたまま、俺にヤスリを差し出す。

「さんきゅ」

「うん」


 
シャッシャッシャッ……


 あかねからヤスリを受け取り、例の余った部分を削る俺。

「ふふふふ……♪」

 と、俺達が作業を続けていると、
さくらの小さな含み笑いが聞こえてきた。

 見れば、さくらは編物をする手を止めて、俺達をジッと見てる。

「何だよ? いきなり笑ったりして。気味が悪いぞ」

「ふふふ……だって、二人とも……」

 そこまで言うと、さくらは再び笑い出す。

「何がおかしいの?」

 そんなさくらの様子にあかねが首を傾げる。

「だって、まーくんもあかねちゃんも、さっきから『それ』とか『あれ』とか
指示代名詞だけでお話してるんですもの」

「「あ……」」

 さくらに言われ、俺とあかねは顔を見合わせる。

 そういや……言われてみれば、確かにそうだな。

「以心伝心ってやつかな?」

「そうだね」

 そう言って、微笑み合う俺とあかね。


 
ぐぅ〜〜〜……


 と、そこでタイミング良く俺とあかねの腹が鳴った。

 やれやれ……こんな時まで一緒かよ。

「さくら、ちょっと腹減った。確か、『あれ』がまだ残ってたよな。
持って来てくれよ」

「はいはい。『あれ』ですね。ちょっと待っててくださいね」

 そう言って、さくらは立ち上がり、台所へと向かう。

 そして、しばらくして、
さくらは三人分のカステラとお茶をお盆にのせて戻ってきた。

「はい、どうぞ。『あれ』ですよ」

 と、さくらはお盆を俺達の前に置く。

 それを食べながら、俺はさくらに言ってやった。

「……さくら、お前だって人のこと笑えねーじゃねーか」

「ふふふ……そうですね」

「あははは♪ みんな同じだよ♪」

 そう言って微笑むさくらとあかねは、
何だかとても嬉しそうだった。








<おわり>
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