Heart to Heart

       
第33話 「ろーるぷれいんぐ」







「……よし。じゃあ、まず行動順から決めるぞ」

「サイコロを振って、出た目の多い人から時計回りだったよね?」

「あ、わたしは<戦術>技能を持ってますから、
それにプラス1できます」

「そうそう。じゃあ、サイコロを振るぞ……せーのっ!」

「(ころころ)……4だよ」

「(ころころ)ボーナスを足して、5です」

「俺は(ころころ)……3だな。じゃあ、さくら、あかね、俺の順番だ」

「それでは、わたしは呪文の集中に入ります」

「あたしは移動しながら大振りの攻撃! (ころころ)……命中したよ」

「それは(ころころ)……よし、『受け』たぞ。
次は俺の攻撃だ! 目の前のあかねに斧で全力攻撃!」

「えーっ! いきなりーっ!?」

「ったりめーだ! さくらの援護呪文が飛んでくる前に倒す!
というわけで、全力二回攻撃! 一撃目は(ころころ)……当たり!」

「(ころころ)それは『受け』たよ」

「お前、盾は持ってなかったよな?」

「うん。持ってない。だって、もってる武器が両手剣だし」

「じゃあ、あとは『よけ』だけだな。二撃目は……(ころころ)……げっ!!」

「……17、ですね」

「問答無用でファンブルだね♪」

「勘弁してくれよ……(ころころ)武器が非準備状態になっちまった」

「それでは、次のターンで、わたしからですね。
呪文発動は(ころころ)……成功しました。
あかねちゃん、<倍速>がかかりましたから、1ターンに二回行動できますよ」

「お、おい……それって……もしかして……」

「うん♪ まーくんはこのターンは攻撃できないから、
全力攻撃二回して、合計四回攻撃だよ♪」

「しかも、まーくんは前のターンに全力攻撃をしてますから、
受動防御しかできませんね」

「…………もういい。好きにしてくれ」

「サイコロ振るよー♪ (ころころ)……あ、クリティカル(笑)」

「うそだぁぁぁぁぁぁぁぁーーーっ!!」

「ふふふ……自動命中、防御無視ですねぇ」

「クリティカル効果は(ころころ)…………ダメージ三倍!(爆笑)」

「…………は、はははは(大汗)」

「ダメージは(ころころ)……12点。三倍して36点だね」

「えーっと、防護点を6点引いて30点。
斬り攻撃だから防護点を通った分を1.5倍して……ダメージ45点。
…………何だ、そのダメージ」

「気絶した?」

「気絶どころか、いきなり死亡判定二回だよ。
一回目は(ころころ)…………あう〜〜〜〜〜……(泣)」

 サイコロの出目を見て、俺はテーブルに突っ伏す。

 結局、久しぶりのテーブルトークRPG戦闘勝負は、
たったの2ターンで決着がついてしまったのだった。








「……くそー、完膚なきまでに負けちまったぜ」

 ソファーに腰を下ろし、お茶を啜りながらぼやく俺。

「まーくん、今回はサイコロの出目が悪すぎましたね」

「つーか、あかねのサイの目が良すぎるんだよ。
ふつー、あそこでいきなりクリティカル出すか?」

「それはやっぱり、まーくんの運が悪いんだよ♪」

「はいはい。そーですか」

 と、俺は肩を竦める。

 ふん……どうせ俺はサイコロ運が悪いですよ。
 これからはア○ディ・クルツとでも呼んでくれ。
 不幸の代名詞ス○ーク君でもいいぞ。

「ところでまーくん……約束、覚えてますか?」

 と、俺がちょっと拗ねていると、
突然、さくらがそう訊ねてきた。

「……約束?」

 あれ? 何か約束したっけか?
 …………ああ、そういえば確か……、

「勝負に勝ったら、何でも言うこと聞いてくれるって」

「ああ……そういや、そんな約束したっけな。
で、どんなお願いなんだ? 何でも言ってみ」

「あ、あのね……」

「……これ、なんですけど」

 と、二人はもじもじしつつ、三枚の紙を出した。

 それはテーブルトークRPG用のキャラシートだった。

 二枚は、先程さくらとあかねが使っていた二人の持ちキャラのシート。
 残りの一枚は、先程の勝負で使っていたのとは別の、
俺の本来の持ちキャラのシートだ。

「これが、とうかしたのか?」

 三枚のキャラシートを持って、訊ねる俺。

 すると、二人は恥ずかしそうに……、

「あのね……あたし達のキャラとまーくんのキャラを……(ボッ☆)」

「結婚させてあげてほしいんです(ポボッ☆)」

「はあ?」

 二人の突拍子も無い提案に、俺は眉をしかめる。

 キャラ同士を……結婚させる?
 ってことは……、

「ようするに……この三人のキャラを夫婦という設定にするってことか?」

「…………うん」(ポッ☆)

「ダメ……ですか?」

 と、二人は上目遣いで俺を見つめる。

 ったく、そんな目で見つめられたら、断れるわけねーだろが。

「ああ、別にいいぜ。そんなことでいいんならな」

 その俺の答えに、さくらとあかねの表情がパッと輝く。

「ホントッ!?」

「おうっ! 何の問題も無いぞ」

 俺がそう頷くと、さくらはポンッと手を叩く。
 そして……、


「じゃあ、早速、
結婚式の準備をしましょう♪

 と、のたもうた。

「…………はい?」

 一瞬、さくらの言葉の意味が理解できず、
俺は間の抜けた声を出してしまう。

 そんな俺を余所に、さくらとあかねは着々と準備を進めていく。

「ねえねえ、さくらちゃん。
式はやっぱり世界観に合わせて神殿で、だよね」

「そうですね。あ、あと、雰囲気を出す為に、
音楽と指輪も用意しましょう」

「ちょっ、ちょっと待て!
まさか、
それもロールプレイするのか?


♪」


 心底楽しそうに頷くさくらとあかね。

 ぐは……そういうことか。
 それが真の狙いだったわけか。

 ようするに、遠まわしに
結婚式ゴッコをやろうと言っているわけだ。

「さあ、まーくん♪ 準備が出来ましたよ」

「早く早く♪」

 すっかり準備を整えた二人が、俺を手招きしている。

「……ったく、しょーがねーなー」

 そんな嬉しそうな二人の姿に、俺は軽く苦笑すると……、

「やるからにはちゃんとやるからな」

 と、部屋に響き渡るウェディングソングの中、
花嫁役であるさくらとあかねのもとへと、ゆっくりと歩いていくのだった。








 ちなみに、初夜まではロールプレイしてないからな。(笑)








<おわり>
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