Heart to Heart

  
第31話 「俺の武器を知ってるかい?」







 俺は一つの決意をしていた。


 ――今日こそ、今まで分からなかった
『あの謎』を解いてみせるっ!


 その為に、俺はさくらとあかねを近くの公園に呼び出した。

「さくら、あかね……お前達にどうしても訊きたい事がある」

「ま、まーくん……」

「どうしたんですか? そんな、突然……」

 俺の真剣な表情にたじろぐ二人。

「いや、別に大した事じゃないんだが……」


 
――ゴクッ


 俺の次のセリフを待って、二人は息を呑む。

「お前ら……いつも、『あれ』をどうやって出してるんだ?」

「……ほえ?」

「……は?」

 俺の質問の意図が分からなかったのだろう。
二人はキョトンとした顔で首を傾げる。

「……いつも持ってるだろが」

 俺のこの言葉を聞いて、ようやく合点がいったようだ。
 二人は納得したように頷く。

「……
『コレ』のことですか?」

 と、さくらの手には
フライパン

 そう。
それだっ!

 コイツらは、いつでもどこでもどんな時でもコレを持っている。
 そして、どこからともなく取り出して、俺をどついたりするのだ。

 ずっと分からなかった。
 気になってしょうがなかった。
 二人が、コレをどうやって取り出しているのか。

「今日こそ、ちゃんと教えてくれ。
それは一体どこから出てくるんだ?」

「どこからって訊かれても……ねぇ?」

「うん……実はあたし達もよく分からないの」

 頷くあかねの手にも、すでに
クマさんバットが。

 やっぱり、分からん。
 注意して見ていたハズなのに、いつの間にか出現してるんだよな。

「自分で出しといて、分からないってことはないだろ」

「だって、事実そうなんだもん」

「すみません。わたし達も何て説明したらいいか分からないんです」

「そうか……」

 むう……せっかく謎が解けると思ったのに。
 結局、謎は謎のままってことか……。

 と、俺が半ば諦めかけた、その時……、

「そうだっ!」

 あかねがいきなり大きな声を上げた。

「な、何だ? どうした、あかね」

「まーくんもコレが出せるようになればいいんだよ。
そうすれば、あたし達の言ってる事も分かると思うよ」

「俺にも出せるのか、それ!?」

「うんっ! まーくんなら、きっと出来るよ」

「そっか。よし! じゃあ、早速、教えてくれ!」






 てなわけで、ひょんな事から、
俺の『ツッコミアイテム取りだし法』の特訓が始まった。






「まず、まーくんにこの能力を使う素質があるかどうか、ですけど……、
多分、まーくんなら問題無いと思います」

 特訓を始める前に、さくらが説明を始める。

 なんか、いつの間にか特殊技能みたいな扱いになってるな。
 ……っていうか、素質とかが必要な事なのか?

「その素質ってのは何なんだ?」

「素質と言いますか、条件ですね。
その条件を満たしていれば、おそらく誰でも使えます」

「条件って?」

ギャグキャラであることです」


 
ずるぺちっ!


 ……おい、コラ。
 ってことは何か?
 『まーくんなら問題無い』って事は、俺はギャグキャラってことかい。

 ……まあ、反論は出来ないけどな。(笑)

「わ、分かった。じゃあ、とりあえず何を取り出すか決めないとな」

「あ、その必要はありません」

「あ? 何で?」

「まーくんの道具はもう決まっているんです」

「……どういうことだ?」

「出てくる道具は、その人物に合った物しか出てこないんです」

 なるほど、納得できたぞ。
 だから、さくらもあかねも、いつもフライパンやクマさんバットなんだな。

「だったら、俺の道具は一体何なんだ?」

「さあ……それはやってみないと分かんないよ」

「そうか……じゃあ、その方ってのを、早く教えてくれ」






 これで講義は終わり。

 次はいよいよい実習だ。






「……まーくん、コツは今言ったとおりです。
やってみてください」

 さくらの言葉に、俺はコクンと頷く。

 さあ、ついに本番だぜ。

 なにがでるかな♪ なにがでるかな♪
 モップとか柱時計とかコショウだったらヤダな。

 俺はおもむろに懐に手を入れた。

「……てやっ!」

 短い気合とともに、手を抜く。

 すると、俺の手には……、

「げっ!?」

「まあ!」

「うわぁ〜!」

 俺は自分の手に握られている物を見て、かなりビビッた。

 ……何で
マシンガンなんだ?

「まーくん、凄いよっ!!」

 あかねが嬉しそうに俺に飛びついてくる。

 一体、何が凄いんだ?

 ……ま、まあ、確かにある意味すごいかもな。
 フライパンやクマさんバットよりも、遥かに非常識だもんな。

「こんな物騒なモン持ってたら、銃刀法違反で捕まっちまうよ」

「大丈夫ですよ。この能力で出した物に殺傷能力はありませんから」

「……そういう問題か?」

 まあ、細かいことは考えない事にしよう。

「それにしても、マシンガンが出てくるなんて、これは凄い事ですよ」

 さくらまでもが、俺を『凄い』と言う。

「マシンガンが出てくるってことは、
まーくんは、
あの『伝説のギャグキャラ』と同じって事になるんですから」

 ……あの『伝説のギャグキャラ』?


 
……どこからともなくマシンガンを取り出すギャクキャラ?


 俺が知ってるキャラで、そんなキャラっていったら……。
 あるな……ひとつだけ。

「……まさか……そうなのか……」

 俺の呟きに、さくらとあかねが頷く。

 そうか……そうなのか……。

 俺は自分の運命を受け入れる事にした。

 ……やるしかないんだよな、『アレ』を。

 力無く空を見上げ、降り注ぐ日の光に目を細める。

「……真昼の日差しが眩しいぜ。
太陽のせいで目が『いたいよう』……」


「…………」


「…………」





 
――ヒュウウウ〜〜〜〜……





 周囲を寒い空気が流れていく。

 よし……やるぞ。

 俺は覚悟を決めて、マシンガンを構えた。


「笑えーーーーっ!!」


 
ズガガガガガガカッ!!






 この能力は二度と使うまい、と堅く心に誓いつつ……、







「うおおおおーーーーっ!」







 俺は血の涙を流しながら、マシンガンを乱射するのだった……。








<おわり>
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