Heart to Heart
第30話 「右側通行」
「……お前ら、邪魔」
昼休み――
学食でメシを食べ終えた俺達が、教室へと向かう廊下を歩いていると、
突然、後ろから声をかけられた。
「……あん?」
その声に後ろを振り向くと……、
「何だ、谷島か……どうした?」
そこには、不機嫌そうに俺達を見る
クラスメートの谷島の姿があった。
「あのさ……お前ら、邪魔なんだよ」
「…………どういうことです?」
谷島の言葉の意味が理解出来ず、さくらが首を傾げる。
「だからさ……園村さん達が、そうやって三人並んで歩いてると、
廊下が塞がって、邪魔なんだよ」
谷島に言われ、俺は自分達と廊下の幅を見比べる。
確かに、俺達三人が並ぶと、
廊下の幅をほとんど使っちまうな。
でも、だからって、わざわざ谷島に
邪魔呼ばわりされる程のことか?
と、内心、首を傾げる俺。
しかし、次の谷島の言葉を聞き、
俺は奴の思惑に気付いた。
「廊下は右側通行って言うだろ? だから、半分は開けとかないとさ」
そう言って、意地悪く笑う谷島。
「え〜っ! それじゃあ、まーくんと並んで歩けないよぉ〜」
「半分じゃ、せいぜい二人しか並べません」
と、露骨に嫌そうな顔をするさくらとあかね。
そう……谷島の狙いとは、これなのだ。
谷島の言う通りにするならば、
俺達は二人までしか並んで歩くことができない。
つまり、さくらとあかねのどちらかが俺の隣りに来た場合、
どちから一人は、その後ろか前を歩くことになる。
となれば、当然、その一人の隣りには空きが出来るわけで……、
谷島はそれを狙っているのだ。
そうすることで、さくらとあかねに接近し、
口説くチャンスを作ろうとしているのだ。
…………何てみみっちい作戦なんだ。
つーか、随分と無駄な努力をする奴だ。
そんな谷島に、思いっ切り呆れる俺。
……ここは、トドメを刺してやるか。
「……そうだな。みんなの邪魔になっちゃダメだよな。
分かった……ここは谷島の言う通りにしよう」
「えっ!?」
「……まーくん!?」
予想外の俺の言葉に驚くさくらとあかね。
「そーかそーか! 分かってくれたか!」
そして、してやったりと満面の笑みの谷島。
俺は、そんな谷島にニヤリと微笑むと……、
「というわけで、もっと詰めて歩こうぜ」
そう言って、俺はさくらとあかねの肩を抱き寄せた。
「あ……♪」
「ふにゃん♪」
さくらとあかねは、驚きながらも嬉しそうに俺に体を寄せる。
そして、谷島は……、
「………………」
ただただ呆然と突っ立っていた。
「これで問題無いな。じゃ、そういう事で」
「じゃあね〜〜〜〜〜(ぽー☆)
「失礼します〜〜〜〜〜(ぽー☆)
そんな谷島に、それだけを言い残し、
俺達はピッタリと寄り添いながら、教室へと戻ったのだった。
ちなみに、その日は一日中、家に帰るまで
二人が離れてくれなかったのは言うまでもないかな?
<おわり>
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