Heart to Heart
第27話 「あなたにお熱なの」
「「まーくんとでぇ〜と♪ まーくんとでぇ〜と♪」」
今日は日曜日です。
わたしとあかねちゃんは、仲良く手を繋いで、
スキップしながらまーくんのお家に向かっています。
わたしもあかねちゃんも今日は朝からルンルン気分です。
道行く人達の視線なんか全然気になりません。
何故なら、昨日……、
「なあ、明日、三人で動物園にいかねーか?」
と、まーくんがデート☆に誘ってくれたんです。(ポッ☆)
わたし達から誘うことはよくありますけど、
まーくんから誘ってくれるなんて、とっても珍しいです。
「楽しみだね、さくらちゃん♪」
「そうですね、あかねちゃん♪」
スキップしながら、わたしはあかねちゃんと微笑み合う。
フフフ……今日はとってもステキな一日になりそうですね。
ピンポーン……ピンポーン……
まーくんのお家に到着すると、
わたしは早速、玄関のチャイムを押しました。
そして、しばらくして……、
ガチャッ……
もう準備万端整えたまーくんが出てきました。
「おはようございます、まーくん☆」
「おはよう、まーくん☆」
わたし達は、精一杯の笑顔をまーくんに見せました。
そして、まーくんもいつものステキな笑顔を……、
「…………」
……見せてくれませんでした。
まーくんは、出てくるなり、
わたしの顔を真剣な眼差しで見つめています。
ま、まーくん……そんな熱い視線を向けられたら、わたし……。(ポッ☆)
と、わたしが頬を赤くしていると、
まーくんは軽くタメ息をつきました。
そして、わたしの腕を掴むと……、
「さくら……今日のデートは中止だ」
そう言って、わたしを家の中へと引き摺り込みました。
「ま、まーくん、どこ行くの?!」
家の中へと入っていくわたし達を、
あかねちゃんが慌てて追いかけてきます。
「あの……まーくん?」
訊ねるわたしを無視して、
まーくんはグイグイとわたしを引っ張っていきます。
そして、まーくんのお部屋に連れ込まれて、
強引にベッドに寝かされてしまいました。
「ま、まーくん?」
まーくんの突然の行動に戸惑うわたし。
そんなわたしに覆い被さるように、
まーくんはゆっくりとお顔を近付けてくる。
そ、そんな……まーくん……いきなり……。
わたし……まだ、心の準備が……。
早鐘のように脈打つ鼓動。
もう、まーくんの顔が視界いっぱいに見える。
ああ……まーくん。
見つめられているだけで、体から緊張が抜けていく。
……まーくん………………お願いします。
わたしは、そっと瞳を閉じた。
目を閉じてても、まーくんのお顔が近くにあるのが分かる。
まーくんの吐息が、わたしの頬にかかる。
そして……、
ぴとっ
「…………やっぱりな」
「え?」
予想外のまーくんのその言葉に、
わたしは目を開きました。
見れば、まーくんのおでこがわたしのおでこにくっついてます。
「さくら……お前、熱があるだろ?」
「…………気付いてたんですか?」
「まぁな。一目見て、すぐに気が付いたよ」
と、まーくんは優しく微笑む。
そうだったんですか。
だから、まーくん、わたしをお部屋に連れてきたんですね。
でも、まーくん。
こんな状況になったら、熱が出ない方がおかしいですよ。
朝から体調が悪かったのは確かですけど。
「で? 熱は測ったのか?」
訊ねるまーくんに、わたしは頷きました。
毎朝、お熱を測るのは恋する女の子として当然です。
いつか来る日の為に、ちゃんと基礎体温は
測っておかないといけませんからね。
「……何℃だったんだ?」
「……37度8分です」
「ええっ!? そんなにあったの?!
いつの間にかお部屋に入ってきていたあかねちゃんが、
驚きの声を上げました。
「……なあ、さくら」
ベッドに腰を下ろし、わたしの体にお布団をかけながら、
まーくんは優しい口調で言いました。
「……どうして、こんな無理したんだ?」
口調は優しいけど、でも、とても厳しい声です。
「だって、せっかくまーくんが誘ってくれたのに……」
「あのな……デートなんざいつでもできるだろが」
「そうだよ。さくらちゃんが倒れちゃったら、あたし、悲しいよ」
と、あかねちゃんは涙目でわたしの手を握ってくれました。
「まーくん……あかねちゃん……ゴメンナサイ」
「もういいよ。お前の気持ちは嬉しかったから」
「うん! 早く元気になって、
次のお休みには三人で動物園に行こうね」
そう言って、まーくんとあかねちゃんは
わたしの頭を撫でてくれました。
……わたし、幸せです。
大好きなまーくんと、大好きなあかねちゃんに、こんなに大切にされて。
ありがとう、まーくん。
ありがとう、あかねちゃん。
わたしは、心の中で二人にお礼を言いました。
「そうだ! 薬があるから持ってきてやるよ」
と、突然、まーくんは立ち上がりました。
「え? お薬あるんですか?」
わたしが訊ねると、まーくんは何やらニヤニヤと笑って言いました。
「おう、あるぞ……座薬だけどな。
何なら、俺が入れてやるぞ」
まーくんのその言葉に、わたしはちょっと考えました。
座薬を?
まーくんに、入れてもらう?
……。
…………。
………………っ!!
かぁぁぁぁぁぁっ……!
わたしは、まーくんに座薬を入れてもらっている自分の姿を想像してしまい、
耳まで真っ赤になりました。
あ……ダメです。
何だか、頭がクラクラしてきちゃいました。
「わっ! さくらちゃん、大丈夫?! お顔が真っ赤だよーっ!!」
「わ、わりぃっ!! 場を和ませる冗談のつもりだったのに、
余計に熱が出ちまったかっ!?」
わたしの様子を見て、まーくんとあかねちゃんは慌てふためく。
「…………まーくん、えっちです」
それだけを言って、わたしはお布団の中に潜り込みました。
でも、まーくんならいいかなって思っちゃったわたしは、もっとえっちですね。(ポッ☆)
で、結局、その日は一日中、まーくんとあかねちゃんに甘えてしまいました。
そのおかげで、夕方にはすっかり体調も良くなったんですけど、
わたしはベッドから起こしてもらえませんでした。
何故なら……、
「う〜ん……全然熱が下がってないな。
さくら、お前、もう少し寝てろ」
と、まーくんはわたしのおでこに自分のおでこをくっつけながら言いました。
ですから、まーくん……、
そんなことされたら、お熱が出てしまうのは当たり前なんですよ〜。
……でも、ちょっと嬉しいです♪
<おわり>
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