Heart to Heart

    
第26話 「そして、夜が明けて」







 朝――

 目を覚ますと……、

「おはようございます、まーくん」

「おはよう、まーくん」

 両隣りに、さくらとあかねの笑顔があった。

 二人とも、ベッドの中で幸せそうに俺の腕をギュッと抱きしめている。

「……ああ、おはよう」

 と、二人に挨拶をしつつ、俺はさくらに目を向けた。

 何故、今ここにさくらがいるのか?
 何故、俺のベッドの中にいるのか?

 そんなことは、今はどうじてもいいことだ。



 俺には、さくらに言わなければならないことがあるから。



「さくら…………ゴメン」

 何から話して良いのか分からず、
とにかく、俺は謝っていた。

 唐突に謝る俺に、さくらはクスッと微笑む。

「まーくん、何を謝っているんですか?」

「あ……その……昨夜のこと、なんだけど……」

「そのことなら、もうあかねちゃんから聞きましたよ」

「……えっ?」

 さくらの予想外の反応に、俺は言葉を詰まらせる。

「全部知ってます。あかねちゃんがここにいる理由も、
昨夜、何があったのかも……全部、知っています」

 さくらはそう言うと、俺が眠っている間のことを話してくれた。





 今朝、さくらはいつものように俺を迎えに来た。

 しかし、何度チャイムを鳴らしても返事は無い。
 当然だ。俺はまだ寝ていたのだから。

 が、そのチャイムの音で、俺と一緒に寝ていたあかねが目を覚まし、
さくらを出迎えたのだという。

 そして、さくらは、あかねから昨夜の事を一部始終聞き、
全てを知った上で、俺が起きるのを待っていたのだ。





「……怒らないのか?」

「わたし、まーくんもあかねちゃんも大好きですから」

 そう言って、さくらは優しく微笑んだ。

「……じゃあ、許してくれるのか?」

「いいえ。わたしをのけ者にしたんですから、許してあげません♪」

 と、その言葉と同時に……、


 
――ちゅっ☆


 さくらは唇を重ねてきた。

「フフフ……ですから、これで許してあげます♪」

 そして、俺の胸に頬をすり寄せてくる。

 そんなさくらの優しさが……、

 嬉しくて……、
 胸が熱くなって……、

 俺は……、


 
なでなでなでなで……


「あ……(ポッ☆)

 いつものように、頭を撫でた。

 うっとりと頬を赤く染めるさくら。

 すると、そんな俺達を黙って見ていたあかねが……、

「あーっ! さくらちゃんだけズルイよ〜!
まーくん、あたしも〜!」

 と、俺にのしかかってきて……、


 
――ちゅっ☆


 あっという間も無く、唇を奪われてしまった。

「えへへへ〜♪」

 そして、さくら同様そのまま俺の胸に頬をすり寄せる。

 ったく、こいつは……、


 
なでなでなでなで……


 俺は空いた手であかねの頭を撫でてやった。

「ふにゃあ〜♪」

 嬉しそうにノドを鳴らすあかね。
 そして、あかねを見つめて微笑むさくら。

 そんな二人を見て、俺は思う。

 やっぱり、俺達はこうでなくっちゃな。
 昨夜も思ったけど、こういうのが一番俺達らしいよ。

 何も、慌てることはないんだ。

 いつまでも、今まで通り、ずっと変わらずに、
今のままの関係を続けていけばいいんだ。

 俺達が結ばれる日は、いつか来る。

 きっと、ごく自然に……、
 俺達らしく……、
 まるで、当たり前のように……、

 無理する必要は無いんだよな。。

 だから、それまでは、ずっと……、

「……ねえ、まーくん」

 あかねに呼ばれ、俺の思考は中断した。

 見れば、あかねは何やら恥ずかしそうにもじもじしている。

「ん? どうした?」

「あ、あのね……さくらちゃんもいるし……今なら、いいよ」

「あ? 何が?」


「だから……
昨夜の続き(ポッ☆)


 そう言って、恥ずかしさのあまり、
俺の胸に顔を押し付けて顔を隠すあかね。


「あ、あの……それでしたら、
わたしも(ポポッ☆)


 と、さくらも、恥ずかしがりながらも、
期待に満ちた瞳で俺を見つめている。

 ちょ、ちょっと待てお前らっ!!
 人がせっかく綺麗にシメようとしてるのに、
何でンな事言うんだよっ!?

 そんな俺の思いに関係無く、さくらとあかねは……、

「ねえ、まーくん……お願い☆」

「わたしはあかねちゃんの後でいいですから……お願いします☆」

 と、すりすりと俺に体を押しつけて誘惑してくる。

 マ、マズイ……!
 昨夜の件もあるし、長いこと一緒のベッドに入ってたから、
二人ともすっかり甘々モードになっとる!

 それに、俺も昨夜かなり無理して我慢したし、朝ということもあるから、
いろんな意味で
ギンギンになってるぞ!!

 こ、このままでは、行き着く所までいっちまう!!

 それとも、もしかして、これが
『俺達らしい』なのか?!

「…………」

 あああああっ!! 何か、今、すっげー納得できちまったぞ!
 『そうかもしれない』なんて思っちまったぞ!

 やっぱり、このまま最後までいっちまうのか!?

 そんなの、何か違う気がするぞ!!

 ってゆーか、俺、初めてなんだぞ!
 未経験なんだぞ!

 それなのに、いきなり
二人同時?!
 いわゆる、
3○っ!?


「……まーくん、好きです☆」

「まーく〜ん☆」

 いつにない色っぽい声で、さくらとあかねが俺に迫ってくる。


「か、勘弁してくれぇーーー!!」








 で、その後……、

 二人を説得するのにかなりの時間を使ってしまい、
三人仲良く遅刻してしまったのだった。








<おわり>
<戻る>