Heart to Heart

   
    第23話 「どきどきないと」







 
コンコン――


 同棲生活最後の夜……、

 わたしとあかねちゃんは、
まーくんのお部屋のドアをノックしました。

 そして、しばらく待ちましたが……、

「……まーくん、もう寝ちゃったのかな?」

「そうみたいですね」

 返事は返ってきませんでした。

 当然ですよね。
 もう、時計の針は0時を回ってるんですから。

「どうしよっか?」

「どうしましょう?」

 わたしとあかねちゃんは顔を見合わせました。

 せっかく、同棲生活最後の夜ですから、
まーくんと一緒に寝ようと思って来たんですけど、
まーくんが寝てしまっているのなら、仕方ないですね。

 残念ですけど、お部屋に戻ることにしましょう。

 と、わたしがお部屋に戻ろうとすると……、

「……あかねちゃん?」

 さっきまで側にいたあかねちゃんの姿が見えません。

 見れぱ、まーくんのお部屋のドアが開いています。

 まさか……、

 わたしは、そ〜っとまーくんのお部屋の中を覗き見ました。

 すると……、

「えへへへへへ♪ まーく〜〜〜ん☆」

 やっぱり……。

 いつの間にか、あかねちゃんは
まーくんのベッドの中に潜り込んでいました。

 眠っているまーくんに抱きついて、
幸せそうに喉を鳴らしています。

 フフフ……何だか、猫みたいですね。

 ……って、そんことよりっ!!

「あかねちゃん、ズルイですよっ! 抜け駆けはいけません!」

 わたしは出来るだけ小声で言いながら、
あかねちゃんに歩み寄りました。

「もうっ! まーくんが起きちゃったらどうするんですか!」

 と、わたしはあかねゃんをベッドから引っ張り出そうとしましたが……、

「あかねちゃんもおいでよ〜。
まーくん、とってもあったかいよ〜♪」

 あかねちゃんのその一言に、固まってしまいました。

 そ、そんな……まーくんの許しも無しに、そんなこと……。

 ……でも、ホントにあったかくて、気持ち良さそう。








 結局、まーくんのぬくもりの誘惑には勝てず、
わたしはあかねちゃんと一緒にまーくんの隣に潜り込んでしまいました。

「ね〜? あったかくて気持ちいいでしょ〜?」

「そうですねぇ〜」

 ホントに、気持ちいいです。

 こうして、まーくんに体を寄せていると、
まーくんのぬくもりに全身を包まれているような気分になって……、

 はあ……何だか、頭がポ〜ッとしてきちゃいました。

「……まーくん☆」

「まーく〜〜〜ん☆」

 わたし達は、頬をまーくんの胸にすり寄せて甘えかかりました。

 それでも、まーくんは起きる気配はありません。
 完全に熟睡しちゃってます。

 フフフ……これなら、ゆっくりと堪能できそうですね♪

 と、わたしが思った、その時っ!!

「う〜〜ん……」


 
がばっ!!


「きゃっ!?」

 突然、まーくんがわたしの方に寝返りを打ったかと思うと、
まーくんがわたしの上に覆い被さってきました。

 えっ!? えっ!? ええーーーーーーっ!!

「ま、ままま、まーくん?!」

 もしかして、まーくん、いつの間にか起きてたんですか?

 じゃあ、もしかして、これって……やっぱり……。(ポッ☆)

 で、でも、そんな……わたし、まだ、心の準備が……。


 
ふに……


「……ふあっ」

 うろたえるわたしを無視して、
まーくんの手が、パジャマ越しに、わたしの胸に添えられる。


 
ふにふにふに……


「は……ん……あふ☆」

 まーくんの手が、わたしの胸を優しく揉む。

 な、何……この感覚……気持ち、いい……?

 ヤダ……声が、出ちゃいます。
 は、恥ずかしい……。


 
ふにゅふにゅふにゅ……


「あ、んん……あっ……あん♪」

 わたしの胸を揉み続けるまーくんの手。
 まーくんに全てを委ねるわたし。

 次第に、体が熱くなり、気持ちが高ぶっていく。

 我慢しようとしても、どうしてもこぼれ出てしまう声。
 その声が、少しずつ大きく、甘くなっていく。

 ああ……とうとう、わたし、まーくんと……、

 と、わたしが快感と喜びに体を震わせていると、
わたしの耳元で、まーくんが小さく呟きました。


「ん〜……肉まん〜♪」


「…………」


 …………は?

 一瞬、わたしはそれまでの幸福感も忘れ、
固まってしまいました。

 まーくん……もしかして、
寝ボケてるんですか?
 わたしの胸を、
肉まんと間違えて触ってたんですか?

 それで感じていたわたしって……。(泣)

「うみゅ〜〜〜っ!! さくらちゃんばっかり、ズルイ〜〜〜ッ!!
まーくん、あたしにもしてぇ!!

 と、あかねちゃんに引っ張られ、
まーくんはわたしの上から転がり落ちて、
その勢いで、今度はあかねちゃんに覆い被さりました。

 しかも、まーくんの手は、
的確にあかねちゃんの胸に添えられています。

 ……まーくん、ホントに寝ボケているんでしょうか?

「えへへへ♪ まーくん☆」

 まーくんが寝ボケているとも知らず、
あかねちゃんは嬉しそうにまーくんにしがみついてます。

 そして、まーくんの手が、あかねちゃんの胸を撫でました。

「きゃうっ! く、くすぐったいよ……ん……うみゅん☆」

 最初はくすぐったがっていたあかねちゃん。

「ふみゅ……うぅん……は、ふにゃあ♪」

 でも、少しずつ声が甘くなっていきます。

 あかねちゃんも、感じてるんですね。

 でもね、あかねちゃん。
 まーくんは寝ボケてるんですよ。


「肉まん……小さくなった」


「ほえ?」

 まーくんは突然そう呟くと、あかねちゃんから離れて、
そのまま大の字になってイビキをかき始めてしまいました。

 ……ほら、ね。

 そんなまーくんを見て、あかねちゃんは目を丸くしています。

 そして、我に返ると……、

「まーく〜〜〜ん……止めちゃヤダよ〜。寝ちゃダメだよ〜」

 と、まーくんを揺すり始めました。

 あかねちゃん、すっかり興奮しちゃってるみたいですね。

 まーくん……わたしだって、すっかり興奮しちゃってるんですけど。
 この高ぶった気持ちを、どうすればいいんですか?

 わたしはジッとまーくんを見つめました。

 まーくんは何事も無かったかのように幸せそうに眠っています。

 もう!! まーくんったら!!
 ここまでしておいて、一人で眠っちゃうなんてヒドイじゃないですか!!


 
ぎゅむ〜〜〜〜っ!


 わたしは無言でまーくんの頬を引っ張りました。

 それでも、まーくんは目覚めず、気持ち良さそうに眠っています。

 むむむむ……どうしてあげましょう。

 と、わたしが憮然としていると……、

「う〜ん……さくらぁ……あかねぇ……」

「…………」

「…………」

「…………もう」

「まーくんったら……」

 わたし達の夢見て、そんな幸せそうな寝顔をされたら、
怒るに怒れないじゃないですか。

 まーくんが一番ズルイですよ。

 ……仕方ないですね。

 今回だけは、許してあげます。








 でも、いつか、きっと……、

 寝ボケてじゃなくて、ちゃんとまーくんの意志で、
今夜の続きをしてくださいね。

 わたしもあかねちゃんも、
いつでもOKなんですからね☆








<おわり>
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