Heart to Heart

     
 第21話 「めでたい日」







 俺が部屋でぽりぽりとポテチを食いながら漫画を読んでいた時、
それは起こった。


「うみゃああああああっ!!!」


 下の階から、あかねの悲鳴が聞こえてきたのだ。。

「な、何だぁっ!?」

 俺は慌てて部屋を飛び出した。

 今の悲鳴はただ事じゃねーぞっ!

 二段飛ばしで階段を駆け下り、あかねの姿を探す。

「どうした!? あかね!!」

「……ぐすっ……ふぇ〜ん……まーく〜ん」

 俺が呼ぶと、あかねの泣き声が返ってきた。
 見れば、あかねはトイレの前で座りこんで泣いてる。

「どうした、あかね? 何があった?」

 あかねを落ち着かせる為に、そっと抱きしめて頭を撫でてやる。

「まーくん……まーくん……」

 ようやく落ち着いてきたようだ。
 あかねは俺の胸に顔をすり寄せてくる。

「あかね……一体、何があったんだ?」

 あかねが落ち着いたところで、もう一度、同じ質問を繰り返す。

 しかし……、

「あ、あのね……その……」

 何故かあかねは口篭り、俺に何も教えてくれない。
 俺の顔さえ見ようとしない。

 ……何なんだ? サッパリわかんねーぞ。

「まーくん、何があったんですか?」

 何も答えてくれないあかねに困り果てていると、
いいタイミングでさくらが来てくれた。

「ああ、さくら。いいところに来た。
あかねの話を聞いてやってくれないか?」

「……どうしたの? あかねちゃん」

「うみゅ〜……あ、あのね、さくらちゃん……」

 さくらに訊ねられ、ようやく口を開くあかね。
 たが、すぐに口を閉ざしてしまった。

 そして、チラッと、一瞬だけ俺に視線を向ける。

 なるほど……そういうことか。

「……あかね。男の俺には言い難くても、女のさくらには言えるだろ?
俺は聞かないから、さくらにだけ話しな」

「……うん」

 あかねは俺の言葉に頷き、さくらに耳打ちする。

「ふんふん……」

 あかねの話に相槌を打つさくら。
 さくらの表情から察するに、特に深刻な内容ではないみたいだけど……、

「……なるほど、そういう事だったんですね」

 話が終わり、あねがさくらの耳から離れる。

 そして……、


「おめでとう、あかねちゃん!」


「うみゅ?」

「は?」

 突然のさくらのセリフに、俺とあかねは間の抜けた声を上げてしまう。

「おめでとうって……どういうことだ?」

 俺が訊ねると、さくらはちょっと恥ずかしそうに……、

「えっと……ようするに、今日はあかねちゃんの
『女の子の日』なんです」

 と、教えてくれた。

 女の子の日? ああ、いわゆる
『あの日』のことか。

「何だよ。だったら、あんな大袈裟に騒ぐようなことじゃねーだろ?
女の子にとっては毎月のことなんだから」

「まあ、普通はそうなんですけど、
あかねちゃん、今回が初めてだったんですよ。
最初は、みんなビックリするものなんですよ。
変な病気になっちゃったんじゃないかって」

「ふ〜ん……」

 そうか……初めてだったんじゃしょーがねーよなー。

 って、……ちょっと、待て。
 じゃあ、何か?


「お前、まだだったんかい?!」


「うみゅ〜……」

 俺のツッコミに赤くなるあかね。

 コイツ、子供っぽいとは思ってたけど、まさかここまでとは。
 ……あなどれんな。

 まあ、それはともかく……、
 そっか……あかねって、このくらいの周期で『あの日』がくるのか……。

 ……覚えとこ。(爆)

「とりあえず、今日のところはわたしのを貸してあげますね。
あかねちゃんのは、今度一緒に買いにいきましょう」

「うん。ありがとう、さくらちゃん」

 などと、俺がちょっちよからぬことを考えていると、
さくらとあかねはそんな会話を交わしている。

 ……多分、あの日用の例の道具のことだろうな。

 ん? そういえば、例の道具といえば……、

「なあ、さくら?」

「何ですか?」

「さくらってさ……
どっち派なんだ?


 
がいんっ!!


 次の瞬間、俺の頭にフライパンがメリ込んだのは言うまでもないよな。








 ちなみに……、

 その日の晩メシは赤飯が出されたのだった。








<おわり>
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