Heart to Heart

   
    第19話 「たれてます」







「……何やってんだ? お前ら」

 家に帰ると、さくらとあかねが床にうつ伏せで寝そべっていた。

 あかねだけならともかく、
さくらまであんな態勢でいるなんて珍しいな。

「たれてます〜」

「そうだよ〜♪ 『たれあかね』だよ〜♪」

 『たれあかね』って……おいおい、じゃあ、さくらは『たれさくら』か?

 ってゆーか、『たれ』って何だ?! 『たれ』って?!

「気持ちいいよ〜♪」

「まーくんも一緒にたれましょ〜」

 ……セリフまでたれてるし。

「何だかよくわからんが……まあ、付き合ってやるか」

 俺は見よう見まねで床に寝そべった。

「こうか〜?」

 ついでにセリフもたれさせてみる。

「そうです〜」

「たれるがまま〜♪ たれゆくまま〜♪」

 あかねは妙に楽しそうだ。

 まあ、意味も無くゴロゴロするのは俺も好きだけど、
まさかずっとこのままなのか?

 ……ちょっと退屈だぞ。

 と、俺が思い始めていると……、

「じゃあ、今度は積み重なってみましょ〜」

 さくらが突然、俺の背中の上にのっかってきた。

「あたしも〜」

 続けて、あかねがさくらの上にのっかる。

 ぬうっ……お、重ひ。

 一人一人は重くないのだが、さすがに二人いっぺんだと苦しい。

「お、おい……ちょっとどいて……」

 と、二人に言おうとした、その時っ!!


 
ふに……


 …………むっ!?


 
ふにふに……


 むむむっ!


 
ふにふにふにふに……


 
ぬおおおおおおおっ!!


 こ、この小さくも自己主張するこの甘美な感触はぁぁぁぁぁぁっ!!

 そ、そうだよな。
 よく考えたら、今、俺の背中には
『さくらの』が押し当てられてるんだよな。

「まーくん〜。気持ちいいですね〜」

「お、おう……気持ちいいぞ〜。後で、あかねと位置交代しろよ〜」

「はい〜」

 思考能力までたれているのか、
俺の言葉の意味にも気付かず、さくらは頷く。

「たれるがまま〜♪ たれゆくまま〜♪」

 あかねは、やっぱり妙に楽しそうだった










 結局、その日は晩メシ時まで、二人の感触を堪能したのだった。








<おわり>
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