Heart to Heart

   
    第17話 「おべんと」







「まーくん。はい、どうぞ♪」

「おう、サンキュー」





 昼休み――

 いつものごとく、俺達三人は、屋上でメシを食べる。

 俺はいつもは購買のパンなのだが、
さくらとあかねとの同棲生活が始まってからは、
いつも二人の手作り弁当だ。

 これを作る為に、毎朝二人は早起きしてくれてるんだよな。
 ……ううっ……ありがたいぜ。
 これはもう、感謝の意を込めて、残さず食べねばなっ!

「いただきます」

「「いただきま〜す」」

 さくらから受け取った弁当箱のフタを開け、
俺は手を合わせる。

 それに合わせて、俺の両隣に座るさくらとあかねも手を合わせた。

 そして……、

 俺は感謝の意を、食べる勢いで表現する。


 
がつがつがつ……


 
もぐもぐもぐ……


 
むしゃむしゃむしゃ……


「……うぐっ!?」


 
どんどんどんどんっ!!


「はい! まーくん、お茶!」

 メシを喉に詰まらせ、胸を叩いていた俺に、
さくらがタイミング良くお茶を渡してくれる。


 
ごくごくごくごく……


「ぷっはぁーっ! 助かったー」

「まーくん、そんなに急いで食べなくてもいいのに」

 と、呆れた口調で言いつつも、さくらの表情は嬉しそうだ。

「はは、わりぃわりぃ」

 と、さくらにコップを返し、俺は再び弁当に挑みかかろうとした。

 その時……、

「あ……」

「ん? どうした、あかね」

 急に声を上げたので、俺はあかねを見る。

「まーくん……ほっぺた、ゴハン粒ついてる」

「え? どっちだ?」

「こっちだよ……取ってあげるね♪」

 そう言うと、あかねは俺に顔を近付けてきて……、


 
――ぺろっ☆


「……えへへ〜♪ 取れたよ♪」

「…………お、おう……さんきゅ……」

 な、なんつー嬉しい……じゃなくて、恥ずかしいことを……。

 思わずにやけてしまいそうになり、
俺はそれをあかねに見られない様にそっぽを向く。

 で、あかねの反対側を向くということは、
そっちにはさくらがいるわけで……、

「……まーくん」

 俺のにやけ顔を見て、少し困ったような表情になるさくら。

「は、ははは……さ、メシメシ」

 乾いた笑いを浮かべつつ、俺は食事を再開する。

「…………」

 そんな俺を、さくらはジーッと見つめている。
 何かを期待しているような眼差しで……。

 ……はは〜ん。そういうことか。
 ったく、しょーがねーなー。


 
がつがつがつがつ……


 俺は勢い良くご飯を口の中にかき込む。

 そして、弁当から口を離した。

「…………あ」

 さくらが表情を輝かせた。

 どうやら、気付いたようだな。
 
俺がわざと頬に付けたゴハン粒に。

「……まーくん……ゴハン粒……取ってあげますね」

 そして、さくらは、おずおずと俺に顔を近付けてきて……、


 
――ちゅっ☆


「……ンフフフ♪」

「へへへ……さくら、ありがとな」





 そして……、





「ふぅ……ごちそうさん」

 弁当を食い終わり、俺は箸を置いた。

「「おそまつさまでした♪」」

 にっこりと微笑む二人。

 そんな二人を見て、俺はあることに気付いた。

 俺は二人の頬を指差し……、

「……さくら、あかね……ついてるぞ」








 ……この後、俺が何をしたのかは、言わなくてもわかるよな?








<おわり>
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