Heart to Heart

 
   第11話 「痛いけど気持ちいいこと」







「ただいまー」

 わたしは、お夕飯のお買い物を終えて、
まーくんの家へと帰ってきました。

 ウフフ……♪
 まーくんの家に来て『ただいま』って言えるのって、
とってもステキですよね。

 まるで、このお家が、わたし達三人のお家になったみたいで、
すごく幸せな気持ちになります。

「……あら?」

 玄関に入ってすぐ、わたしはおかしな事に気付きました。

 妙に、静かです。

 いつもなら、まーくんかあかねちゃんが出迎えてくれる筈です。
 でも、誰も出てきません。

 二人の靴はありますから、留守ってわけじゃないみたいですけど。

 ……二人とも、何をしてるんでしょう?

「…………
まーくん」

 あら? 今、あかねちゃんの声が聞こえたような……?

 気のせいじゃありません。
 確かに、聞こえました。

 ……二階から、ですよね?

 わたしは、荷物を玄関に置いて、階段を上りました。

「……
……いいのか?

 あっ! 今度はまーくんの声です。
 間違いありません!
 わたしが、まーくんの声を聞き間違えるはずがありませんから。

 話し声は、まーくんの部屋から聞こえてきます。

 なるほど。
 多分、二人でゲームでもしてるんでしょうね。
 それに夢中になって、わたしが帰ってきたのに気付いてないのでしょう。

「……ウフフフ♪」

 わたしはちょっとしたイタズラを思いつきました。

 いきなり部屋に入って、ビックリさせちゃいましょう。

 そうと決まれば、絶好のタイミングで飛び込まなきゃいけませんね。

 わたしは、そっとドアに耳を寄せて、中の様子を窺いました。

 部屋の中のまーくん達の会話が聞こえてきます。





「……じゃあ、やるぞ。こっちおいで」

「……うん」





 えっ? やるって……まーくん、何をするんですか?

 まーくんの言葉に頷くあかねちゃんの声……。
 そして、ギシッとベッドが軋む音……。

 何だか、変な雰囲気です。





「ほら、早く脱げよ」

「うん」





 えええっ!! ぬ、脱げって……。
 じゃあ、まさか……。





「まーくん……優しくしてね」

「分かってる。でも、俺、初めてだから、痛かったらゴメンな」





 ……やっぱり。
 まーくんとあかねちゃん、今から……。





「……まーくん、上手だね。気持ちいいよ」

「そうか? そう言ってもらえると嬉しいよ」





 も、もう始まってる……。

 あかねちゃん、気持ちいいんですか?
 それに、まーくん……上手なんですか?





「それにしても、あかねのって小さいよな」





 小さい……って、それって何のことですか?





「……うん。さくらちゃんのもちっちゃいよ」





 わたしも……ですか?
 わたしもあかねちゃんも小さいもの……。
 と言えば、やっぱり……あれしか……。

 まーくん、大きい方がいいんですか?





「そうか……ま、小さい方が可愛くていいと思うぞ」





 小さい方が可愛い……。

 ……良かった。
 まーくん、小さい方がいいんてすね。





「……あっ、痛い! まーくん、急に動かしちゃダメだよ」

「ゴメンゴメン。ちょっと血が出ちゃってるけど、大丈夫か?」

「うん。大丈夫だよ……続けて」

「ああ……」





 血が出たって……それって、もしかして……。

 あかねちゃん……わたしよりも先に大人に……、
まーくんに、大人にしてもらったんですね。

 羨ましい……。





「……ふぅ……終わったよ」

「えっ? もう? まーくん、早いんだね」





 
は、早いんですか?
 ちょっと、意外です。(爆)

 まーくん、もっと頑張ってあげないと、
あかねちゃんが可哀想ですよ。





「まーくん、今度はあたしがしてあげる」

「え? い、いいよ。汚いし」

「まーくんのなら、汚くなんかないよ。ほらほら♪」





 今度は、あかねちゃんがまーくんにっ?!
 そんな……あかねちゃんってば、大胆……。(ポッ☆)





「……わあ……まーくんのっておっきいね」





 
大きいんですか!?
 ……やっぱり。(ポポッ☆)





「……まーくん、痛くない?」

「ああ、全然。気持ちいいよ」

「えへへ♪ 良かった♪」





 まーくん、気持ちいいんですか?
 あかねちゃんに、してもらって、気持ちいいんですか?





「まーくん……あかねちゃん……」

 わたし、何だか悲しくなってきました。

 まーくんとあかねちゃん、わたしに内緒で二人で……。
 わたしが買い物に行ってる間に、二人だけで……。

 まーくん、ヒドイです。
 わたしには何もしないのに、あかねちゃんだけ……。

 あかねちゃん、ヒドイです。
 まーくんと初めて結ばれる時は、
二人で一緒にって約束したじゃないですか。

 抜け駆けなんて、ズルイです。

 あかねちゃんには、先を越されちゃいましたけど、
まだ、間に合いますよね?

 今からでも、遅くないですよね?

 まーくん……あかねちゃん……、
今からわたしも一緒にっ!!








 ――バタンッ!!

 わたしは、勢い良くドアを開けました。

「まーくん、あかねちゃん! わたしも一緒に……って……あら?」

 部屋に飛び込んだわたしは、その光景を見て目を丸くしました。



 ベッドの上に座るまーくんとあかねちゃん……。
 床に落ちた二人のくつ下……。
 あかねちゃんの膝の上にのせられたまーくんの足……。
 そして、あかねちゃんの手には、爪切り……。



「どうした、さくら? お前も爪切ってほしいのか?」

 呆然としていたわたしは、まーくんの言葉で我に返りました。

 そ、そうですか……。
 爪を切ってもらっていたんですね。

 ……良かった。
 もう少しで、恥ずかしいことを口走ってしまうところでした。








 もう……二人とも、紛らわしい会話をしないでください。








<おわり>
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