機動戦艦 ナデシコ SS

ルリルリの幼妻奮闘記

   
   第8話 「私の可愛い妹です」







 今日は、お店の定休日――

 その日の朝は……、








「うおわぁぁぁーーーーっ!!」








 ……アキトさんの絶叫で始まりました、
















 ――みなさん、こんにちは。(ぺこ)

 お久しぶりのテンカワ・ルリです。


 ……。

 …………。

 ………………。


 まあ、何と言いますか……、

 本当に久し振りですよね?
 一体、どれだけ放っておかれたのでしょう?

 え〜っと……半年ですか?
 私達、半年もほったらかしだったんですか?

 正直、ちょっとムカついてきましたね。(怒)

 いくら、このサイトでは、私達は脇役的存在でしかないとはいえ、
ここまで更新をストップさせるとは……、

 もしかして、以前、ハードディスクを初期化しなければならない事態に陥ったのは、
ただの偶然でしかない、などと思っているのでしょうか?

 まったく、HtHRPGだかなんだか知りませんが、そんな物を作っている暇があるのなら、
私とアキトさんのらぶらぶな話の続きを、サッサと書いて欲しいものです。

 ――は?
 それは暴言、ですか?

 そんな事は知ったこっちゃありません。
 文句があるなら、かかって来てくれて構いませんよ。

 ただ、忘れないでくださいね。
 このサイトの真の支配者は私なんだ、ってことを……、(ニヤリ)

 その気になれば、『また』管理人のPCのハードディスクをクラッシュさせられるんですよ。
 それとも、今度は撃退不能なウイルスでも送ってあげましょうか?


 ……。

 …………。

 ………………。


 ……どうやら、反省してくれたようですね。

 良いですか?
 また、今回みたいな事があったら、タダじゃおきませんからね……、

 さて……、

 管理人との誠意の込もった、
平和的な話し合いが終わったところで……、

 ……お話を、元に戻すとしましょう。
















「アキトさんっ! ど、どうしたんですかっ!?」

 あれだけ大きな声で悲鳴を上げられれば、
低血圧の私も、さすがに一発で目が覚めます。

 しかも、ほとんど耳元ですから、尚更です。

 ほら……私、いつも、アキトさんと一緒に寝ていますから……、(ポッ☆)

 そ、それはともかく……、
 アキトさんの絶叫で目を覚ました私は、慌てて跳び起き、隣にいるアキトさんの方を向きました。

「あ……あうあう……」

 上半身だけを起こし、
何やら口をパクパクさせているアキトさん。

 どうやら、驚きのあまり、完全に言葉を失ってしまっているようですね。

 では、アキトさんは、
一体、何をそんなに驚いているのでしょう?

 見れば、アキトさんは、相変わらず口をパクパクさせながら、ある一点を指差していますが……、

「――?」

 そんなアキトさんの様子に首を傾げつつ、私は、その指の先へと目を向けて……、


 ……。

 …………。

 ………………まあ♪(ポッ☆)


 『そこ』を見て、思わず頬を赤くしてしまう私。

 アキトさんが指差すその先は、布団に隠れた下半身……、
 その部分が、それはもう大きく、子供一人が潜り込めるくらいに膨らんで……、

 もう、アキトさんったら……♪
 朝から元気ですね♪(ポポッ☆)

 でも、あんなに大きいなんて……、(ドキドキ)

 あれでは、今の私がどんなに頑張っても……、
 いえ、それどころか、とても常人では受け入れられないレベル……、

 ……って、いくらなんでも大きすぎですっ!

 子供一人が潜り込めるくらい、だなんて……、
 布団をそこまで押し上げてしまうなんて……、

 そんな大きさは、あまりにも不自然で下品ですっ!
 そんなモノが、アキトさんの……(きゃっ♪)……なわけがありませんっ!

 だとしたら、あの布団の膨らみの正体は何なのでしょう?

 布団を剥がしてしまえば、
すぐにハッキリするのでしょうが……、

 もし、万が一、アレがアキトさんの……だったとしたら、と思うと、とてもそんな真似は……、

 ――ん?
 ちょっと待ってください。
 .............
 子供が一人潜り込めるくらい……?

 まさかっ!?
 この布団の膨らみの正体は……っ!!


 
――ガバッ!!


 ある可能性に思い至った私は、
躊躇すること無く、思い切り勢い良く、布団を剥がしました。

 そこにいたのは……、

 桃色の長い髪――
 雪の様に真っ白な白い肌――

 そして、私と同じ金色の瞳――

「やっぱり、あなたでしたか……ラピス」(怒)

 いきなり布団を剥がされ、
素肌が外気に晒されて寒くなったのでしょう。

 布団の中に潜り込んでいたラピスは、軽く呻いて、体を丸くしました。

 そんなラピスを、私は沸々と湧いて来る怒りを押さえつつ、冷たい視線で見下ろします。

 ――そう。
 そこにいたのは、ラピスでした。

 まったく……、
 昨夜の添い寝シフトを私だったのに……、

 ラピスは、私達が寝ている布団の中に潜り込み、アキトさんに抱き着いていたのです。

 いえ、私は別に、その事に怒っているわけではありませんよ。

 そして、アキトさんも、
それに驚いたわけではないでしょう。

 一緒に寝る、なんて、今更な事ですから……、

 では、私と怒りと、アキトさんの驚愕の原因は、一体何なのか?
 それは……、

「ラピスッ! すぐに起きなさいっ!」(怒)

「ふぁ……おはよう」

「おはよう、じゃありませんっ!
あなた、どうして
服を着ていないんですかっ!?

 眠い目を擦りながら、あらわになっている体を、
隠そうともせずに起き上がるラピスを前に、私の怒声が、家中に響き渡ります。

 そうなのですっ! 
 なんと、ラピスは素っ裸で寝ていたのです。

 しかも、そんな姿のまま、アキトさんに抱き着いて……、

 
ああっ! なんて羨ましいっ!
 
正妻であるこの私でさえ、そんな事はまだしていないのにっ!

「ルリ……寒い」

 まだ寝ぼけているのか、
ラピスはそう言うと、私が持っている布団を引っ張りました。

 そして、それに包まると、再び夢の中へ……、

「寒いのなら、サッサと服を着なさいっ!」

 私はタンスからラピスの服を取り出すと、
もう一度、布団を奪い、服をラピスに投げ付けます。

 そして、渋々ながらも、ラピスが服を着始めたのを確認してから、
次は、未だ『あうあう』言っているアキトさんの方に向き直りました。

「アキトさんっ! アキトさんっ! しっかりしてくださいっ!」

 アキトさんの頬をぺちぺちと叩きながら、何度も呼び掛ける。
 しかし、アキトさんは、なかなかこちら側に戻って来てくれません。

 いえ、それどころか、
私が体を揺さぶると、アキトさんは、そのまま倒れてしまいました。

 どうやら、いくら相手がラピスとはいえ、寝起きでいきなり素っ裸の女の子を見る、というのは、
初心なアキトさんには、かなり刺激が強かったみたいですね。

 そういえば、以前、猫グッズを装着した私を見て、アッサリと気絶しちゃいましたし……、

 ふう……仕方ありません。
 アキトさんは、しばらくこのまま様子を見ましょう。

「さて……ラピス」

「……何?」

 服を着終わったラピスは、私の呼び掛けに素直に応じ、
私の正面にちょこんと座ると、私達が姉妹という証である金色の瞳を、こちらに向けました。

 そんなラピスに、まずは笑顔を向ける私。

「ラピス……まずは、おはようございます」

「おはよう、ルリ」

 ラピスはコクリと頷き、抑揚の少ない声で答えます。

 まったく、いつまで経っても、私を『お姉ちゃん』と呼びませんね。
 まあ、今更、そんなこと気にしませんが……、

 と、そんなことを思いつつ、私は話を本題へと移します。

「目は覚めましたか? それでは、一つ訊ねますが……」

「……?」

 そこで、一旦、言葉を区切る私に、ラピスはキョトンとした表情で首を傾げます。

 そんな顔をしていられるのは、今の内ですよ。
 返答次第では、お仕置きですからね。

「ラピス……」

「……なに?」

「どうして、アキトさんと寝るのに、わざわざ裸になっていたんですか?」

「……?」

 殊更に真剣に訊ねる私を前に、ラピスは相変わらずの無表情。
 そして、ちょっと考えた後……、

「パジャマに着替えるのが面倒くさかったから……」

「…………はあ〜」

 アッサリと答えたラピスの言葉に、私は深々と溜息をつきました。

 まあ、冷静に考えれば、頷ける話です。

 メグミさんじゃあるまいし、ラピスが私を出し抜いて、
アキトさんを誘惑するような真似をするわけがありませんからね。

 ラピスにとって、アキトさんは、
一人の男性である以前に、自分の半身みたいなものですし……、

 はあ……、
 何だか、すっかり毒気を抜かれてしまいました。

 ラピスは、色んな意味で……、
 良くも悪くも、純粋すぎます。

「ラピス、今回は大目に見ますけど、これからは、
裸で寝るなんてはしたない真似をしてはいけませんよ」

「……わかった」

「それじゃあ、朝御飯を作りますから、手伝ってくれますか?」

「……まだ眠い」

 そう言う、ラピスは、体をゆらゆらと揺らしながら、重い瞼と格闘しています。

 いつもなら、御飯と聞けば、すぐに目を覚ますのですが、
どうやら、まだまだ寝足りないようですね。

 まあ、まだ子供ですから、仕方無いでしょう。

「はいはい、それじゃあ、御飯が出来たら起こして上げますから、
それまで、もう少し寝ていて良いですよ」

「……うん」


 
――ぽふっ


 私の言葉に頷くと同時に、ラピスは布団にコテンと倒れ伏し、
そのままアキトさんに抱き着いて眠ってしまいました。

「まったくもう……」

 そんなラピスに苦笑しつつ、
私はラピスとアキトさんに布団を被せます。

 そして、気持ち良さそうに眠っているラピスの柔らかそうな頬を……、


 
ぷにぷに……


「う〜ん……」

「ふふふ……♪」

 私に頬を突つかれ、軽くむず痒そうに顔をしかめるラピス。
 でも、またすぐに、安らかな寝顔へと戻ります。

 何と言いますか……、
 この子の相手をしていると、姉というよりは母親になった気分です。

 となると、やっぱり父親はアキトさんでしょうか?
 うふふふ……♪

「ラピス、アキトさん……、
もうちょっとだけおやすみなさい♪」


 
――ちゅっ☆

 
――ちゅっ☆


 眠っている二人の額に、そっとキスをした後、、
私は朝御飯を作る為に、エプロンを身に付け、キッチンに向かいます。

 そして、朝御飯の準備をしつつ、私は――

 さて……、
 今日は朝御飯を食べたら、何をしましょうか?

 何と言っても、せっかくの定休日ですし、三人でデートをするのも悪くはありません。

 そういえば、ラピスの好きな映画は、まだ上映されていましたっけ?
 後でオモイカネに調べてもらいましょう。

 そして、その後は……、


 ……。

 …………。

 ………………。


 ――と、今日の予定を考えるのでした。








 うふふふふ……♪

 アキトさん、ラピス……、
 今日は、楽しい一日になりそうですね♪








<おわり>
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