競作企画
Leaf Quest
〜 導かれし妻達 〜
古代都市バルメア―― この街にある盗賊ギルドに、 一人の腕利きのエージェントが所属していた。 その名を『那須 宗一』―― NASTYBOYと呼ばれ、 自他共に認める世界ナイバー1の盗賊である。 そんな彼の元に、一つの依頼が来た。 依頼主は、トゥスクル皇ハクオロ……、 その内容は、失われた古代遺産の探索であった。 かつて、ヤマタノオロチを封印したとされる、二振りの剣……、 宝剣ユアサ―― 魔剣クサナギ―― 『暁の光を宿すモノ、漆黒の闇を貪るモノ―― 共に手を取り、閃光となり、我に一筋の矢を与えん――』 伝説の一文にもある、 この二振りの剣を、探し出して欲しい、というわけだ。 その依頼を受ける事にした宗一は、 相棒である『リサ=ヴィクセン』とエディと共に、探索を開始する。 まず、訊ねたのは、 同じギルドに所属する『湯浅 皐月』の家―― 『ユアサ』という名前が共通している事から、何か情報を得られるかも、と考えたのだ。 しかし、彼女と同居している、 『伏見 ゆかり』から、皐月は、留守にしていると教えられた。 訊けば、皐月の実家から、家宝の剣が盗まれ、彼女は、その行方を追ったらしい。 それを聞き、宗一とリサは、 皐月の足取りを追い、タイプムーンへ……、 そこで、黒すぐめと連中と闘う皐月と、 その闘いに巻き込まれた祐介達を発見し、彼女達を救出する。 聞けば、皐月は、既に、単独で、家宝の剣を取り戻していた。 そして、案の定、皐月が持つ剣は、宝剣『ユアサ』であった。 思いの外、アッサリと目標の一つが手に入り、 少々、拍子抜けしつつも、宗一達は、祐介達と別れ、パルメアへと戻る。 そんな彼らに、良いニュースと悪いニュースが飛び込んできた。 まず、良いニュースの方だが、 エディとゆかりの活躍によって、魔剣クサナギの所在が判明したこと―― そして、悪いニュースだが……、 なんと、宗一と共に暮らす、『立田 七海』が、 何者かに誘拐されたと、運良く助かった、宗一の姉『梶原 夕菜』から告げられた。 冷静さを失い、取り乱す宗一に、リサは二手に分かれる事を提案する。 感情的になっている宗一と皐月を、マジアンの闇の競売場に―― そして、リサとエディが、攫われた七海を救出に―― 半ば強引に、チーム編成をして、ミッションを開始する。 ・ ・ ・ 時を同じくして―― 大陸西部にある知識都市コミパ―― ここでも、一つの事件が起こっていた。 『立川 郁美』をリーダーとする、 コミパ自警団のメンバーが、何者かに攫われたのだ。 誘拐されたのは、『千堂 和樹』と『大庭 詠美』……、 二人を救い出す為、自警団は、調査に乗り出す。 そして、大志の独自の情報網から、 二人を攫ったのは、『篁(タカムラ)』という男に属する者だと判明した。 由宇・彩・すばるの三人は、 別件で不在の為、救出メンバーは、瑞希・南・玲子・千紗・大志の五人―― もちろん、郁美も参加しようとしたが、 心臓を患う彼女に、戦闘が出来るわけがない。 さらには、予定していた手術の日が迫っていた為、 皆で説得され、郁美は、雄蔵に連れられ、カノン王国へと向かった。 そして、瑞希達もまた……、 仲間を救う為、パルメアへと向かう。 ・ ・ ・ 場所は変わって―― ここは、商業都市マジアン―― 魔剣クサナギを、確保する為、宗一達は、闇の競売場へと向かう。 だが、時既に遅く……、 クサナギは、篁に競り落とされた後だった。 まるで何かとり憑かれたように、 遺産武器を買い漁る篁の名は、宗一達も耳にしていた。 その事に、何やら、嫌な予感を覚え、宗一達は、慌てて、パルメアへと取って返す。 一方、リサ達は、七海を攫った、 黒ずくめの連中のアジトを突き止め、そこに潜入をしていた。 だが、突然、現れた『醍醐(だいご)』によって阻まれてしまう。 対峙する、リサと醍醐……、 本来、実力なら、リサが上なのだが、 どういうわけか、リサの攻撃は、全く醍醐に通用していない。 その秘密は、醍醐が持つ装備にあった。 武器による攻撃と、魔術による攻撃を無効化する概念武装―― その名を―― 『ラストリゾート』―― あらゆる攻撃を無効化され、危機に陥るリサ……、 だが、和樹達を求めて現れた、 コミパ自警団の協力により、からくも、醍醐の撃退に成功する。 自警団とはいえ……、 その侮れない戦闘能力……、 その能力に目を付けたリサは、正式に彼らを雇い、救出チームのメンバーに加える。 そして、再び……、 七海に救出の為、リサ達は、敵の本拠地に乗り込む。 場所は、篁の海上基地『高天原(たかまがはら)』―― 作戦は、いわゆる両翼作戦……、 即ち、リサとコミパ自警団による同時潜入……、 どちから一方が、醍醐を引き付け、その隙に、和樹達を助けよう、というわけだ。 だが、その作戦は、完全に篁に読まれていた。 リサの前に立ちはだかる篁と醍醐―― 完成した概念武装の力に、 成す術も無く、リサは傷を負っていく。 そこへ、愛天馬『ミルト』に乗って駆け付けたのは、宗一と皐月。 さらには、コミパ自警団に……、 独自に脱出を試みていた和樹と詠美……、 脱出の途中で手に入れたのだろう……、 二人の手には、『虚構を描く幻想の槍』と『神のGペン』があった。 卓越した描写力と表現力を持つ者にしか扱えない武器―― そして、その武器の模倣品であるGペン―― 篁は、その武器と、和樹達の才能を、利用しようとしていたのだ。 リサや和樹達に、七海救出を任せ、宗一が、篁達の前に立つ。 彼の手には、宝剣ユアサ……、 その剣で、遅い掛かる醍醐を一刀両断にする。 概念武装と言えど、所詮は魔術だ。 それを上回る力の前には、無いも同然であった。 残る敵は、篁のみ……、 魔剣クサナギを手に、篁は宗一に語る。 自分は、ガディム軍に属する者だと―― ラストリゾートは、ギースに与えられた力だと―― 自分こそが、ヤマタノオロチの意志そのものである、と―― そして―― 那須 宗一は―― かつて、ヤヤマタノオロチを倒したスサノオの生まれ変わりである、と―― 思わぬ真実を突き付けられ、驚愕する宗一。 そんな彼に、積年の恨み、とばかりに、篁が魔剣で斬り掛かる。 交錯する、二振りの剣―― その闘いの軍配は、宗一に上がった。 無事、七海を救出し、クサナギを手に入れた、 宗一達は、二つの剣を持ち、船に乗り、トゥスクルへと向かう。 ――だが、一足遅かった。 既に、ギースによって、 ヤマタノオロチは復活してしまっていたのだ。 篁という意志を失い、 ヤマタノオロチの肉体は、狂ったように暴れ回る。 先のヤマタノオロチとの闘いによる、 光の精霊王ハクオロの傷は、未だ、癒えておらず……、 その力を使う事も出来ず、 ハクオロとトゥスクル軍の力は、ヤマタノオロチには、まるで通用しない。 最早、かの敵を倒す方法は、ただ一つ―― 宗一が持つ―― 二振りの剣のみ―― こんな二本の剣だけで、どうやって、 アレと闘えば良いのか分からず、宗一は歯噛みする。 だが、その時……、 宗一は、幼き頃に、夕菜が話して聞かせてくれた御伽噺を思い出した。 『暁の光を宿すモノ、漆黒の闇を貪るモノ―― 共に手を取り、閃光となり、我に一筋の矢を与えん――』 暁の光を宿すモノとは、宝剣ユアサ―― 漆黒の闇を貪るモノとは、魔剣クサナギ―― それを、共に手に取る、という事は―― その言葉の意味に気付き、宗一は、二本の剣を構える。 そして、英雄の武具が完成する。 その名を―― 『根源に至る破邪の弓(シャドウルーツ)』―― しかし、それを見てもなお、嘲笑うかのように、ギースは言う。 ヤマタノオロチは、ウタワレ大陸の地脈……、 即ち、ウタワレ大陸の命そのもの……、 ヤマタノオロチを倒す、という事は、 ウタワレ大陸が死の大地になる、という事だと……、 だが、それに対して、宗一は、無言で弓を引いて応えた。 その手には、光り輝く黄金の矢―― 七海の身に宿っていた―― たった一度きりの―― 世界の生成と消滅を司る力―― ――『アマノヌホコ』。 その矢を以って、宗一は、 ヤマタノオロチを倒し、ウタワレの大地へと還す。 こうして……、 一つの物語は幕を閉じ……、 ……また一人、ここに英雄は誕生した。 <END> |