「パクパク、モグモグ……」(コクコク)
「全く、セイバーったら……、
相変わらず、よく食べるわねぇ〜……」
「まあ、あいつ程じゃないけどな〜」
「――それって、マコトのこと?」
「バクバク……」(コクコク)
「マコト、ですか……、
今頃、何をしているんでしょうね?」
「……温泉都市に行く、と言っていましたわよね?」
「ルヴィア……何で、あんたが、ここにいるのよ?」
「もちろん、シェロの料理を頂きに来たのですわ」
「モグモグ……」(コクコク)
「そ、それはともかく、誠だが……」
「案外、タカヤマの温泉宿で、
バッタリと、恋人と出くわしてたりして」
「……ふむ」(ごっくん)
「羨ましいですね〜……、
恋人と一緒に、のんびりと温泉なんて……」
「ははは、今度、みんなで行ってみるか?」
「マコトの恋人というと……、
確か、彼の家で働くメイドと聞いていますが……」
「「「「「「――なんですと?」」」」」」
「はい……?」
Leaf Quest
〜剣と鞘と弓と呪われし聖杯〜
『完璧な騎士の条件』
セイバー(アルトリア=ペンドラゴン) の場合――
「…………」(じ〜)
「何ですか、マコト……、
人の顔を、ジッと見るのは、あまり良い事ではない」
「あっ、すみません……」
「どうしたのです……、
少し、弛んでいるのではないですか?」
「いや、何でも無いんです……、
ただ、セイバーさんの髪を見てたら、フランの事を思い出しちゃって……」
「――フラン?」
「ウチで働いてくれてるメイドです。
彼女の髪も、セイバーさんみたいに、綺麗なんですよ」
「そうですか……、
もしや、彼女は貴方の……?」
「あっ、それは、その……」(ポッ☆)
「そんなに恥ずかしがる事はないでしょう。
貴方が、堂々としていなければ、彼女に対して失礼だ」
「は、はははは……」(汗)
・
・
・
遠坂 凛 の場合――
「はあ〜、まったく……、
あんたって、とことん魔術の才能無いのね」
「そんな、しみじみ言わなくても……」
「どうして、あんたの師匠は、
魔術剣じゃなくて、魔法剣だなんて言ったのかしら?」
「それは、エリアも、首を傾げてたけど……」
「――エリア? 誰、それ?」
「え、え〜っと……幼馴染の魔術師で……」
「……恋人?」(ニヤリ)
「は、はい……」
「ふ〜ん、そっか〜……、
その辺のトコ、詳しく聞かせて貰っちゃおうかしら〜」
「あうあうあう……あかいあくま、降臨」(泣)
・
・
・
間桐 桜 の場合――
「あの、藤井さん……」
「何か用か、間桐さん?」
「用という訳ではないんですけど……、
どうして、私だけ、苗字で呼ぶんですか?」
「園村 さくら、っていう……、
間桐さんと同じ名前の子が、知り合いにいてさ……」
「……どんな人なんですか?」
「故郷にある城のお姫様なんだけど……」
「お、お姫様ですか!?
藤井さんとは、恋仲だったりするんですか?!」
「まあ、その……うん」(ポッ☆)
「ロマンチックですね〜……
冒険者とお姫様の許されぬ恋、ですか」(うっとり)
「……親公認なんだけどね」(汗)
・
・
・
イリヤスフィール=フォン=アインツベルン の場合――
「あのさ、イリヤちゃん……」
「ん〜? な〜に、マコト?」
「イリヤちゃんって……、
士郎さんとは、兄妹なんだよな?」
「正確には、姉弟だけどね……」
「でも、血は繋がってないんだよな?」
「うふふ、そうよ……、
だから、シロウのお嫁さんにだってなれるんだから♪」
「ははは、そうだな……」(汗)
「……それが、どうかしたの?」
「俺にも、義理の妹がいるんだ。
だから、俺と士郎さんって、やっぱり、似てるな〜、ってさ」
「ふ〜ん……その子とは、イイ関係なわけ?」
「……な、何で、そんな事を?」
「だって、もし、そうなら……、
私にも、まだ、勝ち目があるって事になるでしょ?」
「そういうものか?」
「――ええ、もちろん♪
あと三年もすれば、セイバー達に勝つ自身あるし〜♪」
「ま、まあ、頑張れ……」(汗)
・
・
・
「…………」(汗)
「…………」(汗)
「…………」(汗)
彼女達の話を聞き終え――
あまりに驚愕の内容に、
俺達は、食事を摂るのも忘れ、言葉を失ってしまった。
遠坂も、桜も、イリヤも、ライダーも、ルヴィアも……、
あのセイバーですら、箸を止めて、固まってしまっている。
それだけでも、今の話の内容が、
いかに、衝撃的であったかを物語っていた。
「……マジ?」
「なんてこと……」
最初に、沈黙を破ったのは遠坂とルヴィアだ。
信じられない、と言った表情で、
わざわざ指折り数えながら、今の話を思い返している。
見れば、ルヴィアさんも同様だ。
難しい表情を浮かべ、
眉間に寄った皺を揉み解している。
「四人、ですか……、
顔に似合わず、なかなかやりますね」
次に、言葉を発したのはライダー。
彼女は、比較的、落ち着いているようだ。
魔眼殺しの眼鏡の位置を直すと、何事も無かったように食事を再開する。
「藤井さん、意外にワイルド……」(ポッ☆)
「……まるで、キリツグね」
続いて、桜とイリヤが我に返った。
何を考えたのか、桜は、顔を真っ赤にし……、
イリヤは、何故か、親父の名を出し、呆れたように呟く。
おい、親父……、
あんた、生前は、一体、何をしていたんだ?
まさかとは思うが……、
あんたの教えは……、
『女の子には優しく』って教えは、そういう事なのか?
なんか、イイ表情で、
親指立ててる親父の姿が、空の向こうに見えるんですけど……、
親父が目指した『正義の味方』って、一体……、
……。
…………。
………………。
まあ、それはともかく――
誠の、意外な正体を知り、
それぞれが、六者六様の反応を見せる女性陣……、
もちろん、俺も、かなり驚いている。
なにせ……、
皆の話を信じるならば……、
誠の恋人は……、
幼馴染の魔術師――
とあるお城のお姫様――
藤井家に仕えるメイド――
血の繋がない義理の妹――
すなわち……、
四人もいる、という事になるのだから。
そんなトンデモナイ話を聞いて、
驚かない奴が、この世にいるわけがない。
そして――
俺達の中で――
特に衝撃を受けているのは――
「…………」(怒)
――間違い無く、セイバーであろう。
誠が、この街に滞在している間、
セイバーは、ずっと、彼の剣の手解きをしていた。
いわば、誠は、セイバーの弟子……、
そして、セイバーは、誠の剣の師匠であったのだ。
セイバー自身も、そのつもりだったのだろう。
出来の悪い弟子ほど可愛い、と言ったところか――
剣の才能は皆無だった誠……、
にも関わらず、セイバーは、
本当に、熱心に、誠に、剣を教えていたのだ。
それに……、
食事という、共通の趣味も持ってたし……、
その愛弟子が……、
まさか……、
複数の女性に手を出していようとは……、
・
・
・
「――完 璧 の 騎 士(」(ボソッ)
「え……?」
拳をプルプルと震わせ――
何やら呟いたセイバーに、俺は首を傾げる。
俯いている為、その表情が見えないが、
震える肩は、間違い無く、強い怒りを表していた。
「お、落ち着け、セイバー……」
「心配無用……、
私は、充分に落ち着いています」
「そ、そうか……」
恐る恐る、声を掛ける俺に、
セイバーは、それはもう、怖いくらい穏やかな笑みで応える。
そして……、
湯呑のお茶を、一気に飲み干すと……、
真っ直ぐに、俺の顔を見つめ……、
「フジイ マコト……、
彼は、きっと、立派な騎士になるでしょう」
「それは同感だが……、
なんで、そんな吐き捨てるように言うんだ?」
「――シロウ!」
「は、はいっ!!」
「貴方とマコトは、良く似ている……、
故に、決して、彼のようにはならぬよう心掛けてください」
「りょ、了解……」(汗)
・
・
・
凛 「――無理ね」
桜 「そうですよね……」
イリヤ 「……もう手遅れよ」
ライダー 「士郎ですから……」
ルヴィア 「やれやれ、ですわ……」
あの〜、皆さん……、
なんか、物凄く、
貶されてるような気がするんですけど……、(泣)
<おわり>
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