「――大丈夫ですか?!」

「あ、あたしは平気……でも、けんたろが……っ!」

「――クッ! 酷いな……、
俺の回復魔術じゃ、追いつかないかも……」

「あたしも、さっきからやってるんだけど……」

「キミ、魔術師……?
って、今は、そんな事より、この人の手当てを……っ!」

「血が、血が止まらないよ!
けんたろ! しっかりしてよ、けんたろ!」

「ダメだ……魔術だけじゃ――そうだっ!!」

「なにっ? 方法があるのっ!?」





「エリクサーがあった……、
これを、この人に飲ませれば――」

「――貸してっ!!」






Leaf Quest
〜五月雨堂の健太郎〜

『勇者、誕生! 後編』







「あいつ、一体、何者なんです……?」

「俺にも、分からない……、
いきなり、襲い掛かって来たんだ……」





 黒騎士との戦闘を、浩之に任せ――

 俺は、怪我を負った商人……、
 『宮田 健太郎』さんの元へと向かった。

 どうやら、連れの少女……、
 スフィーさんは、魔術師だったらしく……、

 彼女の回復魔術で、健太郎さんは、
一命を取り留めていたが、正直なところ、かなり危険な状況だった。

 傷の大きさ、出血の量もあるが……、
 黒騎士の剣には、性質の悪い呪いでも掛かっていたのか……、

 魔術の力を以ってしても、一向に、傷が塞がらないのだ。

 もちろん、俺も、治療に加わった。
 回復魔術は、あまり得意ではないが、何もしないよりはマシである。

 しかし、俺とスフィーさんの努力は無駄でしかなかった。

 二人掛かりで、治癒しても、
呪いの力の方が、圧倒的に強かったのだ。

 これを治癒しようとするなら、一流の治癒術師でなければ無理だろう。

 ――くそっ!
 こんな時に、あかねか芳晴さんが居れば……っ!!

 治癒を続けながら、俺は歯噛みする。

 徐々に、血の気を失っていく健太郎さん――
 そんな彼を、泣きじゃくりながら呼び続けるスフィーさん――

 何か……、
 何か、方法は無いのか?

 何でも良い……何か――

 焦るあまり、考えが纏まらず、
俺は、自分の道具袋の中を引っ掻き回す。
 
 そして――



「――これだっ!!」



 以前、母さんから貰った物……、

 いざという時の為に、と、
母さんが、俺に買い与えてくれた霊薬……、

 ――なんてこった!
 これがあった事を、すっかり忘れてた!

「スフィーさん、これを――」

「――貸して!!」

 俺が取り出したエリクサーを、
スフィーさんが、物凄い速さで引っ手繰る。

 そして――
 その薬を、自分の口に含むと――





 いや、まさか……、

 この切迫した状況で……、
 口移しで、薬を飲ませるとは思いませんでした。





 とまあ、そういうわけで――

 薬の効果で、呪いは解かれ、
健太郎さんは、何とか意識を取り戻した。

 で、彼の治療を続けながら、その合間に、事情を訊いていたのだが……、

「――分からない?」

「奴が何者かは分からない……、
襲われる理由には、心当たりはあるけど……」

 冒頭での、健太郎さんの言葉に、俺は訝しげに彼を見た。

 すると、健太郎さんは、
何やら、意味有りげに、荷物を積んだ荷車に視線を向ける。

 なるほど……、
 この人達の持っている『何か』が目的、って事か……、

 でも、ただの物盗りってわけでもなさそうだし……、

「――まあ、詳しい話は後からだな」

 頭に浮かぶ疑問は振り払いつつ、俺は、回復魔術を止める。

 そして、素早く立ち上がると、
地面に刺していた剣を引き抜き、戦場に目を向けた。

 見れば、劣勢ながらも、
浩之は、黒騎士を、何とか食い止めている。

 剣の技量は互角――
 力は、やや浩之が上――

 だが、黒騎士が持つ魔力と、装備の違いが、浩之に苦戦を強いていた。

 戦況を分析しつつ、
俺は、あの危うい均衡を崩す方法を考える。

 正直、俺が参戦しても、逆に浩之の邪魔になるだけだろう。

 魔法剣を使えば、牽制くらいにはなると思うが……、

 生憎、今、剣に付与されているのは水属性だ。
 先程の戦闘から考えて、黒騎士の全身鎧とは、相性は悪すぎる。

 せめて、これが雷属性だったら……、

「――って、待てよ」

 俺は、ふと、ある事を思い付き、
健太郎さんの治療を続ける、スフィーさんに視線を向けた。

 そして――



「あのさ……スフィーさんって、何属性?」










「クッ……ううっ……ぐあっ!」

 もう何度目になるだろうか……、

 黒騎士の容赦無い攻撃を、
浩之が、ミスリルソードで受け止める。

 剣と剣が、激しくぶつかり合い――

 その度に、火花が散り――
 無残にも、浩之の剣を削っていく――

 浩之の剣は、魔力によって強化された剣……、
 しかも、古代魔法王国グエンディーナ製の高品質の魔力剣だ。

 それを、黒騎士の一撃は、いとも簡単に傷付けていく。

 いや……、
 傷付いているのは、剣だけじゃない。

 浩之の体もまた、黒騎士の攻撃によって、
致命傷とまではいかないものの、幾つも傷を負わされていた。

 黒騎士の、鋭く、重い一撃――

 その剣撃を、浩之を徐々に後退しつつも、受け止め続ける。

 もちろん、防御してばかりではない。
 わずかな隙を見つけては、浩之は、黒騎士に攻撃を加えていた。

 しかし、黒騎士にはダメージを与えられない。

 それどころか、奴は、攻撃が効かないのを良い事に、
わざと隙を見せて、浩之に攻撃をさせているようにも見える。

 すぐにでも、勝負はつけられる筈なのに……、
 ジワジワと、いたぶるように、浩之から、闘う術を奪っていく。

 つまり――
 浩之は、完全に――

 ――黒騎士に遊ばれていた。



「――ふんっ!」

「おおおおおおっ!!」



 黒騎士が振るう剣を、またしても、浩之が受け止める。

 だが、この打ち合いでは、
互いの剣は弾かれず、鍔迫り合いへと持ち込まれた。

 純粋な力の勝負では、浩之が有利――

 しかし、黒騎士には、
装備している全身鎧の重量がある分、二人の力比べは均衡する。

 いや……、
 剣を振り下ろす姿勢である分、黒騎士に僅かに分が……、

「ぐっ……ううう……」

「――ふっ」

 黒騎士の剣圧に押され、膝をつく浩之。

 そんな浩之の姿を前に、
黒騎士の兜の奥から、浩之を嘲笑する声が聞こえる。

 おいおい――
 随分と、余裕こいてるみたいだが――

 忘れるなよ――



「どけっ、浩之――!!」



 ――お前の相手は、浩之だけじゃないんだぜっ!

「……っ!!」

 俺の声に反応し、浩之は、
転がるように、黒騎士から離れる。

 突然、浩之がいなくなり、勢い余って、黒騎士の剣が、地面にめり込んだ。

 そのせいで、黒騎士の動きが、一瞬、止まる。

 俺は――
 その瞬間を待っていた――!!

「アクア――」

 再び、剣に魔力を込め、解放する。

 剣に宿るは水属性……、
 しかし、今度のイメージは……、

 先程の圧縮弾ではなく、奔流……、

「――ブレイドォォォォーーーーッ!!」

 俺の突き出した剣の切っ先から、
激しい水流が巻き起り、それは、黒騎士に直撃した。

 しかし、その攻撃は、黒騎士には、まるで通用していない。

「ほう、やはり、魔法剣か……、
それに、我が剣を弾き飛ばした、先程の無属性魔術……、
なかなか、珍しい素質だ……もしや、この男が……?」

 余裕を見せているつもりか……、
 水流を全身に浴びながら、何やらブツブツと呟いている。

 それに構わず、俺は攻撃を続けた。

 限界まで、魔力を絞り……、
 俺は、水流の威力を上げ、を放ち続ける。

 だが、黒騎士には、全く効果は無く……、

 ただ……、
 奴の全身を濡らすのみ……、

「無駄だ……この程度の攻撃、我には通じぬ」

 俺の攻撃を避けようともせず、黒騎士が言う。

 うるさい……、
 そんな事は、百も承知……、

 本命は、次の一手――っ!!



「いけっ、スフィーさんっ!!」

「――お任せっ!」



 合図とともに、俺の背後から、スフィーさんが飛び出す。

 既に、呪文は詠唱済み――
 そのスフィーさんが、水流に手を突っ込み――

「まじかるサンダァァァァーーーーーッ!!」

 ――全魔力を、一気に解放した。

「おおおおおおーーーーっ!!」

 俺が生み出す水流を伝わり、
凄まじい電撃が、黒騎士の全身を襲う。

 ――そう。
 これが、俺達の狙いだったのだ。

 俺の水属性の魔法剣では、決定打にならない。

 だったら、それを利用して、
別の攻撃が出来ないか、と考え、スフィーさんの属性を訊ねたのだ。

 すると、スフィーさんの属性は『雷』だという。

 ならば、好都合……、
 水は電撃を通す、という性質を利用して、この作戦を実行したのだ。

「ぐおお……この程度で……!!」

 スフィーさんの全力の電撃魔術を浴び、黒騎士が苦しげな声を上げる。

 だが、それでも、決定打には至らないようだ。
 黒騎士は、剣を一閃し、俺が放つ水流を断ち斬り、こちらを向き直る。

 だからさ……、
 忘れるなっての……、

 お前の相手は――



「そこだぁぁぁぁぁーーーっ!!」

「ぐうっ……!?」



 ――俺達だけじゃないんだよ。

「くらいやがれぇぇぇーーーーーっ!!」

 奴の意識が、俺達の方に向き、
完全に、浩之への警戒が疎かになった。

 その隙を突き、浩之が肉薄する。
 それに対し、慌てて、剣を振り上げる黒騎士。

 だが、俺は、それすらも許さない。

 奴が剣を振るう為――
 一歩踏み出す、その瞬間――

 俺は、奴の出足が踏むべき地面に、攻撃魔術を叩き込んだ。

 小さな爆発が起こり、地面が抉れる。
 あるべき足場を失い、黒騎士のバランスが崩れる。

 地味だが、その効果は絶大――
 最早、黒騎士に、浩之の攻撃を防ぐ術は――無いっ!

「いけぇぇーーーっ! 浩之ぃぃぃーーーっ!!」

「うおおおおおーーーーーっ!!」

 そして、二人の体は交差し……、

 浩之の剣は……、
 黒騎士の胴部を、横一文字に切り裂き――なにっ!?



「ばっ……馬鹿な……」



 黒騎士を斬り裂いた筈の、浩之の剣――

 それが……、
 粉々に砕け散っていく……、

「今のは、なかなか良かったぞ……」

 そう言って、呆然としている浩之に歩み寄る黒騎士。

 その拳は、禍々しい黒い魔力に覆われて……、

 そうか……、
 あれで、咄嗟に、浩之の剣を殴り砕いたのか……、

「――くっ!」

 近付いてきた黒騎士に、
浩之は、柄だけとなった剣を捨て、拳を構える。

 無茶だ、浩之っ!
 素手でやり合おうなんて――っ!

 俺は、浩之を助けるため、慌てて駆け出す。

 だが、俺が辿り着くよりも早く……、

「――がはっ!」

 黒騎士の拳が……、
 浩之の腹部にメリ込んでいた。

 浩之の体が『く』の字に折れ曲がり、口から大量の血が吐き出される。

「浩之ぃぃぃぃーーーーっ!!」

 黒騎士が、拳を浩之にメリ込ませたまま、腕を振り抜いた。

 その勢いで、浩之の体は縦に回転しながら、フッ飛ぶ。

 そして、健太郎さんの荷車に激突し……、

 ピクリとも……、
 浩之は……動かなく……、

「あ……ああ……」

 その光景を前に、俺は呆然と立ち尽くす。

 一体、何が起こった……?

 おい、浩之……、
 なんで、動かないんだ……?

 おかしい……、
 こんなの変だ……、

 ……浩之が、負けた?

 浩之が――



「ああああああああーーーーーーっ!!」



 俺は咆えた……、
 喉が張り裂けんばかりに、咆えた。

 我を失い、滅茶苦茶に、攻撃魔術を放つ。

 黒騎士の全身に、爆発が花開くが、
奴は、それに構うことなく、俺に迫ってきた。

「誉めてやろう……お前達は、良く頑張った」

 目前まで迫った黒騎士の剣が一閃する。

 俺は、それを受け止めようと、剣を構えたが……、

「うわっ……」

 それまで、散々、酷使してきた剣は、
黒騎士のその一撃で、アッサリと砕かれてしまう。

 そして――
 返す刀で、暗黒の剣が――



「あっ――」



 ――俺の体を、袈裟懸けに斬り裂いた。



「あ……う……ああ……」

 鎖骨から脇腹へ――
 間違い無く、致命傷――

 そこから、勢い良く血が噴出し、俺は仰向けに倒れた。

 何故か、痛みは無い……、
 馬鹿みたいに、意識はハッキリしている。

 血を失い、自分の体が、徐々に冷たくなっていくのが……、
 自分が、死んでいくのが分かるくらいに……、

 奴に斬られる瞬間……、
 咄嗟に、一歩、後退していた。

 あと、スフィーさんが、防御魔術を展開してくれたらしい。

 それが、即死を免れた理由……、

 でも、このままでは、それも長くは保たないだろう。

 ――ダメだ。
 まだ、死ねない。

 俺は、まだ、死ぬわけにはいかない。

 約束してるんだ……、
 仕事に出掛ける前は、いつも、さくら達と約束してるんだ。

 ――必ず帰る、って。

 その約束を……破るわけにはいかないっ!

「うっ、ううう……」

「ほう、まだ息があるか……、
さすがは、人間……呆れる程に生き汚いな」

 俺は、僅かに残る魔力で、自身の傷を癒す。

 そんな俺を、剣を逆手に持ち、
高々と振り上げた、黒騎士が見下ろしていた。

 ――トドメを、刺すつもりか。

 黒騎士の意図を悟り、俺は、
力を振り絞って、剣から逃れようと後ずさる。

 しかし、黒騎士は、俺を逃がすまいと、俺の傷口を踏みつけた。

 構えた剣の行き先は、俺の頭……、

 ゴメン、みんな……、
 俺、約束を守れそうにないよ……、

「――まことっ!!」

「やめろぉぉぉーーーっ!!」

 スフィーさんが電撃を放ち……、
 傷の癒えた健太郎さんが、黒騎士に斬り掛かる。

 だが、奴は、拳の一振りで、二人を黙らせると――

 何の躊躇も無く――
 俺の頭に剣を突き立て――



「な……に――っ!?」



 ――られる事は無かった。

 黒騎士は、剣を振り上げたまま、ある一点を凝視していた。

 その視線の先には……、
 砕け散った荷車の山……、

 いや、違う……、
 そこに、ゆらりと立ち上がった、浩之の姿……、

 そして……、
 その手には……、





 黄金に輝く、一振りの剣が――





「まさか……抜いたのかっ!?」

「ひろゆきが――」

「――聖剣の勇者?」

 黒騎士が驚愕の声を上げ……、
 健太郎さんとスフィーさんが、呆然と、その姿を見つめる。

 そんな中……、

 両手で黄金の剣を持ち、
ダラリと垂れ下がったままだった、浩之の腕が、ゆっくりと持ち上がり……、

 ……天に届け、とばかりに、剣が高く振り上げられる。

 その瞬間――

「させるかぁぁぁぁーーーーっ!!」

 死に体の俺を無視して、
黒騎士が、浩之に向かって、一直線に駆けた。

 同時に、黄金の剣から発した、強烈な光の柱が……、

 いや……、
 巨大な光の刃が、天を貫く。

 そして――
 虚ろな目をしたまま、浩之が、ポツリと呟き――





世界を担うブランニュー――


 真っ直ぐに――
 黒騎士に向かって――


                ――勇者の聖剣ハート





 ――光の刃が、振り下ろされた。










 その後……、
 どうなったのかは、俺は知らない。

 出血のショックで、意識を失ってしまったからだ。

 気が付けば、自宅のベッドで寝ていて……、
 さくら達や母さんに、それはもう、ムチャクャ怒られた。

 ――で、それからは、キスの嵐だった。

 どうやら、あかねの回復魔術と、
母さんが、何処からか持ってきた薬のおかげで、何とか助かったらしい。

 エリクサーよりも効く薬……、
 その出所を、母さんに訊ねたが、詳しくは教えてくれなかった。

 ただ、水の精霊王に感謝しろ、とだけ……、

 まあ、それはともかく――

 健太郎さん達が言うには、
あの後、浩之の一撃で、黒騎士は撃退できたらしい。

 と言っても……、
 倒したわけではなく、撤退させただけ……、

 で、俺が眠っている間に、健太郎さん達は、浩之に、全ての事情を語った、とのこと。

 あの黄金の剣のこと――
 ガディムのこと――

 そして、『勇者』のこと――

 それを聞き終え、浩之は、一人で旅立った。

 もっと強くなる為に……、
 共に、破壊神と闘う仲間を探す為に……、

「――くそっ!」

 床上で、療養中の俺は、それを聞き、歯噛みする。

 悔しかった……、
 腹が立った……、

 浩之に置いて行かれた事が……、

 そして……、
 浩之と共に闘えない、自分の不甲斐無さが……、

 苛立ち紛れに、ヤケ食いとばかりに、ベッド脇に置かれたリンゴを丸齧りする。

 そんな俺の様子に、
健太郎さんは、苦笑を浮かべつつ……、

「最後に、浩之君から伝言だ」

「…………」

「――『あとは頼む』と」

「そう……ですか」

 たった一言の、俺への伝言……、

 それに込められた意味を、
噛み締めながら、俺は、リンゴの最後の欠片を口に放り込む。

 そして、あかねに頼み、便箋とペンを持って来て貰うと――

「健太郎さん達は……、
これから、どうするんです?」

 ――紙の上に、ペンを走らせながら、訊ねた。

「う〜ん、どうすると言われても……、
取り合えず、当初の目的は、達成したわけだしな……」

「もし良かったら……、
これを、俺の友達に届けて貰いたいんですけど……」

 そう言って、数通の手紙を、健太郎さんに渡す。

 以前、俺が世界を旅して回った時に、知り合った友人達に宛てた手紙――

 浩之に出会ったなら――
 力を貸してやって欲しいという願いを込めて――

「わかった……それで、お前は、どうする?」

「俺は、この街を、この島を守ります。
あいつが帰って来る場所を……ガディムから守ります」

 ――『あとは任せた』と、浩之は言った。

 そして、この街に、恋人である、
あかりさんを残し、たった一人で旅立った。

 ――そう。
 俺は、浩之から任されたのだ。

 この街を守る役目を……、

 そうだ……、
 浩之は、いつも、俺に言ってくれていたじゃないか。

 お前は、最高の相棒だ、と――

 ならば……、
 その期待に応えなければならない。

 親友として――
 相棒として――

 浩之が、安心して、闘えるように――

「守ってみせるさ……、
あいつが帰って来るまで……絶対に……」

 決意を込めて、呟き……、
 俺は、窓の外に広がる空を見上げる。

 今頃は、船の上だろうか……、
 それとも、もう、大陸に渡っているのだろうか……、

 ……まあ、何にしても、心配する必要は無いな。

 何と言っても……、
 あいつは、聖剣の勇者なのだから……、

 安心しろ、浩之……、
 この街は、俺が守って見せる。

 だから、迷わず、前に進め。

 後ろなんか振り返るなよ。
 そんな暇があるなら、サッサと進みやがれ。

 そして……、





「必ず帰って来いよ、親友……」





<おわり>
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