競作企画
Leaf Quest
〜 導かれし妻達 〜
商業都市マジアン―― その街に住む『宮田 健太郎』は、 骨董品屋『五月雨堂』の店主であり、トレジャーハンターでもあった。 ある日のこと……、 店にお得意様の『高倉 みどり』がやって来た。 訊けば、古代遺跡の調査の依頼らしい。 マジアンの傍にある小さな遺跡……、 すでに発掘され尽くし、死んだ遺跡となった場所……、 何故、そんな場所に今更、と健太郎は訊ねる。 一冊の予言書を取り出すみどり。 どうやら、事の原因は、彼女が自宅の倉庫で見つけた、この本にあるようだ。 その内容とは……、 ガディムの復活―― 勇者の降臨―― そして、聖剣の出現―― 予言書によれば、その聖剣が、 今、件の遺跡に出現するのだ、という。 あまりにも荒唐無稽な内容である。 だが、みどりは、妙な胸騒ぎがする、とのこと……、 そんな彼女の願いを、無下に断るわけにもいかず、遺跡へと向かう健太郎。 死んだ遺跡であるが故……、 軽い気持ちで、健太郎は探索を始める。 その油断が、彼らしからぬミスを呼んだ。 突然、床が崩れ、 健太郎は、地下へと落ちてしまったのだ。 だが、これも運が良いと言うべきか……、 彼が落ちた先は、 今まで、発見される事のなかった場所であった。 目の前には、二柱の女神像。 健太郎が、それに触れると、突然、女神像が光り始める。 そして、気が付けば、健太郎は、全く違う場所に立っていた。 唐突な出来事に、呆然としつつ、建物の外にでる健太郎。 その瞬間……、 彼は自分の目を疑った。 「空中都市……本当にあったのか」 雲の中に、その身を隠し……、 巨大な木『仙命樹』と共に、天を漂う空中大陸……、 古代魔法王国『グエンディーナ』―― その城と、城下街―― あらゆる書物で、グエンディーナは、空に浮かぶ大陸にあると記されていた。 そして、今もなお、空中都市は、空を巡っているとも……、 だが、空中都市は、誰にも発見されず……、 いつしか、空中都市は、ただの御伽噺となっていた。 その場所に……、 今、健太郎は立っているのだ。 降って沸いた大発見に、興奮する健太郎。 その興奮を押さえつつ、彼は慎重に探索を再開する。 いつの間に住みついたのか……、 遺跡内をうろつく魔物を倒し、時にはやり過ごし……、 また、数多くの恐ろしい罠を突破しながら、戦利品を集めていく。 そして、城の隠し部屋にて……、 健太郎は、結界に守られた女性を発見した。 グエンディーナの第一王女―― スフィー=リム=アトワリア=クリエール―― 歴史書では、王女達は『時を止める結界』の中で眠りについた、とある……、 今、目の前で眠る彼女こそが、 眠り姫なのだと、健太郎は確信した。 なんとか、彼女を目覚めさせられないかと、調査を始める健太郎。 スフィーの祖父が使っていた剣が、結界の要になっていると、 見当をつけた健太郎は、迷わず、その剣を引き抜いた。 すると、次の瞬間……、 剣に込められたスフィーの祖父からのメッセージが伝えられる。 『この剣を抜く事が出来たのなら、そなたは心正しき者なのだろう。 どうか、我が愛孫達を守ってやってほしい。 そして、世界を担う勇者に聖剣を……』 メッセージが終わると同時に、結界が消滅する。 (この瞬間、地上のとある遺跡で、連動していたリアンの結界も解ける) そして……、 スフィーは、ゆっくりと目を開け……、 「――うしろっ!!」 彼女の声に、慌てて飛び退く健太郎。 見れば、そこには、見たことも無い巨大な魔物が……、 スフィーの祖父の剣―― 『失われし魔道の剣』を振るい―― ――健太郎は、スフィーと協力して、魔物を撃退する。 しかし、魔物は断末魔の力でスフィーを攻撃。 それを庇って、健太郎は心臓を貫かれてしまう。 スフィーは己の魂と、死にゆく健太郎の魂を魔力的に繋げることで、彼を救う。 その魔法のため、スフィーは幼い少女の姿に……、 一命を取り留めた健太郎は、 城のスフィーの部屋で目覚め、事情を聞く健太郎。 その後、彼女とともに、探索を再開し……、 城の最深部で……、 彼らは、鞘に収められた聖剣を発見する。 世界が危機に瀕した時、聖剣は出現し……、 それの担い手である『勇者』もまた、覚醒する。 その伝承をスフィーから聞き、健太郎は決意した。 聖剣を抜く事が出来る……、 世界の担い手である勇者を探す旅に出よう、と……、 それから、数週間後―― 場所は変わって……、 大陸の片隅にあるリーフ島……、 その島に住む剣士『藤田 浩之』と、 相棒の魔法剣士『藤井 誠』は、魔物退治の依頼を果たし、家路についていた。 その途中……、 黒騎士に襲われている健太郎達を発見。 二人は助けに入るが、四人掛かりでも、黒騎士との実力さは歴然だった。 浩之の剣技も……、 スフィーも魔法も……、 誠の魔法剣も……、 健太郎の虎の子の魔道具も……、 ……あらゆる攻撃が通用しない。 そして、浩之のミスリルソードが折れ、弾き飛ばされる。 健太郎の荷物が載せられた馬車に激突する浩之。 すぐさま身を起こすが、剣は折れてしまっている。 浩之は、何か武器は無いかと、手元を探る。 すると……、 そこには、一振りの剣が……、 「おいっ! この剣、借りるぞっ!!」 「なっ!? 待て、その剣は――」 健太郎の制止の声も聞かず、剣の柄を握る浩之。 そして―― 勇者にしか抜けないはずの剣が―― ――抜き放たれた! 「キサマが……この世界の勇者だというのかっ!?」 浩之の聖剣による一太刀。 その威力に、黒騎士は退却する。 今、ここに―― 世界の担い手となる勇者が誕生した。 <END> |