競作企画
Leaf Quest
〜 導かれし妻達 〜
ワン共和国―― その中央に位置する街『ナカザキ』に、一人の冒険者が帰ってきた。 彼の名は『折原 浩平』―― 幼い頃、姿を消した妹を探し、旅をする剣士である。 たった一人の家族だった妹の『みさお』……、 彼女は、あまりに、唐突に……、 そして、何の前触れも無く、自分の前から消えてしまった。 妹を探す為の手掛かりを求めて、彼は旅を続けてきた。 そして、先日……、 タイプムーンで、空間系の魔術の存在を知り……、 みさおは、その魔術の才能を有しており、 それが暴走した為に、別の空間に飛ばされてしまったのでは、という仮設を得る。 その裏付けをする為、浩平は、生まれ故郷へと帰ってきたのだ。 帰ってきた浩平を、七瀬・茜・みさき―― そして―― 子供の連続失踪事件を追う、カノン王国の近衛騎士―― ――『運命を拓く奇跡の剣』の所持者『相沢 祐一』が出迎える。 随分と、大袈裟な出迎えに、驚く浩平。 そんな彼に、彼女達から、驚愕の事態が告げられる。 なんと、澪と繭が……、 さらには、栞と真琴までもが、誘拐されてしまったのだ。 しかも……、 浩平の恋人である『長森 瑞佳』の手によって……、 魔術の才能を見抜く能力を持つ、 みさきの話では、瑞佳には、空間系の魔術の才能があったという。 七瀬達から、詳しい話を聞き、 浩平は、みさおが消えた時と同じ事が起こったのだ、と理解する。 それは、つまり……、 みさおを奪ったのも、瑞佳だという事に……、 それを必死に否定しつつ、 浩平と祐一は、出掛かりを求め、再び、タイプムーンへ―― ルヴィアゼリッタの協力で、 閉鎖空間『えいえんの世界』への干渉に成功するも、その扉は一方通行。 『えいえん』へと至れば、二度と、自力では戻れない。 方法は、ただ一つ―― 「えいえん」を操る瑞佳の力を使う事―― 覚悟を決め、「えいえんの世界」へと飛び込む、浩平と祐一。 そして……、 二人の前に姿を現したのは……、 幼き頃の姿をした『みずか』と―― その背後に立つ、邪悪な意志(ラルヴァ)―― 彼らは語る……、 みさおが消えた事件の真相を……、 それは、幼き瑞佳の、みさおに対する嫉妬が原因であった。 自分よりも、浩平の身近にいるみさお……、 そんな彼女への負の感情が、瑞佳の力を発現させてしまう。 ――みさおちゃんなんて、いなくなっちゃえば良いのに。 そんな無自覚な想いが、みさおを「えいえんの世界」へと閉じ込めてしまう。 ――そう。 全ての原因は、瑞佳にあったのだ。 瑞佳の才能に目をつけたラルヴァは、瑞佳に、その事実を伝える。 罪の意識に、心を閉ざす瑞佳……、 そんな瑞佳を利用し、ラルヴァは、澪達を攫ったのだ。 その命を、ガディムに奉げさせる為に……、 ラルヴァが、浩平問う―― 真実を知って、尚、お前は、瑞佳を救うのか、と―― 妹を奪った者を愛せるのか、と―― その問いに、浩平は……、 ラルヴァに向かって、剣を振ることで答えた。 浩平は気付いていたのだ。 目の前にいるみずかの心が泣いている事に……、 瑞佳が、自分を責めて……、 何度も浩平に、みさおに謝りながら、泣いている事に……、 ならば、教えてやらなければならない。 瑞佳をラルヴァから解放し、言ってやらなければならない。 お前は、悪くない―― 誰に責められようと、俺が、お前を許してやる―― 何があっても、お前を愛している、と―― カノンブレードの力で、 ラルヴァを倒し、瑞佳や澪達を救い出す浩平達。 だが、元の世界へ扉は閉ざされ、瑞佳も意識を取り戻す気配はない。 しかも、ラルヴァの、断末魔の力を振り絞り、 この閉鎖空間を圧縮し、浩平達を空間ごと、握り潰そうとする。 逃げ場は無い……、 対抗する手段も無い……、 絶対絶命の危機に、浩平の耳に、妹の声が届く。 「えいえんは、あるよ……」 「――みさお?」 「でも、お兄ちゃん達の永遠は、ここじゃない……、 だから、みさおが、連れて行ってあげる。 お兄ちゃん達の世界へ……」 その声と共に、浩平の手に剣が握られる―― みさおの意志と力が宿る剣―― その名を『永遠を流れる時空の剣(エターナルソード)』―― 空間をも斬り裂く、その剣の力で、浩平達は、元の世界に戻る事に成功する。 だが、しかし……、 そんな彼らを待っていたのは……、 墜落したヨークと―― それを懸命に守るタイプムーンの人々―― そして―― その光景を―― ワイバーンの背から見下ろす黒騎士―― 「――っ!! 久瀬ぇぇぇぇーーーーっ!!」 その姿を見た瞬間、祐一が叫び、剣を抜く。 そして……、 久瀬と祐一の、一騎打ちが始まった。 <END> |