To Heart SS
      新しい夜明け






 目を覚ますと、あかりの顔があった。
 俺の腕の中で、安らかな寝息を立てている。

 ――俺達、結ばれたんだよな。

 あかりのぬくもりを感じながら、心の中で呟く。
 そう……俺達は、昨夜結ばれたんだ。

 幼馴染みのあかり……。
 妹みたいに思っていたあかり……。
 友達以上で、だけど、結局は他人だったあかり……。

 でも、今は違う。

 あかりは俺の恋人。
 あかりは俺の大切な女の子。

 ――これからも、ずっと一緒だよな、あかり。

 生まれたままの姿で俺に寄りそうあかり。
 その小さな手は、俺のシャツをきゅっと握って離さない。

 ――ったく、子供じゃあるまいし。

 でも、そんなあかりがたまらなく可愛い。
 あかりを抱く腕に力を込める。
 起こさないように、そっと、優しく……。

「……浩之ちゃん……好き……」

 あかりが寝言で俺を呼ぶ。

 ――夢の中でも、俺を思ってくれているんだな。

 愛しさが募り、あかりの髪を撫でる。

 ――随分、待たせちまったよな。

 あかりは、夢にまで見るくらい、
ずっと俺のことを思ってくれていたんだよな。

 そう……幼い頃から、ずっと……。

 あかりは毎朝、俺を起こしにきてくれて……、
 あかりは俺に弁当を作ってくれて……、
 あかりはいつも俺にくっついてきて……、
 あかりはいつも俺を見ていて……、

 ……それは全部、お前の気持ちだったんだよな。

 そんなお前の気持ち、何となく分かっていたのに、
結局、気付いていないフリをして、今までお前を待たせちまった。
 本当は、もっと早く、いつでも答えてやれたのに。

 勇気が出せなくて……、
 素直になれなくて……、

 そのせいで、お前につらい思いをさせちまった。

 でも、俺、これからは努力するからさ。

 素直になれるように。
 お前の気持ちに答えてやれるように。

 今までゴメンな、あかり。
 それと、今までありがとう、あかり。






 ――そして、これからもよろしくな、あかり。






「……あかり、愛してる」

 俺はあかりの額に、そっとキスをした……。









<おわり>
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