痕 SS

  初音ちゃんの新婚日記?







 みなさん、こんにちわ。

 わたし、柏木 初音っていいます。
 新婚ホヤホヤの16歳です。

 今日は、わたしとわたしの旦那様の耕一お兄ちゃんとの
新婚生活を書いた日記を、みなさんに少しだけ紹介しちゃいますね。








 ○月×日 月曜日

 今日はお兄ちゃんがお弁当を忘れたので、大学まで届けにいった。
 そしたら、お兄ちゃんのお友達に妹だと勘違いされた。
 わたし、ちゃんと「妻です」って言ったのに、誰も信じてくれないの。
 だから、わたし、みんなの前でお兄ちゃんにキスしてみせた。
 そしたら、みんな信じてくれた。
 でも、その時、どうしてみんなの顔が引きつってたのかなぁ?



 ○月△日 火曜日

 今日はお家のお掃除をした。
 小さなアパートだけど、わたしとお兄ちゃんの愛の巣だもんね。
 だから、ちゃんと綺麗にしなきゃね。
 でも、ちょっとショクなことがあった。
 だって、お兄ちゃんの本棚から、えっちな本が出てきたから。
 もう! こんなに可愛い奥さんがいるのに、こんなの買うなんて!
 むう〜……罰として、今夜は寝かせてあげないんだから!



 ○月□日 水曜日

 今日は、お兄ちゃん、寝てないからちょっとつらそうだった。
 わたしのせいだね……ごめんね、お兄ちゃん。



 ○月☆日 木曜日

 今日は新しいメニューに挑戦してみた。
 わたし、まだまだレパートリーが少ないから、頑張って色々増やさなきゃ。
 でも、ちょっとだけ失敗しちゃったの。
 美味しくつくれなかったの。
 でも、お兄ちゃんは残さず全部食べてくれた。
 そして、「次に期待してるよ。かんばってね」って優しく言ってくれた。
 ありがとう。優しいお兄ちゃん、大好きだよ。



 ○月▽日 金曜日

 今日はお兄ちゃんは遅くまで起きていた。
 大学にレポートを提出しなきゃダメなんだって。
 だから、お夜食にサンドイッチとコーヒーを作ってあげた。
 お兄ちゃんは「ありがとう」って、頭を撫でてくれた。
 頑張ってね、お兄ちゃん。
 でも、体には気をつけてね。



 ○月◎日 土曜日

 今日はお兄ちゃんの講義が午前中だけだっから、
午後からはお兄ちゃんと一緒。えへへ♪ 嬉しいな。
 それで、今日はお兄ちゃんに勉強を教えてもらった。
 わたし、結婚してても高校生だから、ちゃんと勉強しないとね。
 その後は、二人でお買い物。
 ホントは手を繋いで歩きたいけど、お兄ちゃん照れ屋さんだから、
人目があると逃げちゃうの。
 でもね、人目が無い時は、わたし、お兄ちゃんの手を強引に握っちゃうんだ。
 このくらいの我侭はいいでしょ?
 だって、わたしはお兄ちゃんのお嫁さんなんだから。
 だから、もうこの手は絶対に離さないからね。
 今日はわたしに付き合わせちゃってごめんね、お兄ちゃん。
 お礼に、今夜はたっぷりサービスしてあげるからね♪



 ○月◇日 日曜日

 今日はわたしもお兄ちゃんも学校はお休み。
 だから、ずっとお兄ちゃんと一緒にいられるの。
 どこかに遊びに行っても良かったけど、今日は一日中のんびり過ごすことにした。
 お兄ちゃんとお話して、ご飯食べて、お散歩して、お風呂に入って……、
 わたし、こんなふうに何ても無い日が一番好き。
 こんな生活がずっと続いてほしいな。
 そう……ずっと、ずっと……








「初音ちゃん、何を書いてるの?」

「えっ? きゃあっ!!」

 日記帳を開いたままボーッとしていたわたしは、
耕一お兄ちゃんが後ろからわたしの手元を覗き込んでいるのに気付き、
慌てて日記帳を閉じた。

「お、お兄ちゃん……み、みみみ、見た?」

 ど、どうしよう。
 もし、見られてたら……うう……恥ずかしくて、もうお兄ちゃんの顔見れないよぉ。

「いや、何も見てないけど……もしかして、日記でも書いてた?」

「う、うん……」

「そっか。ゴメンね、邪魔したりして。
内容は見えなかったから安心していいよ」

「……うん」

「それじゃ、あんまり遅くまで起きてちゃダメだよ。おやすみ、初音ちゃん」

「うん……おやすみ、お兄ちゃん」

 お部屋から出ていくお兄ちゃんを見送って、
わたしは安堵のタメ息をついた。

 良かった……見られてなくて。

 わたしは閉じていた日記を再び開く。

 まさか、言えないよね。
 お兄ちゃんとの新婚生活を想像して日記に書いてるなんて。

 そして、わたしは日記のしおり代わりに挟んでいる
お兄ちゃんの写真を取り出す。

 ……いつか、この日記みたいな生活が現実になりますように。








「おやすみなさい、大好きな旦那様♪」


 ――ちゅっ☆








<おわり>
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