私の名は、アルトリア=ベンドラゴン――
聖剣の担い手であり……、
誇り高き、ブリテンの騎士王である。
だが、今の私は、サーヴァント……、
聖杯戦争を闘う為、
聖杯によって召喚された、過去の英雄……、
我がマスター『衛宮 士郎』の――
勝利を約束する剣であり――
その身を守る絶対の盾であり――
そして――
私は、シロウの――
Fate/stay night SS
Good morning My master!
休日の朝――
いつもより、早く目覚めた私は、
窓から刺し込む光に目を細めながら、ゆっくりと体を起こす。
「シロウ……?」
隣を見れば、共に寝ていた彼は、
未だ、スヤスヤと、安らかな寝息をたてている。
この家の家事を取り仕切る彼の朝は、いつも早い。
故に、普段なら、私が、
シロウに起こされる事が多いのだが……、
……珍しく、今朝は、私の方が、早く目が覚めたようだ。
きっと、疲れが溜まっているのだろう。
家事に、学校に、アルバイト――
さらには、私との剣の鍛錬や、リンによる魔術訓練まで――
――シロウは、毎日のように、忙しく立ち回っている。
それに……、
昨夜は、その、色々と……、
「あう……」(ポッ☆)
そこまで考え、ふと、昨夜の事を、
思い出してしまい、私は、顔が熱くなるのを感じた。
ちなみに、昨夜は、シロウに負担を掛けぬよう、私が上でした。
騎乗スキルBは伊達ではありません。
その技能を遺憾無く発揮し、何度もシロウを――
――って、いけません。
もう朝なのだから、妙な事は考えず、
可及的速やかに、気持ちを切り替えねば……、
「私とした事が……少し落ち着きましょう」
昨夜の情事の余韻が残っているのか……、
私は、火照りそうになる体を抑えようと、
何度も頭を振りながら、思考を別の方向へと持っていく。
と、とにかく……、
シロウは、とても疲れているのです。
家事の面では、不肖ながら、私も、
多少は助力していますが、まだまだ、足を引っ張っている感が強い。
特に、料理の面では、シロウ達には、遠く及ばないわけで……、
だから、出来る事なら……、
シロウを、このまま、休ませてあげたい。
しかし、現状は、そういうわけにもいかない。
もうしばらくすれば、
イリヤスフィールあたりが、この部屋に駆け込んでくるだろう。
いや、もしかしたら、サクラやタイガという可能性も……、
さすがに、情事の後の、
このような姿を見られるのは恥ずかしい。
その事態を避ける為には、心苦しいが、シロウに起きてもらうしかない。
でも……、
ああ、でも……、
「アルトリア……」
「あ……」
やはり、裸のままでは寒いのか……、
シロウは、寝言で私の名を呟くと、
ぬくもりを求めるように、私の体を引き寄せる。
そして、抵抗する間も無く、私はシロウに抱きしめられてしまった。
力強いシロウの腕……、
そんな彼の腕が、私を離さない。
もちろん、逃れようと思えば、すぐに逃れられるのだが……、
少し汗臭いく、でも、深いでは彼の匂いが――
程良く鍛えられた彼の胸板から伝わってくる鼓動が――
――私から、抵抗する気力を奪い取って行く。
ああ……、
やはり、このぬくもりには抗い難い。
もし、許されるのなら……、
シロウが目覚めるまで、こうしていたい。
どうせ、今日は休日なのだし……、
いや、しかし……、
休日だろうと、サクラ達はやって来るわけで……、
分かっている……、
そんな事は、充分に分かっている。
でも……、
もう少しだけ……、
いや、ダメだ……、
早く、シロウを起こさなければ……、
分かっている……、
分かっている……、
分かっているけど、もう少し……、
もう少し……、
あと、もう少し……、
「シロ〜ウ、おっはよ〜♪
今日も良い天気だ――――よっ?」
「あ……」(←セイバー、硬直)
「ん……?」(←士郎、目を覚ます)
「………」(←イリヤ、呆然)
「あうあう……」(←セイバー、真っ赤)
「ふぁ〜……」(←士郎、寝惚けている)
「………っ!」(イリヤ、状況理解)
「こ、これは、その……」(←セイバー、狼狽)
「……あっ」(←士郎、ようやく覚醒)
「すぅ〜……」(←イリヤ、深呼吸)
「シロウのどえっち〜〜〜っ!!
こんな朝っぱらから、
ナニしてるのぉぉぉ〜〜〜っ!!」
で、結局――
イリヤスフィールに弱みを握られてしまったシロウは……、
等価交換の名の下に……、
一日中、彼女の遊び相手をする羽目になってしまいました。
私とした事が、なんたる不覚……、
あの時……、
すぐにでもシロウを起こしていれば、こんな事には……、
シロウ、申し訳無い……、
今日は、疲れた体を癒して貰おうと思っていたのに……、
貴方と二人で……、
ゆっくりと過ごそうと思っていのに……、
それなのに……、
「シロウ〜♪ お買い物いこ〜♪」
「あ、ああ……じゃあ、セイバーも――」
「セイバーは、ダメッ!!
今日一日、シロウは私だけのモノなんだからっ!」
「イリヤスフィール! その発言は、さすがに了承しかねる!」
「今朝のこと、タイガ達に報告しても良いの?」(ニヤリ)
「うっ、それは……」
「それじゃあ、行ってきま〜す♪
デ〜ト、デ〜ト♪ シロウとデ〜ト〜♪」
「すまん、セイバー……、
なるべく、早く帰るようにするから……」
「はい……」
「ほらほら、シロウ! 早く早く〜♪」
「うわっ、イリヤ! そんなに引っ張るなって!」
「……いってらっしゃい、シロウ」
うう、シロウ……、
私は、とても寂しいです……、(泣)
<おわり>
あとがき
セイバーSS第三段〜♪
今回は、衛宮邸の、割と良くある朝の風景です。(笑)
士郎争奪戦は、まだまだ激化する模様。
セイバーと二人きりなんかにしてなるものか〜、とばかりに、邪魔者達が……、(笑)