Heart to Heart 外伝 こみっくパーティー編

鈴香の配送奇話

    その1 『鬼ごっこ』







「ど〜も、ペンギン便です」

「いつもご苦労様ですね」

「い〜え、それほどでも。それじゃあ、ここに印鑑かサインをお願いします」

「はい……これでいいかしら?」

「結構です。ありがとうございました」






 私の名前は『風見 鈴香』――

 この街の人々に荷物を届けるのが私の仕事である。
 といっても、この街は広いから私一人でできる事などたがが知れている。

 それでも、私はみんなの笑顔を見たいから、だから私は荷物を届け続けたい。

 私の持っていく荷物を待っている人と、その笑顔に出会いに。

 ……今日はそんな私の配達日誌の中の一つをあげてみたいと思う。








 その日も額に汗して働いていると……、



「た〜〜す〜〜け〜〜て〜〜」



 ………またか。(汗)



 叫び声を上げながら手前の道から飛び出してきたのは学生服姿の誠くん。

 彼はこの商店街きっての有名人である。
 どう有名なのかと聞かれたのなら、それこそ話題は尽きない程である。


 そんな誠くんは息を切らせながら私の目の前、正確にはトラックの荷台の陰に隠れた。


 どうやら誠くんは、この商店街の恒例行事『鬼ゴッコ』をしているみたいである。

 無論、この『鬼ゴッコ』とは子供の頃よく遊んだものではなく、
誠くんの逃走劇、または『鬼』の追跡劇の事である。

 理由は毎回違うけれど、誠くんはよくその『鬼』に追い掛け回されている。

 この『鬼』は日によって違い、人妻、女学生、居候(自称奥様)、
ロボット(本人いわく自動人形っていてるけど、どこが違うんだろ?)、
講師、本物(誠くん談)、その他さまざまである。

 会社では逃げ切るか捕まるかの賭け事にもなってるらしい。

 ちなみに、賭けるのは昼食でオッズは誠くん:鬼=3:7である。



 そんな事はとりあえずおいといて……毎度の事ながらしょうがないな。

 私は隠れている誠くんの襟首を掴む。


 グイッ


 そして――


「!! わわっ! なにを……」


 ヒョイ


 バタンッ!!


 荷台に放り込んだ。


 その数秒後……、


 ずどどどどどどどどーーー!?


「まこり〜ん☆」
「まことさ〜ん☆」
「まことく〜ん☆」


 どうやら今日は奥様トリオが鬼みたいだね。(汗)

 誠くんの名を叫びながら土煙を上げながら走り去って行く奥様方を見送り、
その影が走り去ったのを確認する。


「……もう大丈夫だよ」


 そう言って荷台を開けてあげると、辺りを見回し安心した顔で出てくる誠くん。


「ふぅ、助かりました」
「別に気にしないでもいいよ、それよりまた追っ掛けられてるの?」
「………ええ」(泣)
「ちなみに今日はなんなの?」
「『母親の愛情表現』……っだそうです」(大泣)
「………そうなんだ」(汗)


 これ以上聞くと可哀想かな。
 しかし、ここで分かれてもまた同じ目にあうんだろうし……仕方ない。


「近くの公園までなら乗っけてくけど?」
「お願いします」(大泣)


 こうして、誠くんを助手席に乗せると、近くの公園までなら乗っけていくことにした。





 20分後――





「お〜い、着いたよ……って!!」


 そこには青い顔をした誠くんが一人。


「……もう…………こりごりだ……」


 そう呟いて誠くんは昇天した。





 ちなみに、ペンギン便では1秒でも早くお届けする事を信条としているため、
そんじょそこいらの運ちゃんや、タクシーにも負けないぐらいのドラテクを持っている。

 そのため、急加速、急発進、慣性ドリフト、
そして、最終兵器に○トロ……ゴホゴホ、まあ、とにかく凄いのだ。

 前に南さんを追っ掛けようと私のトラックに乗り込んだ千堂さんなんかは、
あれ以降、私の運転する車には絶対乗ろうとはしない。


 私としては、街中走ってる車なんかは全部亀にすら思えてくるのだけど。


 とりあえず、誠くんを近くのベンチに横にさせると、ジュースを買いに自販機を探した。


「う〜〜うう〜〜〜」
「大丈夫?飲めそう?」
「Gが……Gが横腹に〜……」
「ダメだね、こりゃ」(汗)


 帰って来ると誠くんはまだ青い顔をし、ベンチからはみ出た手は重力に従い下を向き、
まさに重力の悪夢の真っ最中だった。

 そんな誠くんを看病してると……、


 わんわん!


 く〜ん
……


 何処から来たのかは知らないが、一匹の子犬が私の足元にじゃれついて来た。


「どうしたの?」


 私はその子犬を拾い上げるとそのまま抱き抱えた。
 迷子になったのか、近くに親犬の姿は見えなかった。


「ほら、どーしたの? ん?」


 そう言って今度は誠くんの方へ子犬を近づける。
 すると……、


「ワン! ワン!」
「あっ!」


 突然、子犬は暴れ出し、そのまま何処かへと走り去ってしまった。

『誠くんって、猫には好かれるのに、犬には嫌われるのかな?』

 などと考え、子犬が走り去った方を眺めていた。








 その後、20分程で、誠くんはなんとか起き上がれるまでになったので、
私はそこに誠くんを残し配達へ戻る事にした。








 その後、大勢の犬を引き連れたみことさんが、
先ほどの公園の方へ走り去っていくのを目撃した。

 ちなみに、みことさんとは誠くんのお母さんで、今日の鬼の一人である。

 ……どうやら、今日もまた鬼の勝ちみたいだね。








 さらに、その30分後――








『うぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』








 夕方の街に誠くんの悲鳴が木霊したのは言うまでもない。








<おわり>


<コメント>

誠 「あははははは……、
   また、怖いものが一つ増えた気がする……」(T▽T)
和樹 「鈴香さんの運転は、信頼は出来るけど、常人には堪えられないな」(;_;)
誠 「ってゆーか、あの激しい運転にも堪えられる宅配車って……」(^_^;
和樹 「並の車じゃねーな……ニトロも積んでるみたいだし……」(−−;
誠 「きっと、メ○ドックでチューンアップしてもらってるんだろうな」(^_^;
和樹 「それどころか、ブーストポットとか搭載してたり……」(−o−)
誠 「喋ったり、ジャンプしたり、勝手に動いたり、変形したり……」(−o−)
和樹 「さらには、時空を超えるかも……」(−o−)
誠 「う〜む……ボンドカーも真っ青だ」(−o−)
和樹 「うわっ! 古っ!」Σ( ̄□ ̄)

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