『おままごと』
〜志保ちゃんSIDE〜
とある日曜日の午後―――
あたし、長岡志保ちゃんは、近所の公園で優雅な散歩としゃれこんでいた。
「うーーーん、いい天気ねぇ〜」
両手を高く挙げ、思いっ切りのびをして、全身で心地よさを満喫する。
こういう日は散歩に限るわよねぇ。
たまには情報収集を忘れての〜んびりとするのも良いもんだわ。
―――なんて思った瞬間、
『こういう時は“最初に食べるのはお前だ〜っ!”って言って、
ガバッとみーちゃんを押し倒すんだよ♪』
『子供の前で、そんなアダルトプレイができるかっ!!』
近くから、そんな面白そうなセリフが聞こえてきた。
こ、これは特ダネの予感。
ああっ。志保ちゃんってば、やっぱり根っからのジャーナリストなのね。
イヤでも大ニュースを得てしまう星の下に生まれついているのね。
ふっ。我ながら自分の情報察知能力が怖くなるわ。
「うふふふふ。待ってなさいよ、特ダネちゃ〜ん。すーぐ行くからねぇ〜。
うりゃ! 志保ちゃんダーーーッシュ!」
あたしは、急いで声の発信元へ駆けつけた。
「さってっとっ♪ な〜にをしてるのか〜し〜ら〜♪
……って、あら?」
すると、そこにはよく見知った顔があった。
『おかえりなさ〜い、あなた♪ ご飯にする? お風呂にする?
それとも〜……わ・た・し♪』
『うっがぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!』
偽ヒロ……もとい、誠じゃない。
何やってるのよ、アイツってば。
いきなり叫びだしたかと思ったら、頭を抱えてその場をのたうち回ってるし。
…………何か怪しげな電波でも受信しちゃったのかしら?
今日は陽気もいいしねぇ。晴れた日はよく届くらしいから。
はぁ、やれやれ。これだからお笑い人種は困るのよ。
少しは志保ちゃんみたいな落ち着きが欲しいわよねぇ、ホント。
尤も、優雅って言葉を体現している様なあたしと比べちゃ可哀想だけどさ。
何て言うの、あたしって見るからにエレガントじゃない。
体中から高貴なオーラが漂っているって感じで。
自分で言うのも何だけど、あたしってば気品に溢れてるのよねぇ。
きっと前世はヨーロッパ辺りのお姫様なのよ。
うん、間違いないわ。絶対そうよ。そうに違いないわ。決定。
それなのに、ヒロや誠みたいな下々の者と親しくしてあげてるんだから、
あたしったら本当に心が広いわぁ。自分で自分を尊敬しちゃうわよ。
しかもさぁ…… 、
―――などと、あたしが至極もっともな考えに耽っているうちに、目の前では新たな展開が起こっていた。
あたしを現実世界に引き戻すのに十分すぎる威力を持った展開が。
小さな女の子が誠に近付いて、あいつの手をペロペロと舐め始めたのだ。
……………………。
……………………。
えええぇぇぇっっっ!? ちょっとちょっとちょっとーーーっ!?
誠ってば何て事をやらせてるのよっ!?
あたしが驚愕で目を白黒させていると、目の前ではさらに凄い光景が繰り広げられ始めた。
『む〜……そういう事は……の役目だよ〜』
『あ〜っ♪ わたしもやる〜♪』
なんと、その場にいたもう二人の女の子も誠の手を舐め始めたのだ。
途中、ちょっと聞き取れなかった部分もあったけど……ま、そんなのは些細な事ね。
んなことより! あいつってば、『三人もの幼女』にあんな事させて喜んでるなんて。
まさか、誠ってロリコンなの!?
“ロリコン”
その単語が脳裏に閃いた時、あたしは同時にあかねちゃん達の姿を思い浮かべていた。
そっか。そうだったのか。誠ってそうだったのね。
どうりで、胸の薄い娘が好みなわけだわ。
なるほどね。謎は全て解けたわ。真実は常に一つなのよ。
あたしは深ーく納得した。
まあ、そういうのも有りなのかもね。人の趣向はそれぞれだし。
確かに、世間様から見たら異端かもしれないけど、
本人達がお互いに納得してるのだったらあたしは構わないと思うわ。
友人として応援してあげるわね。
だから、仲良くするのよ、あんたたち。
あたしは心の中で誠にエールを送ると、あいつらに気付かれない様に、そーっとその場から離れた。
それにしても、誠の存在って何気に有り難いわね。
いつもいつも、面白いネタをタダで提供してくれるんだもん。
『誠に新恋人発覚! しかも相手は三人の幼女!』
あたしの頭の中では、そんなタイトル文字が、
ババーンという派手な効果音をバックに光り輝いていた。
うふふ、次回の志保ちゃん情報はこれで決まりよ!
休日だっていうのに、こーんなビッグニュースをゲットしちゃうなんて……、
志保ちゃんって、罪なオ・ン・ナ♪
うふっ♪
<おわり>
<おまけ>
「ねえねえみんな〜。志保ちゃんニュースよ〜♪」
「志保ちゃんじょーほー!」
「みんな聞いて〜♪ 特ダネよーーーん♪」
「ねえ、浩之ちゃん。志保の言ってる事、ホントなのかな?」
「どうだろ? あいつの情報だからなぁ」
「そ、そうだよね」
「だけど……今回に限っては、妙に説得力が感じられる気がしねーか?」
「……………う……うん」
「……血は争えないって言うしな」
「……………………うん」
「まさか……藤井くんが……」
「はう〜。誠さんはロリコンさんなんですか?」
「それは……さすがに違うと思う……けど」
「そ、そうですよねぇ。あのー、琴音さんはどう思います?」
「藤井さんって、もしかして、幼女相手に○○○な事とか×××な事とかをしてるのかな?
それとも、△△△で◇◇◇を◎◎◎なーんてしちゃったりして!
キャーキャー、藤井さんのえっち〜♪」
「……………………」
「……………………」
志保ちゃんの大々的な活動の甲斐あって、この日の学校は誠君の話題で持ちきりでした。
いろいろな意味で、更に有名になってしまった誠君の運命や如何に?
「みんな〜♪ 聞いて〜♪ 大ニュースよ〜〜〜〜〜〜♪」
<おまけおわ……ってない気もするが……おわり>
☆ あとがき ☆
STEVENさん、ごめんよ〜〜〜っ。
でも、あんな話を書かれたら、やっぱり……ねぇ。書いちゃいますよ、こういうの。
ね? そう思いますよね?
誰か、「うん」と言って、プリーズ。( ̄▽ ̄;
て、てなわけで……Hiroでした。(そそくさと逃げる様に去る)
<コメント>
誠 「だぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!! 楓さんの時といい、今回といい……、
どうして、こうも誤解を受けるシーンを目撃されちまうんだよーっ!!」(T□T)
みこと 「まあ、運命だね♪」(^〜^)
尚也 「――だな」(−o−)
誠 「どちくしょーーーっ!! だいたい俺はロリコンじゃねーっ!!」<(T△T)>
尚也 「はっはっはっ! 素直に現実を認めろ、我が息子よ」(^▽^)
誠 「…………」(−−メ
尚也 「――ん? どうした?」(・_・?
誠 「うっがぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!
何もかも、みんなテメェが悪いんだ、このクソ親父がぁぁぁぁーーーっ!!」( ̄□ ̄メ
ズガガガガガガガッ!!
尚也 「はーっはっはっはっはっ!
その程度の攻撃で父親を越えられると思っているのか〜?」(^▽^)/
誠 「テメェなんざ、最初から越えるつもりはねぇぇぇぇぇーーーーっ!!」( ̄□ ̄メ
みこと 「あははは♪ 相変わらず仲良しだね〜♪
みーちゃん、とっても嬉しいな♪」(*^▽^*)