Heart to Heart 外伝
       To Heart 編

    
  「いけない琴音ちゃん パート1」







「……なあ、琴音ちゃん。大丈夫か?」

「あんまり……大丈夫じゃないです」

「そうか……もうすぐ保健室に着くから、それまで頑張れよ」

「……はい。すみません、藤田さん」

「いいっていいって。気にするなよ」








 今、わたしは、藤田さんに背負われて、保健室へと向かっています。

 何故かと言いますと……、
 わたし、倒れちゃったんです。

 放課後、図書室へ本を返しに行こうと廊下を歩いていた時――

 偶然にも通り掛かった藤田さんを見た途端、
上手い具合に……じゃなくて、間の悪いことに、突然、目眩が襲ってきたんです。

「ああっ! 急に目眩がっ!」

「おわっ!!」

 うふっ♪ さすがは藤田さんです♪
 わたしが冷たい廊下に倒れてしまう前に、しっかりと抱き止めてくれました。

 ……はい?
 倒れ方が妙にわざとらしい?
 もしかして、狙ってたんじゃないか、ですか?

 し、失礼ですねっ!
 わたし、そんなこと、今までに一度しかしたことないですっ!

 つまり、これが最初の……いえいえ、何でもないですよ。

 今の発言は忘れてください。
 すぐに忘れないと……滅殺しちゃいますよ♪

 まあ、それはともかく……、

 わたしはいきなり倒れてしまいました。
 となれば、藤田さんは、そんなわたしを放っておくわけがありません。

 というわけで、今、こうして、わたしは藤田さんにおんぶしてもらっているのです。

 あかりさんみたいに、お姫様だっこじゃないのがとっても残念ですけど、
まあ、これからの展開を考えれば、そのくらいは我慢です。

 あ……とかなんとか言っているうちに、
保健室に到着したみたいですね。

 うふふふふふふふ……♪
 さあ、藤田さん……覚悟してくださいね♪
















「ちわ〜……イネス先生〜、いますか〜?」

 と、わたしを背負ったままドアを開けて、保健室へと入る藤田さん。

 しかし、グルリと室内を見回し、藤田さんは不満げな声を上げます。
 何故なら……、

「何だ? 誰もいないのかよ」

 ……そう。
 保健室には保険医であるイネス先生はもちろん、誰もいなかったのです。

 うふふ♪ 予定通りです。
 事前の調査で、この時間帯は保健室にイネス先生がいない事は分かっていましたからね♪

 さあっ! それでは、早速、計画を実行に……、

「ったく、しょうがねーなー……、
じゃあ、勝手にベッドを使わせてもらうか」

 と、わたしが何かを言う前に、藤田さんはベッドへと向かいます。

 きゃーきゃーっ♪
 藤田さんったら、いきなりベッドインだなんて……大胆です。(ポッ☆)

 もう……わたしが言うよりも早く行動してしまうなんて、
もしかして、わたしの思惑に気が付いているんじゃないですか?

 それならそれで、話は早いんですけど……、

「ま、しばらく横になっていれば、すぐに良くなるよ」

 と、藤田さんは、特に何も意識する事無く、
優しくわたしの身体をベッドに横たえてくれました。

 ……そうなんですよねぇ。
 藤田さんって、基本的にはこういう人なんですよねぇ。

 どんなに良いシチュエーションになっても、全然気にしないんです。
 あかりさん以外の人では……、

 そういうの、凄く妬けちゃいます。
 ……だから、こっちから積極的に動かなければいけません♪

 ――というわけで、誘惑開始です♪

「よいしょ……っと」

 わたしをベッドに寝かした後、藤田さんは側にあった椅子に腰掛けました。
 どうやら、わたしの気分が良くなるまで、側に居てくださるようです。

 だから、わたしも安心して目を閉じて、全身の力を抜いてリラックスします。

 そして、しばらくしてから……、

「……藤田さん」

 ……わたしは、何気い口調で、藤田さんにあるお願いをしてみます。

「ん? どうした、琴音ちゃん?」

「あの……お腹のあたりが苦しいんです。ちょっと擦ってもらえませんか?」

「あ、ああ……ここか?」

 と、目を閉じたままわたしが言うと、藤田さんはわたしのお腹の上におずおずと手を置き、
さわさわと優しく擦ってくれました。

 ああ……、
 藤田さんってば、とっても上手です♪

 わたし、もう、これだけでも幸せでイッちゃいそうです。(ポッ☆)

 でも、このくらいじゃ満足しませんよ。
 すぐに次のステップへ移行です♪

「藤田さん……そこじゃなくて、もう少し下の方を……」

「もう少し下って……このへんか?」

 わたしのお腹を擦る藤田さんの手が、
ゆっくりとおへその下あたりまで移動します。

 あん♪ そこはちょっとくすぐったいです。
 でも、やっぱり、藤田さんに触ってもらうと幸せを感じてしまいます。

 藤田さん……、
 そこは
わたしと藤田さんの愛の結晶が育まれる場所なんですよ。
 だから、優しく優しく撫でてくださいね♪

「琴音ちゃん……少しは楽になったか?」

「はい……少しは……、
あの、それで……出来れば……
もう少し下を……」

「もっと下って……」

 わたしのお願いを聞き、藤田さんの声に戸惑いの響きが混ざる。

 ま、まあ、それも当然ですよね。
 なにせ、これ以上に下となれば……、(ポッ☆)

「こ、ここより下って、もうお腹じゃないんじゃねーか?」

 もう、藤田さんったら、わざわざ指摘しないでください。
 なんだか急に恥ずかしくなってきちゃったじゃないですか。

「そ、そんなことないです。お願いですから、擦ってください。
そうしたら、楽になれると思いますから……」

 と、内心の動揺を隠しつつ、藤田さんにお願いする。

 うふふ……♪
 別に、わたし、嘘を言っているわけではありませんよ。

 擦ってもらえば楽になるっていうのは、本当のことですから。
 ……気持ち良くなれるって意味で、ですけどね。

 さあ、藤田さん……、
 今、あなたには病人の介抱という大義名分があります。

 ですから、遠慮無く、わたしの大事なところ(きゃっ♪)を擦ってください。
 ちょっとくらいなら乱暴にしても良いですから、思う存分、弄り回しちゃってください。

 あ……下着が汚れちゃうとか、そんなこと気にしなくていいですよ。
 こういう時の為に、常に予備は用意してありますから。

 と言いますか、わたし、藤田さんのことを想うだけで、一日に一度は必ず……、(ポッ☆)

 でも、もしそれでも気遣ってくださるなら、下着なんて取っちゃっても……、
 それで、そのまま直接……、

 って、わたしったら、なんてはしたない事を考えているのでしょう。

 わたしって、いつからこんなにえっちな女の子に……、
 もう、全部、藤田さんのせいなんですからね♪

 というわけで、藤田さん♪ 責任とってくださいね♪
 早く、わたしの、この満たされない想いを、藤田さんの愛情で満たしまくっちゃってくださいね♪
 それはもう、溢れちゃうくらいに……、(ポッ☆)


 
さわさわ……


 
――あん♪


 藤田さんの手が、徐々に、徐々に、
わたしの大切なところに向かっているのが分かります。

 わたしは、思わず声を上げてしまいそうになりましたが、なんとかそれを堪えます。
 ここで悦びの声を上げてしまったら、わたしの思惑がバレてしまいますからね。

「…………」

 ギュッと目を閉じて、唇を噛み締めて、
わたしは藤田さんの手の感触に全神経を集中させます。

 もうすぐ……
 もうすぐです。

 もうあと少しで、藤田さんの手がわたしの大切なところに……、

 そうなれば、性欲魔人な藤田さんのことです。
 あっという間に、理性なんか吹き飛んで……、





『琴音ちゃんっ! 俺、もう我慢できないっ!』

『きゃあっ! ダ、ダメです、藤田さんっ! こんなところでっ!』

『こ、琴音ちゃんが悪いんだぞっ! 俺を誘惑するような真似するからっ!』

『……もう、しょうがないですね』

『琴音ちゃんっ! 琴音ちゃんっ!』

『あ……はぅん♪ ひ、ひろゆきさぁ〜ん♪』





 な〜んちゃって、な〜なちゃって♪

 うふふふふふふふ……♪
 これでもう、既成事実確定ですね♪

 と、わたしが内心、身悶えしているうちに……、


 
――さわり☆


 
はうんっ♪

 ああ……、
 ついに……ついに……、

 藤田さんの手が、わたしの大切なところに〜♪

 はあ……ちょっと恥ずかしいけど、とっても素敵です。(ポッ☆)

 藤田さんの大きくて温かい手が、
わたしの大切なところを優しく包み込むように…………って、あら?

 なんか、藤田さんの手……小さくないですか?
 それに、触られている感触が、藤田さんのゴツゴツした逞しい手じゃなくて、
まるで、女の子の手みたいに柔らかい……、

「――?」

 不思議に思ったわたしは、藤田さんの姿を確認しようと、薄く目を開けます。

 そして、ここにはいなかった筈の人物の姿に、
思わす大声を上げてしまいました。


「あ、葵ちゃんっ!?」


 ――そう。
 そこには、葵ちゃんがいました。

 さっきまで、藤田さんが座っていた筈の椅子に座って、
葵ちゃんは、心配そうな顔でわたしを見下ろしていました。

「あ、大丈夫? 琴音ちゃん」

「う、うん……大丈夫だけど……どうして、葵ちゃんがここにいるの?」

「練習中にちょっと怪我しちゃって、それで絆創膏を貰いに来たの。
そしたら、藤田先輩がいて『代ってくれ』って……」

「そ、そうなんだ……それで、藤田さんは?」

「神岸先輩と約束があるから先に帰るって」

 その葵ちゃんの言葉に、わたしの心は怒りと悲しみでいっぱいになりました。

 そ、そんな……、
 体調を崩した(嘘ですけど)わたしを放って、あかりさんのところに行ってしまうなんて……、

 ヒドイです……藤田さん……くすん。(泣)

「あ、琴音ちゃん……ホントに大丈夫なの? まだつらいんじゃない?」

 と、悲しみ暗くなったわたしの表情を別の意味で捉えてしまったのでしょう。
 葵ちゃんは、不安そうにわわたしの顔を覗き込みます。

 そして、今まで忘れていましたけど……、
 葵ちゃんの手は、未だにわたしの大切なところに添えられていて……、

 また、わたしの気分が悪くなったのだと勘違いした葵ちゃんは……、


 
さすりさすり――


 
あ……んっ……んんっ!


 不意打ち気味にきたその刺激に、
わたしは思わず甘い声を上げてしまいそうになり、それを咄嗟に呑み込んだ。

 や、やだ……、
 葵ちゃんったら、意外と上手……、

 ……じゃなくて、このままでは大変ですっ!!
 このままでは、わたし達はイケナイ関係になってしまいますっ!!

「あ、葵ちゃん……も、もういいから……」

 わたしは葵ちゃんの愛撫……じゃなくて、介抱から逃れる為に、
荒くなりそうな息を整えつつ、何とかそれだけを口にしましたが……、

「そう? でも、こうしてると気分が楽になるんでしょ?
もう少しだけ擦ってあげるね」

 ……と、葵ちゃんは邪気の無い笑みを浮かべるだけで、
擦るのを止めてくれません。

 あ、ああ……、
 もう……ダメです……、

 もう我慢が……できそうにないです。
 わたし、わたし……このまま葵ちゃんに……、

 葵ちゃんの手の動きの前に、もはやわたしは陥落し、
一線を越えてしまうのを半ば観念しはじめました。

 が、その時……、
















 
――ガラッ!
















 これって、運が良いと言って良いのでしょうか?
 それとも、やっぱり悪いのでしょうか?

 ……突然、保健室のドアが開いたのです。

 そして、中に入って来たのは……藤井さん?

「すんませ〜ん。イネス先生はいま……す……か……?」

 先生に何か用事でも言いつけられたのでしょうか?
 頭を掻きながら、面倒臭そうな表情で、藤井さんが保健室の中に入ってきます。

 そして、わたし達の姿を見て……、


 
――ひきっ!!


 ……その表情が固まりました。

 わたし達三人の目がバッチリと合い……、
 藤井さんの目線が、ゆっくりと問題の部分へと移動して……、

「…………失礼」

 そして、完全にあらぬ誤解をしたのでしょう。

 藤井さんは、一歩後ずさって保健室から出ると、
そう一言だけ言い残して、バタンとドアを閉めてしまいました。





『あれ? まーくん、どうしたの?』

『……使用中だった。行くぞ』

『あ、待ってくださ〜い!』





 ……ドアの向こうから、藤井さん達の会話が聞こえてます。

 誤解されてます。
 完全に誤解されちゃってます。

 ……どうしましょう?

「ねえ、琴音ちゃん? 藤井君達、どうしたんだろうね?」

「いいの……何でもないの。
葵ちゃんは知らなくても良いことなの……」

 と、何も分かっていない葵ちゃんに言いつつ、
わたしはこれからの事に頭を悩ませます。

 これから、一体、どうしたら良いのでしょう?
 いくらなんでも、誤解されたままでいけません。

 確かに、わたし、葵ちゃんのことは友達として大好きですけど、
やっぱり一番好きなのは藤田さんなんですから……、

 でも、まあ、考え方によっては、
見られたのが藤井さんだったってことだけでも、運が良かったと言えます。

 もし、これが長岡さんだったりしたら、目も当てられません。

 その点、藤井さんなら、変な噂を広めるような真似はしないでしょうし、
事情を説明すれば、簡単に誤解を解く事は出来ますからね。

 ただ、この状況をどう説明したら良いものやら……、








 ううう……、
 なんか、本当に目眩がしてきちゃいましたよぉ〜。(泣)








<おわり>
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